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第一章
第二十六話 追及されないのもちょっと怖かったりするよね
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「一つ質問なんだけどさ……」
「はい」「何ですか?」
「そんなに俺の変装って分かりやすいかな」
「それほど分かりやすくはない……ですね」
「髪の色が違うと印象が全く変わりますからね」
「じゃあ何で見破られてんの俺……」
城から誰かが出ていくところを見られていたとしても、この城の中では勿論王族でない者も生活している。貴族の出入りも結構ある。
だから出ていった貴族→俺とは結びつかないと思うんだけど……。
「逆に、ですかね」
「……そうね」
「逆?」
「えーと……兄様は基本的に外出することがバレてはいけないと思って行動されてますよね」
「……うん」
「そこに兄様の魔法制御能力が高すぎるという事実を加えると……」
「……加えると?」
「城から出ていくときにあり得ないくらいに魔力が捉えづらい人がいたら、それが先生――だと分かってしまうんですよ」
なん………だと……。
いや、待て。
「……魔力が捉えづらい……ってことはちょっと感知されてるってこと?」
「はい。ほんのちょっとですけど……」
……それ、かなりの魔力感知能力がないと無理だよな。
普通の――いや、一流の魔術師でも全然気づかないレベルにまで出力を落としているんだが。
むむむ……教え子のレベルを見誤っていたようだ。
「それで先生、外出するのが悪いことだと思っているのに、尚そうしない訳にはいかない目的って、何ですか?」
「それはだな……」
俺は息を吸い込み、覚悟を決める。目を閉じる。
「言えません」
………何も声が聞こえない。物音ひとつ聞こえない。
恐る恐る目を開いてみると、二人は、やれやれ、と言った感じで肩を軽くすくめていた。
「……兄様にも事情があるのでしょうから、追及はしませんけど」
「……そうね」
「……あ、あれ、いいの?」
「よくはないです」
「……はい」
「でも多分、やむにやまれぬ事情があるんですよね」
「……ま、まあね」
「返事が怪しいですね、先生……でも、これでこの話は終わりにしましょう」
「そろそろ勉強を始めないといけませんからね……兄様も研究を始めてくださいね?」
「お、おう」
○
書架へと移動し、古代魔法の祖――時明祈利が著した、魔法大全を手に取った。
最後に記された魔法を見る。
――曰く、古の天才魔術師は、最期に魔法を完成させ損ねた。
並んだ文字。立体魔法陣。そこから浮かび上がってくるのは血が滲んでくるような覚悟と決意。そして……自責。
魔法につけられた名は、『夜明ケノ誓イ』。
この魔法は――彼が自身の教え子、久宮誓依へ贈るために、作られた。
そう、言われている。
しかし、誰がこの魔法を使おうとしても、発動することは、ついになかった。
そう、言われている。
「はい」「何ですか?」
「そんなに俺の変装って分かりやすいかな」
「それほど分かりやすくはない……ですね」
「髪の色が違うと印象が全く変わりますからね」
「じゃあ何で見破られてんの俺……」
城から誰かが出ていくところを見られていたとしても、この城の中では勿論王族でない者も生活している。貴族の出入りも結構ある。
だから出ていった貴族→俺とは結びつかないと思うんだけど……。
「逆に、ですかね」
「……そうね」
「逆?」
「えーと……兄様は基本的に外出することがバレてはいけないと思って行動されてますよね」
「……うん」
「そこに兄様の魔法制御能力が高すぎるという事実を加えると……」
「……加えると?」
「城から出ていくときにあり得ないくらいに魔力が捉えづらい人がいたら、それが先生――だと分かってしまうんですよ」
なん………だと……。
いや、待て。
「……魔力が捉えづらい……ってことはちょっと感知されてるってこと?」
「はい。ほんのちょっとですけど……」
……それ、かなりの魔力感知能力がないと無理だよな。
普通の――いや、一流の魔術師でも全然気づかないレベルにまで出力を落としているんだが。
むむむ……教え子のレベルを見誤っていたようだ。
「それで先生、外出するのが悪いことだと思っているのに、尚そうしない訳にはいかない目的って、何ですか?」
「それはだな……」
俺は息を吸い込み、覚悟を決める。目を閉じる。
「言えません」
………何も声が聞こえない。物音ひとつ聞こえない。
恐る恐る目を開いてみると、二人は、やれやれ、と言った感じで肩を軽くすくめていた。
「……兄様にも事情があるのでしょうから、追及はしませんけど」
「……そうね」
「……あ、あれ、いいの?」
「よくはないです」
「……はい」
「でも多分、やむにやまれぬ事情があるんですよね」
「……ま、まあね」
「返事が怪しいですね、先生……でも、これでこの話は終わりにしましょう」
「そろそろ勉強を始めないといけませんからね……兄様も研究を始めてくださいね?」
「お、おう」
○
書架へと移動し、古代魔法の祖――時明祈利が著した、魔法大全を手に取った。
最後に記された魔法を見る。
――曰く、古の天才魔術師は、最期に魔法を完成させ損ねた。
並んだ文字。立体魔法陣。そこから浮かび上がってくるのは血が滲んでくるような覚悟と決意。そして……自責。
魔法につけられた名は、『夜明ケノ誓イ』。
この魔法は――彼が自身の教え子、久宮誓依へ贈るために、作られた。
そう、言われている。
しかし、誰がこの魔法を使おうとしても、発動することは、ついになかった。
そう、言われている。
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