草稿集

藤堂Máquina

文字の大きさ
上 下
44 / 78

帰還

しおりを挟む
 たったの四年間を千年に感じるなんてことは本当に容易いことであった。

 それは君のことを考える一分一秒に必要以上の心情を込めてしまったことに他ならない。

 ある時の私が寝る間を惜しんで君に手紙を書いてしまったことも理由になるだろう。

 兎に角私の時間が永久に留まり続けたことが数えられないほど存在しているということは事実なのだ。

 だがこうして君の姿を二度と見ることができないと思うと私の千年は他の人の数秒、もしかすると君の数分の価値となんら変わらないのだろう。

 もし君が一時間ほど涙を流してくれれば私の四年間はいくつかの永久よりも一時間だけ長く存在していることになるだろう。

 それはお世辞にもロマンチックだなんて言葉を使ってはいけないと思ってしまうほどつまらないものなのだろうけど、この時間に唯一意味や価値をつけることを認めることのできる私が無くなってしまうのだろう。

 私の思考が完全に停止してしまったあとは誰にも伝えられないこの心情を勝手に決めつけてくれるであろう君に期待することにするよ。

 君を蔑ろにしてきたのは私の罪で、私を待ち続けたという君の正義を否定する私のことをどうか許してほしい。

 いや、許してくれなくても構わない。

 私の望むことは君の四年間を奪ったかもしれないということを忘れてくれることなのだ。
しおりを挟む

処理中です...