草稿集

藤堂Máquina

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ストレスジュース

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 看板に『ストレスジュース』と書かれたその店ではミキサーに様々なものを入れて絞りたてのジュースを販売していた。

 一見するとなんの変哲も無いただのドリンクショップだったが、その看板が一つあるだけで、その店はこの辺りではかなりの存在感を誇っていた。

 店の中を見ると席の数はそう多くはなく、カウンターに六席ほどと、テーブル席が三つあるだけのようだった。

 そしてカウンターの上には大きなミキサーが一つ置いてある。

 店が静かなだけに一度動かすだけでそのミキサーはとてもよく目立つ。

 ミキサーの傍には様々なフルーツが山積みになっており、客は指定したフルーツでジュースを注文することができた。

 店に足を踏み入れるとフルーツ特有の甘味と酸味とが宙に舞っているのがわかる。

 何人かもわからないような顔のマスターに『ストレスジュース』を注文してみる。

 マスターは私にどんなことでストレスを感じているのかを訪ねた。

 なんだ、要するにその種類によってストレスの解消になるフルーツをミックスしてくれるだけのようだ。

 マスターは手際よくフルーツを刻む。
 「人間関係で少しね」と職場の愚痴をこぼす。

 すかさずマスターはそれらを拾い集めるとミキサーにかけ、私に消化できる形にしてオーダーに応じてくれた。

 私はそれに口をつけるとグラスをカウンターへと戻し、急いで店を出たのであった。
 
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