花のようなる天下のあるじ 鬼のようなるつわもの連れて

ふじのぼる

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僧兵

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 一つきほど居続け供養の笛をかなでていたある日の夕暮れ時。

 一人の僧兵が現れて「なるほど聞いた通りじゃ、夜な夜な笛を鳴らすという、あやな奴とは貴様きさまか!」と言うや否や大きな金棒を振り回して襲いかかった。

「なんだ此奴こやつは、危ないな!」と思いながらも動きが遅いので余裕でかわす照之介。

 余りの遅さに辺りに打ってある杭や、橋の欄干らんかんなどを使ってその上をひらりひらり飛ぶように翻弄ほんろうする。

 ……………………

「これ牛若丸ですよねぇ」阿国のジロリ目。
「だいたいこんな動きが出来る者、うちには居ませんからね?」

「フンっ!人間出来ぬと言った瞬間、本当に出来なくなってしまうものじゃ」
「そこに『飛び加藤』氏もおるであろうが!人をあやつるかカラクリを使うか、いくらでもやり方はあろうものを!」

 なるほどそれもそうかと思ってしまった阿国だった。

 ちなみに段蔵は何やら考え事をしており、何も聞いていないようだった。


 ……………………


 「おい兄者!手こずっておるのう」なんと僧兵がもう二人出てきた。

 「馬鹿者!わしの獲物じゃ!手出し無用じゃぞっ!!!」「そんな事を言っておると逃げられてしまうぞ」「まあまあ三人で褒美ほうびは山分けと行こうではないか」

 ??わしを倒せば褒美ほうびが出る??
 照之介は吃驚びっくりした。何がどういう話でこうなった?

 とりあえずこいつらに大人しくしてもらって話を聞こうと、ひらっと一人の頭の上に立った。
 跳躍ちょうやくして逃げた後に振り下ろされる金棒。打倒のっくあうとされる大男。

 同じ事を繰り返して、もう一人減らすと地面に降り立って後ろに回り、最後の大男の膝の後を蹴る。
 堪らず後にひっくり返り、大きな石に後頭部を打ちつける。

 これで三人とも戦闘不能になった。

 ……………………

 たき火のまわりを囲む三人と一人。大したものは無いのできび団子を食べながら話をする。

「わしの名は望月照之介。おぬしらは?」
猛犬太郎坊たけいぬたろうぼう
岩猿次郎坊いわざるじろうぼう
雉崎三郎坊きじさきさぶろぼう

「三人そろって」


 ……………………


「桃太郎か~~~い!」
「阿国さんやどうしたね?」
「きび団子を食べる犬猿雉いぬさるきじとくりゃ桃太郎じゃないのさ」
「まあまらぬなら読まぬが良い」
「………」ブツブツ言いながら読み続ける阿国だった。


 ……………………


 三人の話をよくよく聞いてみると、この地から南の海に浮かぶ島に「鬼」が住み着いて各地で略奪を行っているとの事。

 最近川辺で笛を吹いている怪しい者がいるが、恐らくそいつらの仲間に違いなかろう。

 だから生かしたまましょっぴけば多額の褒美を、最悪まあ息をして無くても何某なにがしかはやろうという話がまとまったらしい。

「お前達に褒美をやると言ったのは誰か?」

「この辺の庄屋や旦那衆が寄り集まってそういう事を仕切ってまさぁ」

「ならば少し話を聞いてみたいな。悪いが案内あないしてくれぬか」

 三人衆いぬ さる きじは喜び勇んで照之介の案内役を引き受けたのであった。
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