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第一章
第六十七話 そこの優しいお姉さんが助けてくれるよ
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荒れ狂う大海のごとき波乱を何とか乗り越え(られたのか?)、昼食を挟んで時葉への授業の時間となる。
時葉の部屋を訪ね、こんこんと軽くノックをすると、「先生ですか」という声の後に、ぱたぱたと足音が聞こえた。
時葉が慌ててるのって珍しいな……。と思いながら「うん」と返事をする。
ドアが開くと、時葉が顔を見せた。
部屋の中に入っていくと、先程の足音が何だったのかが判明する。
「こんにちは、お兄ちゃん」
机の前には二脚の椅子が置かれていて、その一つに夢乃が座っている。机上にはノートと教本が開かれていた。
「ああ、こんにちは……時葉と一緒に勉強してたのか?」
「はい。色々教えてもらいました。すっごく分かりやすかったです」
夢乃は嬉しそうに言った。時葉の方を見ると、「……なんですか」と、ちょっとぶっきらぼうな声が返ってくる。
……照れてるな。
悠可と時葉が一緒に居るのを見るときも思うけど、時葉はこう見えて――と言うと怒られるかもしれないから――お嬢様と言う存在に対して抱く一般的なイメージからすると意外なことに――ああいや、これもちょっと偏ったものの見方である気はするが(俺はなんでさっきから自分の頭の中の思考なのに言い訳をしているんだろう?)、時葉は凄く面倒見がいい、お姉さんタイプ。
……佳那や彩希がそうでないとは言わないし思わないけど(俺はなんで……)。
さて、時葉の言葉に対する返答はどうするべきだろうか。
称賛は素直に口にすべきだろう。どっかの誰かさんは適当なことを言いすぎて窮地に追い込まれていたし。ほんと、困った誰かさんだぜ。全く。
「……いや、時葉はお姉ちゃん気質だなって思っただけ」
「……そうですか?」
「うん……優しいし、面倒見がいいし、物事を分かり易く説明するのが上手い。褒め上手で聞き上手、気配りが細やかで、悩んでる人に手を差し伸べずにはいられなくて……」
「もういいですから……」
時葉が俯き加減に、ほんのりと頬を染めて言う。
ふむ。何かしら問題が発生したようだな。その原因が俺でないことは確かだと思うのだけど……。
俺は事実しか言ってないし。
と、そんなことを考えていると、夢乃が「お兄ちゃんは、ほんとにいつでもお兄ちゃんですね……」と言った。
「……早く授業を始めてください、先生」
「……あ、じゃあ私、帰ります」
「ん、でも時葉がよかったら、一緒に授業を聞いててもいいぞ」
「ほんとですか!……でも、内容が理解できるかどうか……」
「大丈夫、そこの優しいお姉さんが解説して――」
くれる、と言おうとしたところで、時葉に肩を小突かれた。
時葉の部屋を訪ね、こんこんと軽くノックをすると、「先生ですか」という声の後に、ぱたぱたと足音が聞こえた。
時葉が慌ててるのって珍しいな……。と思いながら「うん」と返事をする。
ドアが開くと、時葉が顔を見せた。
部屋の中に入っていくと、先程の足音が何だったのかが判明する。
「こんにちは、お兄ちゃん」
机の前には二脚の椅子が置かれていて、その一つに夢乃が座っている。机上にはノートと教本が開かれていた。
「ああ、こんにちは……時葉と一緒に勉強してたのか?」
「はい。色々教えてもらいました。すっごく分かりやすかったです」
夢乃は嬉しそうに言った。時葉の方を見ると、「……なんですか」と、ちょっとぶっきらぼうな声が返ってくる。
……照れてるな。
悠可と時葉が一緒に居るのを見るときも思うけど、時葉はこう見えて――と言うと怒られるかもしれないから――お嬢様と言う存在に対して抱く一般的なイメージからすると意外なことに――ああいや、これもちょっと偏ったものの見方である気はするが(俺はなんでさっきから自分の頭の中の思考なのに言い訳をしているんだろう?)、時葉は凄く面倒見がいい、お姉さんタイプ。
……佳那や彩希がそうでないとは言わないし思わないけど(俺はなんで……)。
さて、時葉の言葉に対する返答はどうするべきだろうか。
称賛は素直に口にすべきだろう。どっかの誰かさんは適当なことを言いすぎて窮地に追い込まれていたし。ほんと、困った誰かさんだぜ。全く。
「……いや、時葉はお姉ちゃん気質だなって思っただけ」
「……そうですか?」
「うん……優しいし、面倒見がいいし、物事を分かり易く説明するのが上手い。褒め上手で聞き上手、気配りが細やかで、悩んでる人に手を差し伸べずにはいられなくて……」
「もういいですから……」
時葉が俯き加減に、ほんのりと頬を染めて言う。
ふむ。何かしら問題が発生したようだな。その原因が俺でないことは確かだと思うのだけど……。
俺は事実しか言ってないし。
と、そんなことを考えていると、夢乃が「お兄ちゃんは、ほんとにいつでもお兄ちゃんですね……」と言った。
「……早く授業を始めてください、先生」
「……あ、じゃあ私、帰ります」
「ん、でも時葉がよかったら、一緒に授業を聞いててもいいぞ」
「ほんとですか!……でも、内容が理解できるかどうか……」
「大丈夫、そこの優しいお姉さんが解説して――」
くれる、と言おうとしたところで、時葉に肩を小突かれた。
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