草稿集

藤堂Máquina

文字の大きさ
上 下
37 / 78

舜目

しおりを挟む
 上を見ていた。

 空はみずいろをキャンバスに広げた。       
 
そうして青と白を足して水で伸ばした。
 ところどころにムラがある。

 下手くそな塗りだ。

 羽毛を詰めた包帯の球がが、風に踊りゆっくりと流れていく。

 穏やかだ。

 脇には灰色のコンクリートがそびえ立ち、枠を作っている。

陽気は灰色を照らしグラデーションを作っている。

 透明な板が私を照らす。

 照らす。

 照らす。

狭い路地から現れる黒い風を耳の裏や目に感じる。

 生かされる緑は地に伏してはいなかった。

 しかしその役目を果たすものではない。
 時折刺激が鼻へ伝わる。

 これは初体験だ。

 味にすれば甘みと酸味のするスイーツだろう。

 適度な歯ごたえもある。

 意識が遠くなる。

 耳元で羽音がする。

 鼓膜が裂ける。

 黒い風を払う。

 そして意識を取り戻す。

 たったの二秒が過ぎた。


しおりを挟む

処理中です...