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第7章 因果
2 沖芝管理官の哀叫
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K署に向かう車の中で、浦安は岩永に弓削から聞いた妖化現象のことを話した。
「須田は、その妖化の状態になったから速水を襲ったと?」
運転席の岩永の顔は険しい。どうやら、この内容については本当に初耳だったようだ。
「そもそも弓削は公安調査庁からマークされている人間からそのことを聞いたわけでしょう?そんな話を信じろと?」
「確かに、鵜呑みにするわけにはいかないかもしれない。だが実際に、水谷鈴や髙瀬陽翔はその場で射殺されたんだぞ?須田もそうならないと言い切れるか?」
岩永は前方の赤信号を睨み、目線だけを浦安に向ける。
「水谷鈴は射殺されてないでしょう?そんな話は聞いていない」
「じゃあお前、生きてる姿を確認したのか?俺は見たんだ、目の前でな。それに髙瀬に関しては動画が出回ってるんだぞ?もう誤魔化しは効かないんだよ!」
岩永はうーんと唸り、青信号で発信した。
「なあ岩ちゃん、俺たち警察官の使命って何だ?」
敢えて昔の呼び名で呼ぶ。今俺たち二人が争う理由なんてないことを分からせるために。
「そりゃあ、市民の安全を守ることでしょう?」
「じゃあ聞くが、市民とは誰だ?犯罪者は市民じゃないのか?」
「もちろん、犯罪者も市民です。だけど、法を犯したなら捕まえる。それが警察官の務めでしょう?」
「そうだ。法を犯したやつは捕まえる。そして立件し、法の裁きを受けさせる。そこまでが俺たちの役目だ。俺たちに、犯罪者を死刑にする権限は無いんだよ!」
岩永がハッとして息を飲む気配が助手席まで伝わる。浦安はここぞとばかりに言葉を被せる。
「とにかく、俺は須田の安全を確認したいだけなんだ。大事な部下を、非合法に死なせるわけにはいかないんだよ!」
岩永は浦安の真剣な顔を直視した。そして嘆息し、相変わらずですねと呟いた。
「分かりました。この後、幹部会議が6時から、全体の捜査会議が7時からになっています。管理官も幹部会議用の会議室にいるはずです。そこへ一緒に行きましょう」
現在5時50分、岩永には自分を迎えに来させたためにギリギリの時間にさせてしまった。浦安は気持ちの通じた岩永に頭を下げ、言った。
「ありがとう!あと、前を向いて運転してくれ」
K署に着き、岩永と一緒に連れ立って入った会議室には管理官以下、警察庁の係長クラスの幹部が五人、それにK署の署長、副署長が顔を揃えていた。係長といっても警察庁の係長クラスといえば浦安のような所轄の係長と比べるとワンランク上の存在になる。もし謹慎が言い渡されていなくても、浦安が入ってもいい場所ではなかった。案の定、上座の沖芝管理官は岩永に続いて入ってきた浦安の顔を見ると眉間に深いしわを寄せ、普段からの吊り目を一層吊り上がらせた。
「おいおい岩永、何で浦安を連れて来た!?」
署長が顔を強張らせ、場の空気を呼んで真っ先に岩永を詰める。岩永が口を開く前に浦安が頭を下げる。
「申し訳ありません、自分がどうしても連れて行けと我儘を言いました。今回、警察庁の面々はやたらと被疑者を殺しまくっておられるようですのでね、自分の部下も殺されちゃあ叶わないと思って乗り込んだんですよ。管理官!署長でも構いません、須田が今どこにいるか、お教え願えませんかね?」
浦安は嫌味も込めながら一気に捲し立てる。
「な、何を言っとるんだ!今から重大な会議を始める。そんな訳のわからないことで邪魔をしないで出て行きなさい!」
脂ぎった頬をふるふる震わせて立ち上がった署長を、沖芝管理官が手で制した。
「分かりました。署長、適当な会議室を一つお貸し願います。そして私が彼と話している間、さっき言った案件を進めておいて下さい」
「し、承知しました。ど、どうもお手を煩わせまして本当に申し訳ありませんです」
署長がバカ丁寧に管理官に頭を下げ、内線で一つの会議室を開けさせる。そしてその場所を浦安に告げた。
「下らない駄々を捏ねてないで、早く管理官をこちらにお戻しするんだぞ!」
下らない、と言われて反論したい気持ちを抑え、署長の言葉を背に沖芝管理官を伴って部屋を出た。教えられた会議室の鍵はすでに空いていて、中に入ると電灯とエアコンを付ける。六人ほどが座れるその会議室の対面にそれぞれが席に着く。誤魔化しは効かない、そんな雰囲気を醸すために浦安はずっと沖芝を睨んでいた。
「で?何が聞きたいんです?」
沖芝も臆せず浦安の瞳の中の芯の部分を射抜くように見据える。さすがに早々と警視にまで上がっただけはあり、肝が据わっている。対して浦安には愚直なだけの言葉しか持ち合わせておらず、怯むことなくその言葉をぶつけようと目線に熱を入れた。
「須田のことはお聞きになっているでしょう?禍津町のノワールでの一件を撮影し、一般の配信者に垂れ流したあげく、同僚の胸を刺した男です」
「ええ、お陰でこちらは二時間早く仕事を始めなければいけなくなりました」
二時間くらい、と言いたかったが、元々睡眠不足気味に頑張っているのだろう、沖芝の目には明らかに寝不足と思われる充血が伺えた。
「直属の上司として、それは申し訳なく思います。が、彼は死刑宣告されるほどの罪を犯したわけじゃない。ちゃんと生きてるところを確認したいだけなんです。出来れば、何で今回のような凶行に走ったか、彼の口から直接聞きたい。どうか、彼の居場所を教えて下さい。そして、自分に面会させて下さい」
浦安はテーブルに頭が着くくらい低頭してその願いに力を込めた。そしてそのままの姿勢で管理官の言葉を待つ。が、いくら待っても部屋の空調の音しか聞こえない。ゴーという乾いた音が、浦安を拒絶してるように感じられた。すごく長い時間に思われたが、測れば二分くらいだっただろう。なかなか口を開かない沖芝に不信感が募り、浦安は顔を上げた。目の前には、遠くの火事を見つめるような、そんな諦めの混じった視線。それは不躾な手下に向ける管理者の目ではなく、災難になすすべなく立ち尽くす一般の女性の目だった。
浦安は総毛立った。そして、怒りや悔しさの入り混じった感情が押し寄せ、それらの感情は言葉を経由せずに拳に溜まり、力任せにテーブルを打ちつけた。ダン、と大きな音が響き、沖芝の肩がビクッと上がる。
「仕方が、ないのです」
やっと管理者の口から、力の無い言葉が漏れる。
「妖化した者は容赦なく殺す、そういうことですか?」
「あやかしか?」
警察庁ではそういう言い方をしないようだ。浦安は彼女に分かりやすい言葉で言い直す。
「目から血が出て、首が伸びる。そうなった者は理性を失い、犯罪を犯すことも厭わなくなる。だから、目から血を流した者はそうなる前に抹殺する。そういうことですか?」
浦安の鋭い目線をずっと臆せず受けていた沖芝の目が、下に逸れた。そして肩を落とし、呟くように言う。そこに気の強い管理者の姿は無かった。
「国家公安委員会からの決定なのです。私では、どうすることもできません」
国家公安委員会…警察庁の上位組織だ。ちなみにドラマなんかでよく「公安」と呼ばれるのは警察内部の公安警察のことで、また、室町たちが所属する公安調査庁は法務省の外局であり、内閣府の外局である国家公安委員会とはどちらも組織が異なる。
「つまり、首相が決定されているということですか?」
沖芝はもう一度浦安と目を合わせ、静かに頷く。
「これは、一級の国家機密です。本来あなたに言うべき内容ではないのですが、こうやって明かすのは、あなたが警察官の職務を全うしてくれると信用するからです。決して、このことは他言しないように」
「つまり、世間に公表することなく市民が葬り去られるのを黙って見ていろ、と?他に選択肢は無いんですか!?隔離して様子をみるとか!そもそも、理性がちょっとばかしおかしくなる病気じゃないんですか?」
「もちろん、最初に発覚した時は新たな伝染病の可能性が真っ先に疑われました。そしてあらゆる検査の結果、病気ではないと結論づけられたのです。細菌やウイルスによるものではないということです。正確に言うなら、世界の病気とされるどの症状にも当てはまらない、ということです」
「だからって!新種の病気かもしれないじゃないですか!殺さずとも、もっと方法はあるでしょう?」
その浦安の言葉を聞き、沖芝は深く長いため息を吐く。
「おそらく、一般に公表すれば今のあなたのようなことを言う人で溢れるでしょう。ですが、日本は、いえ、世界は、やっとここ数年苦しめられてきたパンデミックから解放されたのです。もし公表して、日本で新たな伝染病が広まっているなんて風評が撒き散らされたなら、そして日本が世界から切り離されたなら、日本は再起出来ない不況に見舞われるでしょう。日本も疲弊しています。経済を回復されること、それが日本の最重要課題なのです」
その管理官のまるでマニュアル本を読むかのような抑揚のない説明を、浦安は冷たい鋼鉄で心臓を撫でられるような感覚で聞いた。
「だから、水谷鈴も髙瀬陽翔も、そして須田も、殺されたんですか?ひょっとして、聖蓮女子の目から出血した生徒たちも、もうこの世にいないんですか?」
地の底から出たような、感情の冷え切った声だと自分でも思った。その浦安の声を聞き、沖芝の顔が歪む。そして今にも泣きそうな顔になり、悲痛な声で訴えた。
「私にも高校生の娘がいます。もしその子がここで起こってる現象に巻き込まれたらと思うと、ゾッとします。絶対にそんなことにならないように食い止めなければ、そう思うんです!あなたの言うアヤカシ化した人間は、ただ人を襲うだけではありません。その人間に見つめられたら、逃げようにも体が動けなくなるんです!逃げようがないんです!怖いんです!もし娘が巻き込まれたら、そう考えたら、怖くて怖くて、どうしようもないんです!」
彼女も決して自分たちのやっていることが絶対的に正しいと思っていないのかもしれない。涙を流しながら彼女の口から発されたのは、警察官ではなく、娘を想う一人の母親の感情のこもった叫びだった。
「須田は、その妖化の状態になったから速水を襲ったと?」
運転席の岩永の顔は険しい。どうやら、この内容については本当に初耳だったようだ。
「そもそも弓削は公安調査庁からマークされている人間からそのことを聞いたわけでしょう?そんな話を信じろと?」
「確かに、鵜呑みにするわけにはいかないかもしれない。だが実際に、水谷鈴や髙瀬陽翔はその場で射殺されたんだぞ?須田もそうならないと言い切れるか?」
岩永は前方の赤信号を睨み、目線だけを浦安に向ける。
「水谷鈴は射殺されてないでしょう?そんな話は聞いていない」
「じゃあお前、生きてる姿を確認したのか?俺は見たんだ、目の前でな。それに髙瀬に関しては動画が出回ってるんだぞ?もう誤魔化しは効かないんだよ!」
岩永はうーんと唸り、青信号で発信した。
「なあ岩ちゃん、俺たち警察官の使命って何だ?」
敢えて昔の呼び名で呼ぶ。今俺たち二人が争う理由なんてないことを分からせるために。
「そりゃあ、市民の安全を守ることでしょう?」
「じゃあ聞くが、市民とは誰だ?犯罪者は市民じゃないのか?」
「もちろん、犯罪者も市民です。だけど、法を犯したなら捕まえる。それが警察官の務めでしょう?」
「そうだ。法を犯したやつは捕まえる。そして立件し、法の裁きを受けさせる。そこまでが俺たちの役目だ。俺たちに、犯罪者を死刑にする権限は無いんだよ!」
岩永がハッとして息を飲む気配が助手席まで伝わる。浦安はここぞとばかりに言葉を被せる。
「とにかく、俺は須田の安全を確認したいだけなんだ。大事な部下を、非合法に死なせるわけにはいかないんだよ!」
岩永は浦安の真剣な顔を直視した。そして嘆息し、相変わらずですねと呟いた。
「分かりました。この後、幹部会議が6時から、全体の捜査会議が7時からになっています。管理官も幹部会議用の会議室にいるはずです。そこへ一緒に行きましょう」
現在5時50分、岩永には自分を迎えに来させたためにギリギリの時間にさせてしまった。浦安は気持ちの通じた岩永に頭を下げ、言った。
「ありがとう!あと、前を向いて運転してくれ」
K署に着き、岩永と一緒に連れ立って入った会議室には管理官以下、警察庁の係長クラスの幹部が五人、それにK署の署長、副署長が顔を揃えていた。係長といっても警察庁の係長クラスといえば浦安のような所轄の係長と比べるとワンランク上の存在になる。もし謹慎が言い渡されていなくても、浦安が入ってもいい場所ではなかった。案の定、上座の沖芝管理官は岩永に続いて入ってきた浦安の顔を見ると眉間に深いしわを寄せ、普段からの吊り目を一層吊り上がらせた。
「おいおい岩永、何で浦安を連れて来た!?」
署長が顔を強張らせ、場の空気を呼んで真っ先に岩永を詰める。岩永が口を開く前に浦安が頭を下げる。
「申し訳ありません、自分がどうしても連れて行けと我儘を言いました。今回、警察庁の面々はやたらと被疑者を殺しまくっておられるようですのでね、自分の部下も殺されちゃあ叶わないと思って乗り込んだんですよ。管理官!署長でも構いません、須田が今どこにいるか、お教え願えませんかね?」
浦安は嫌味も込めながら一気に捲し立てる。
「な、何を言っとるんだ!今から重大な会議を始める。そんな訳のわからないことで邪魔をしないで出て行きなさい!」
脂ぎった頬をふるふる震わせて立ち上がった署長を、沖芝管理官が手で制した。
「分かりました。署長、適当な会議室を一つお貸し願います。そして私が彼と話している間、さっき言った案件を進めておいて下さい」
「し、承知しました。ど、どうもお手を煩わせまして本当に申し訳ありませんです」
署長がバカ丁寧に管理官に頭を下げ、内線で一つの会議室を開けさせる。そしてその場所を浦安に告げた。
「下らない駄々を捏ねてないで、早く管理官をこちらにお戻しするんだぞ!」
下らない、と言われて反論したい気持ちを抑え、署長の言葉を背に沖芝管理官を伴って部屋を出た。教えられた会議室の鍵はすでに空いていて、中に入ると電灯とエアコンを付ける。六人ほどが座れるその会議室の対面にそれぞれが席に着く。誤魔化しは効かない、そんな雰囲気を醸すために浦安はずっと沖芝を睨んでいた。
「で?何が聞きたいんです?」
沖芝も臆せず浦安の瞳の中の芯の部分を射抜くように見据える。さすがに早々と警視にまで上がっただけはあり、肝が据わっている。対して浦安には愚直なだけの言葉しか持ち合わせておらず、怯むことなくその言葉をぶつけようと目線に熱を入れた。
「須田のことはお聞きになっているでしょう?禍津町のノワールでの一件を撮影し、一般の配信者に垂れ流したあげく、同僚の胸を刺した男です」
「ええ、お陰でこちらは二時間早く仕事を始めなければいけなくなりました」
二時間くらい、と言いたかったが、元々睡眠不足気味に頑張っているのだろう、沖芝の目には明らかに寝不足と思われる充血が伺えた。
「直属の上司として、それは申し訳なく思います。が、彼は死刑宣告されるほどの罪を犯したわけじゃない。ちゃんと生きてるところを確認したいだけなんです。出来れば、何で今回のような凶行に走ったか、彼の口から直接聞きたい。どうか、彼の居場所を教えて下さい。そして、自分に面会させて下さい」
浦安はテーブルに頭が着くくらい低頭してその願いに力を込めた。そしてそのままの姿勢で管理官の言葉を待つ。が、いくら待っても部屋の空調の音しか聞こえない。ゴーという乾いた音が、浦安を拒絶してるように感じられた。すごく長い時間に思われたが、測れば二分くらいだっただろう。なかなか口を開かない沖芝に不信感が募り、浦安は顔を上げた。目の前には、遠くの火事を見つめるような、そんな諦めの混じった視線。それは不躾な手下に向ける管理者の目ではなく、災難になすすべなく立ち尽くす一般の女性の目だった。
浦安は総毛立った。そして、怒りや悔しさの入り混じった感情が押し寄せ、それらの感情は言葉を経由せずに拳に溜まり、力任せにテーブルを打ちつけた。ダン、と大きな音が響き、沖芝の肩がビクッと上がる。
「仕方が、ないのです」
やっと管理者の口から、力の無い言葉が漏れる。
「妖化した者は容赦なく殺す、そういうことですか?」
「あやかしか?」
警察庁ではそういう言い方をしないようだ。浦安は彼女に分かりやすい言葉で言い直す。
「目から血が出て、首が伸びる。そうなった者は理性を失い、犯罪を犯すことも厭わなくなる。だから、目から血を流した者はそうなる前に抹殺する。そういうことですか?」
浦安の鋭い目線をずっと臆せず受けていた沖芝の目が、下に逸れた。そして肩を落とし、呟くように言う。そこに気の強い管理者の姿は無かった。
「国家公安委員会からの決定なのです。私では、どうすることもできません」
国家公安委員会…警察庁の上位組織だ。ちなみにドラマなんかでよく「公安」と呼ばれるのは警察内部の公安警察のことで、また、室町たちが所属する公安調査庁は法務省の外局であり、内閣府の外局である国家公安委員会とはどちらも組織が異なる。
「つまり、首相が決定されているということですか?」
沖芝はもう一度浦安と目を合わせ、静かに頷く。
「これは、一級の国家機密です。本来あなたに言うべき内容ではないのですが、こうやって明かすのは、あなたが警察官の職務を全うしてくれると信用するからです。決して、このことは他言しないように」
「つまり、世間に公表することなく市民が葬り去られるのを黙って見ていろ、と?他に選択肢は無いんですか!?隔離して様子をみるとか!そもそも、理性がちょっとばかしおかしくなる病気じゃないんですか?」
「もちろん、最初に発覚した時は新たな伝染病の可能性が真っ先に疑われました。そしてあらゆる検査の結果、病気ではないと結論づけられたのです。細菌やウイルスによるものではないということです。正確に言うなら、世界の病気とされるどの症状にも当てはまらない、ということです」
「だからって!新種の病気かもしれないじゃないですか!殺さずとも、もっと方法はあるでしょう?」
その浦安の言葉を聞き、沖芝は深く長いため息を吐く。
「おそらく、一般に公表すれば今のあなたのようなことを言う人で溢れるでしょう。ですが、日本は、いえ、世界は、やっとここ数年苦しめられてきたパンデミックから解放されたのです。もし公表して、日本で新たな伝染病が広まっているなんて風評が撒き散らされたなら、そして日本が世界から切り離されたなら、日本は再起出来ない不況に見舞われるでしょう。日本も疲弊しています。経済を回復されること、それが日本の最重要課題なのです」
その管理官のまるでマニュアル本を読むかのような抑揚のない説明を、浦安は冷たい鋼鉄で心臓を撫でられるような感覚で聞いた。
「だから、水谷鈴も髙瀬陽翔も、そして須田も、殺されたんですか?ひょっとして、聖蓮女子の目から出血した生徒たちも、もうこの世にいないんですか?」
地の底から出たような、感情の冷え切った声だと自分でも思った。その浦安の声を聞き、沖芝の顔が歪む。そして今にも泣きそうな顔になり、悲痛な声で訴えた。
「私にも高校生の娘がいます。もしその子がここで起こってる現象に巻き込まれたらと思うと、ゾッとします。絶対にそんなことにならないように食い止めなければ、そう思うんです!あなたの言うアヤカシ化した人間は、ただ人を襲うだけではありません。その人間に見つめられたら、逃げようにも体が動けなくなるんです!逃げようがないんです!怖いんです!もし娘が巻き込まれたら、そう考えたら、怖くて怖くて、どうしようもないんです!」
彼女も決して自分たちのやっていることが絶対的に正しいと思っていないのかもしれない。涙を流しながら彼女の口から発されたのは、警察官ではなく、娘を想う一人の母親の感情のこもった叫びだった。
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