草稿集

藤堂Máquina

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夏がやってきたのだろう。

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蝉の声がする。

夏がやってきたのだろう。

本能が呼ぶ。

コンクリートはすっかり焼けている。

九十九里の砂浜は抑えてきた輝きを取り戻そうとする。

鼻に付く潮風ですら気持ちよ良いものと錯覚させる。

裸足では歩けぬ

錆びた鉄柵を飛び越えると、足は砂を掘った。

その度に砂浜は足を抱きしめた。

視界に捉えるのは海だけでよかった。

流木に手を振るとまた旅が始まるのであった。
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