草稿集

藤堂Máquina

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吸血鬼

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そろそろ人間の血液を啜りたいものだ。

人間の不安ばかりを綴る魔王にでもなってしまう前に自分のあるべき姿に戻らなくてはならない。

忌み嫌われていたあの頃に戻らなくてはならない。

それが私の生命の在り方なのだ。


ある時私は1人の女の生命を喰らった。

それが生きることであり、当たり前のことであった。

女は知ってか知らずか動けなくなるまで動かなかった。

弱肉強食の世界だったのだ。

それの動きが止まると私は動きを止めた。

亡骸を棺に入れると地下室に葬った。

地下室の大袈裟な鍵をベルトにはめ込むと闇が訪れるのを待って外へ出た。

簡単なことだったが、きっと同意の上だった。

あれ以来人間の血液を飲むことができない。
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