蛙鳴蝉噪

藤堂Máquina

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こんな夢をみた。

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こんな夢をみた。
コンビニエンスストアでお菓子を買う夢だ。
少年に戻った訳ではない。
つまりなんだかその、ただ単にその類のもの食べたくなったのだ。
別に珍しいことではないだろう。
時には誰だって甘いものや、しょっぱいものを食べたくはなるだろう。
違うのは子供の頃に得た感動だけだ。
その時に喜ばしく思ったものを時々恋しくも思うのだ。
多分私も長いこと見てすらいないそれらを無意識のうちに手に取り、口にしたいと思ったのだろう。
自動ドアを抜ける。
それだって監禁状態の今では物珍しいものなのかもしれないが、私の記憶の中では鮮明のようだ。
それからわざと遠回りをしながら目的地へ。
それだけを買うのもなんだか良くないような気がして、弁当や飲み物のコーナーも見て回る。
夢の中だ。
正直なところ自分が空腹なのかどうかも分からない。
それでもそれに欲が向いたのだから従う方が良さそうだ。
私はラムネ菓子のことを考える。
ブドウ糖でできたあの、甘みの塊のような菓子である。
その瞬間商品棚は一面それに変わった。
あぁ
探す手間は省けた。
しかしその一方で探す楽しみはなくなった。
辿り着くまでの発見を楽しみたいのだ。
余計なものを買うことになるかもしれないスリルを味わいたいのだ。
きっとそれしかない店なんて、味気のない店だ。
問題があるのは私の頭だ。
記憶力だ。
イメージしたものしか見ることができないのだ。
この時になるともうすっかり自分が夢の中にいることは分かっていた。
分かっていたのだが、不思議と起きようという気分にならない。
そもそもその発想に至らない。
あまり退屈になってしまったため、違う菓子を買おうとグミのことを考えた。
グミなんてものは、普段私は食べないのだが、菓子のジャンルとして出てきたのかそれだったのである。
するとどうだ。
商品棚の一番下の段だけいつのまにかグミに変わっている。
全てグレープ味、紫一色だ。
私の記憶から持ってきているのだから仕方がない。
私はせっかく作り出したそれを買う訳でもなく、一つのものも手に取らずに店の外へ出た。
ラムネ菓子すら取らなかったのは、多分そこが夢の中だと知っていたからである。
私は再び自動ドアを抜けると賑やかな方を見る。
道を挟んだ向かい側は小学校か中学校のようで、ボールが飛び交っている。
私は興味のないようにその場を後にすると、永遠に終わらない過去の自分を横目にできるだけ何もない方向へと歩みを進めた。
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