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第9章 終焉
10 天冥暗殺指令
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「その男を捕まえて!早く!」
弾正が部屋を出ると見るや、朝霧は即座に追って玄関にいる自衛隊員たちに叫んだ。ちょうど玄関を出た弾正とぶつかり、隊員たちは弾正を取り囲む。弾正は門からは出られずに庭を右に折れ、そこにあった犬小屋の後ろに回った。
「おい!ピノン!助けろ!あいつらを威嚇するんだ!」
弾正の声とともに犬小屋から小さな白い猪が飛び出し、ブヒブヒと鼻を鳴らした。
「何だこいつ、こんな可愛いのが威嚇したから何なんだ?」
隊員たちが笑い、一人が頭を撫でようと手を出す。猪はその手にカプっと噛み付く。おわっと隊員が手を引っ込め、少し後退った時、猪の鳴らすくぐもった喉の音が次第に腹の底に響くような重低音に変わっていく。あろうことか、猪の身体がみるみる大きくなっていく。あれあれと言ううちに横幅が1メートルほどにもなり、完全に庭の奥への道を塞いでしまった。
「こ、これも、幻覚なんですか?」
浦安は思わず朝霧に聞く。朝霧は猪の出す音が移ったように、グググと喉を鳴らした。これは幻覚ではない。目の前の獣にはしっかりとした質感があるのだ。とすると、最後の謎も解けた気がする。三国が噛まれた首の傷、小さかった猪には無理な傷だったが、今の大きさの猪なら可能だ。この猪は青井に懐いている。もし青井が三国を殺害したなら、この猪をけしかけたのだ。巨大化した猪は鋭い牙を剥き出しにし、こちらを睨んでグオオと咆哮した。怯んでいる隙に、弾正は北奥の竹林に姿を消した。
「う、撃て!撃てー!」
隊員たちが銃を構える。浦安は咄嗟に猪の前に出て隊員たちに向いて手を広げた。
「むやみな殺生は止めましょう!この猪に罪はない!」
もしこの獣がこのまま人を襲えば罪がないことはない。だがなぜか、浦安にはそうしないといけないように思えた。この白い猪に、何か神聖なものを感じたのだった。猪は身を翻し、弾正を追うように竹林に駆けた。そして、あっという間に姿が見えなくなった。
「すみません、そうしないといけない気がして…」
浦安は呆気に取られている朝霧に謝った。朝霧は別段怒ってもいないようで、浦安の肩をポンポンと叩くと、
「どの道あそこに逃げられたらもう捕まえられなかったさ。でも忘れちゃならないのは、僕らはただ犯人を捕まえればいいんじゃなくて、人がおかしくなることの解明をしなくちゃならないんだ」
と神妙な顔で言った。そして隊員たちの隊長を呼び、これからもっと大勢の自衛隊員を投入して山狩りをするよう指示を出した。猪が巨大化したことについては特に言及することなく、解明解明、と呟きながら門に向かう。張っていた気が抜け、浦安はノワールから出て車の方へ向かう朝霧を追い、さっきの弾正とのやり取りの中で不審に思った点を聞こうと朝霧に並ぶ。朝霧は手を振ってそれを遮った。
「あっちいからさ、話は車ん中で」
特務調査室専用のバンに乗り込む朝霧に続いて後部のシートに入ろうとすると、
「いやいや、誰が運転すんのさ。まこっちゃんは運転席っしょ」
と前に追いやられる。思えば朝霧はすでにかなりの量の酒を飲んでいる。はなから運転は自分に任せるつもりだったのだ。浦安は仕方なくサイドドアを閉め、運転席に向かった。外はすでに暗く、エンジンをかけて冷房とライトを入れた。自分も何口かウイスキーを飲んでしまったが、まあそこは大目に見てもらおう。だが車を動かせと言われる前に、聞くべきことを聞こうと後ろを向いた。
「さっきの話なんですがね、青井が公安調査庁の人間だったってのは本当なんですか?」
「ああ、本当だよ。草太は僕たち特務調査室のメンバーで、セフィロトの潜入捜査をしてもらってたんだ」
「じゃあ、三国を殺して、四條畷も手にかけたってのも…」
「ああ、それに関してはある意味本当で、ある意味嘘だね。さっきも言ったでしょ?僕らは事態の解明を優先に動いてる。だから殺すよりも確保したいのさ。特に四條畷に関してはね。でも草太が殺したってのは本当だろうね。彼が自主的にやったのか、それともやらされたのかは分からない。だけどさ、さっき弾正がかなり事情を知っていたことから判断すると、草太はすでに弾正に洗脳されてると見て間違いないっしょ。あの四條畷殺害現場では僕の一存で捜査が完全に巡査に向くように拳銃を隠したってのも本当。草太が取り調べられるようなことになったら厄介だからね」
そう言ってペロっと舌を出す朝霧を見て、浦安は七星の家での初動捜査で青井に事情聴取しようと呼び出した時、朝霧に邪魔されたことを思い出した。朝霧にしてみれば、同じ特務調査員である青井が調べられる訳にはいかなかったのだ。朝霧は浦安の目の中に不信を読んだのか、さらに言葉を次いだ。
「昨夜のまこっちゃんの報告ではさあ、六甲道朱美は草太の不注意で死んだんだよねえ?でもそれってさ、本当に不注意だったのかなあ?こう考えられない?三国と四條畷の間に入り、事情をよく知る彼女も口封じに殺したって。そうなるとさ、草太は弾正の手先になってるって見て間違いないよね?ちなみに僕らには朱美に死なれる必要は全く無いからね」
確かに、あの場でコケた草太の動きは怪しいといえば怪しかった。朝霧がさらに続ける。
「ま、これからセフィロトに乗り込んで、草太を捕まえて聞けばいいんじゃない?さ、レッツゴー!」
「え、今からですか?」
「おいおいまこっちゃ~ん、それでも刑事?さっき弾正から草太の犯行を聞いたんだよ?捕まえて調べるのがあんたら警察の仕事でしょうよ、違う?」
「ま、まあ…ですね」
警察の仕事と言うが、この禍津町はすでにロックダウンされ、動き回る権限は自衛隊に移っている。ノワールの封鎖などという警察では出来なかったこともやってのけるのである。
「そういえば、ノワールの大家には許可を取っているんですか?朝霧さんの話を聞いていると、大家は完全に蚊帳の外という感じがしますが」
「ああ、あの漫画家のじいさんね。神坂善晴…昭和にホラー漫画で一世風靡したんだけどさ、今は隠居状態みたいだね。当然、彼のことも調べたけど、まあ弾正に良いように使われてしまったというのがうちの見解。調査員に町の中で弾正と一緒にいる姿が度々目撃されてる。ひょっとしたらすでにセフィロトに取り込まれてるか、処分されてるかもしれないね。ノワールの横の家はずっと留守にしてるんだ。ウェブ検索かけたら顔が出てくるからさ、まこっちゃんもどっかで見かけたらこっちに連絡して」
「分かりました」
浦安は手帳に「かみさかよしはる」とメモる。取り敢えず、これで聞きたかったことは一通り訊けたと、浦安は前を向き、ハンドルを握った。そんな浦安に、朝霧がぬっと上体を寄せる。
「それとね、まこっちゃんには公安調査庁としてやってもらいたいことがあるんだ。いや、この仕事をするためにあんたが今日、室長から呼ばれたって言っても過言じゃない。まこっちゃん、今からセフィロトに潜入して、五月山天冥を暗殺して欲しい」
トーンの低くなった声に背中を撫でられ、背筋が凍る思いがした。バックミラー越しに朝霧を見ると、暗闇に妖しく光る目に捉えられた。
「暗殺…ですか、それはまた穏やかじゃありませんな。さっき殺すより捉えると仰ったのでは?」
「うん、弾正はね。できたら四條畷も捉えたかった。四條畷はセフィロトの科学方面の責任者だったからね、神経作用物質の作り方や対処法を聞きたかった。でも、天冥は別。僕らはね、天冥は洗脳担当だと踏んでるんだ。神経作用物質で理性を破壊するだけじゃ、まともな活動をさせられないからね。まこっちゃんも彼女と話をして分かったでしょ?彼女は口が上手い。きっと思想の布教なんかは彼女が任されてるんだ」
「だからって、殺すことは…」
躊躇する浦安に、朝霧は大きくため息をついた。
「まこっちゃん、思い出しなよ。きのう、何が起こった?室長との報告で教えてくれたよね?仲間が裏切ってたって。まこっちゃんは影武者とか何とかファンタジーなこと言ってたけどさ、それってただの洗脳っしょ。言ってたじゃん、僕らの特務調査室の中にも裏切り者がいたって。そうやってさ、やつらはこっちの内部にも染み込んでくるんだ。その元を絶たないと、これからもそういう悲劇は起こる。まこっちゃんに取っても敵討ちになるんだよ。ちょうど、まこっちゃんは天冥から信頼されてるみたいだからさ、この役はまこっちゃんにしか出来ないんだ。頼むよ。日本の未来は、まこっちゃんに掛かってるって言ってもいい。ここは躊躇するとこじゃないっしょ!」
確かに、敵は討ちたい。だがその相手は本当に天冥でいいのだろうか?きのうの夜、確かにお焚き火に照らされてできるはずの天冥の影は無かった。怪しいといえば、かなり怪しい。そのことの真意を確かめたいとは思っていた。だが殺意までは湧いてこない。天冥の言葉には、それなりの説得力があったのだ。だがそれを朝霧に言っても、それこそが洗脳だと言うだろう。
「分かりました。これからセフィロトに向かいます。ですが、まずは自分一人に行かせてもらえませんか?天冥を見舞い、もし必要とあらば仰る通りにします。自分だって無惨に死んでいった仲間たちの敵を討てるなら本望です。必ずやり遂げてみせます」
生ぬるい、と言われそうだったが、それが自分の譲歩できる精一杯だった。朝霧はそんな浦安の言葉に異論を唱えることなく、ただ肩をポンポンと叩いた。浦安はそれを肯定と判断し、車を降りた。降りる間際、
「草太に会っても尋問とかしないように。それは天冥の方のカタがついてからでいいから、まずは天冥に専念して。それと、僕らはセフィロトの入り口で待機してるから、何かあったらすぐに連絡するように」
と言って送り出した。浦安はそれに頷き、自分の車へと移った。ヒグラシの鳴き声はジーという虫の単調で陰鬱な声に代わっている。浦安は、自分は本当に何も知らなかったというある種の苛立ちを感じながら、禍津町北西部に位置するセフィロトへと車を走らせた。
弾正が部屋を出ると見るや、朝霧は即座に追って玄関にいる自衛隊員たちに叫んだ。ちょうど玄関を出た弾正とぶつかり、隊員たちは弾正を取り囲む。弾正は門からは出られずに庭を右に折れ、そこにあった犬小屋の後ろに回った。
「おい!ピノン!助けろ!あいつらを威嚇するんだ!」
弾正の声とともに犬小屋から小さな白い猪が飛び出し、ブヒブヒと鼻を鳴らした。
「何だこいつ、こんな可愛いのが威嚇したから何なんだ?」
隊員たちが笑い、一人が頭を撫でようと手を出す。猪はその手にカプっと噛み付く。おわっと隊員が手を引っ込め、少し後退った時、猪の鳴らすくぐもった喉の音が次第に腹の底に響くような重低音に変わっていく。あろうことか、猪の身体がみるみる大きくなっていく。あれあれと言ううちに横幅が1メートルほどにもなり、完全に庭の奥への道を塞いでしまった。
「こ、これも、幻覚なんですか?」
浦安は思わず朝霧に聞く。朝霧は猪の出す音が移ったように、グググと喉を鳴らした。これは幻覚ではない。目の前の獣にはしっかりとした質感があるのだ。とすると、最後の謎も解けた気がする。三国が噛まれた首の傷、小さかった猪には無理な傷だったが、今の大きさの猪なら可能だ。この猪は青井に懐いている。もし青井が三国を殺害したなら、この猪をけしかけたのだ。巨大化した猪は鋭い牙を剥き出しにし、こちらを睨んでグオオと咆哮した。怯んでいる隙に、弾正は北奥の竹林に姿を消した。
「う、撃て!撃てー!」
隊員たちが銃を構える。浦安は咄嗟に猪の前に出て隊員たちに向いて手を広げた。
「むやみな殺生は止めましょう!この猪に罪はない!」
もしこの獣がこのまま人を襲えば罪がないことはない。だがなぜか、浦安にはそうしないといけないように思えた。この白い猪に、何か神聖なものを感じたのだった。猪は身を翻し、弾正を追うように竹林に駆けた。そして、あっという間に姿が見えなくなった。
「すみません、そうしないといけない気がして…」
浦安は呆気に取られている朝霧に謝った。朝霧は別段怒ってもいないようで、浦安の肩をポンポンと叩くと、
「どの道あそこに逃げられたらもう捕まえられなかったさ。でも忘れちゃならないのは、僕らはただ犯人を捕まえればいいんじゃなくて、人がおかしくなることの解明をしなくちゃならないんだ」
と神妙な顔で言った。そして隊員たちの隊長を呼び、これからもっと大勢の自衛隊員を投入して山狩りをするよう指示を出した。猪が巨大化したことについては特に言及することなく、解明解明、と呟きながら門に向かう。張っていた気が抜け、浦安はノワールから出て車の方へ向かう朝霧を追い、さっきの弾正とのやり取りの中で不審に思った点を聞こうと朝霧に並ぶ。朝霧は手を振ってそれを遮った。
「あっちいからさ、話は車ん中で」
特務調査室専用のバンに乗り込む朝霧に続いて後部のシートに入ろうとすると、
「いやいや、誰が運転すんのさ。まこっちゃんは運転席っしょ」
と前に追いやられる。思えば朝霧はすでにかなりの量の酒を飲んでいる。はなから運転は自分に任せるつもりだったのだ。浦安は仕方なくサイドドアを閉め、運転席に向かった。外はすでに暗く、エンジンをかけて冷房とライトを入れた。自分も何口かウイスキーを飲んでしまったが、まあそこは大目に見てもらおう。だが車を動かせと言われる前に、聞くべきことを聞こうと後ろを向いた。
「さっきの話なんですがね、青井が公安調査庁の人間だったってのは本当なんですか?」
「ああ、本当だよ。草太は僕たち特務調査室のメンバーで、セフィロトの潜入捜査をしてもらってたんだ」
「じゃあ、三国を殺して、四條畷も手にかけたってのも…」
「ああ、それに関してはある意味本当で、ある意味嘘だね。さっきも言ったでしょ?僕らは事態の解明を優先に動いてる。だから殺すよりも確保したいのさ。特に四條畷に関してはね。でも草太が殺したってのは本当だろうね。彼が自主的にやったのか、それともやらされたのかは分からない。だけどさ、さっき弾正がかなり事情を知っていたことから判断すると、草太はすでに弾正に洗脳されてると見て間違いないっしょ。あの四條畷殺害現場では僕の一存で捜査が完全に巡査に向くように拳銃を隠したってのも本当。草太が取り調べられるようなことになったら厄介だからね」
そう言ってペロっと舌を出す朝霧を見て、浦安は七星の家での初動捜査で青井に事情聴取しようと呼び出した時、朝霧に邪魔されたことを思い出した。朝霧にしてみれば、同じ特務調査員である青井が調べられる訳にはいかなかったのだ。朝霧は浦安の目の中に不信を読んだのか、さらに言葉を次いだ。
「昨夜のまこっちゃんの報告ではさあ、六甲道朱美は草太の不注意で死んだんだよねえ?でもそれってさ、本当に不注意だったのかなあ?こう考えられない?三国と四條畷の間に入り、事情をよく知る彼女も口封じに殺したって。そうなるとさ、草太は弾正の手先になってるって見て間違いないよね?ちなみに僕らには朱美に死なれる必要は全く無いからね」
確かに、あの場でコケた草太の動きは怪しいといえば怪しかった。朝霧がさらに続ける。
「ま、これからセフィロトに乗り込んで、草太を捕まえて聞けばいいんじゃない?さ、レッツゴー!」
「え、今からですか?」
「おいおいまこっちゃ~ん、それでも刑事?さっき弾正から草太の犯行を聞いたんだよ?捕まえて調べるのがあんたら警察の仕事でしょうよ、違う?」
「ま、まあ…ですね」
警察の仕事と言うが、この禍津町はすでにロックダウンされ、動き回る権限は自衛隊に移っている。ノワールの封鎖などという警察では出来なかったこともやってのけるのである。
「そういえば、ノワールの大家には許可を取っているんですか?朝霧さんの話を聞いていると、大家は完全に蚊帳の外という感じがしますが」
「ああ、あの漫画家のじいさんね。神坂善晴…昭和にホラー漫画で一世風靡したんだけどさ、今は隠居状態みたいだね。当然、彼のことも調べたけど、まあ弾正に良いように使われてしまったというのがうちの見解。調査員に町の中で弾正と一緒にいる姿が度々目撃されてる。ひょっとしたらすでにセフィロトに取り込まれてるか、処分されてるかもしれないね。ノワールの横の家はずっと留守にしてるんだ。ウェブ検索かけたら顔が出てくるからさ、まこっちゃんもどっかで見かけたらこっちに連絡して」
「分かりました」
浦安は手帳に「かみさかよしはる」とメモる。取り敢えず、これで聞きたかったことは一通り訊けたと、浦安は前を向き、ハンドルを握った。そんな浦安に、朝霧がぬっと上体を寄せる。
「それとね、まこっちゃんには公安調査庁としてやってもらいたいことがあるんだ。いや、この仕事をするためにあんたが今日、室長から呼ばれたって言っても過言じゃない。まこっちゃん、今からセフィロトに潜入して、五月山天冥を暗殺して欲しい」
トーンの低くなった声に背中を撫でられ、背筋が凍る思いがした。バックミラー越しに朝霧を見ると、暗闇に妖しく光る目に捉えられた。
「暗殺…ですか、それはまた穏やかじゃありませんな。さっき殺すより捉えると仰ったのでは?」
「うん、弾正はね。できたら四條畷も捉えたかった。四條畷はセフィロトの科学方面の責任者だったからね、神経作用物質の作り方や対処法を聞きたかった。でも、天冥は別。僕らはね、天冥は洗脳担当だと踏んでるんだ。神経作用物質で理性を破壊するだけじゃ、まともな活動をさせられないからね。まこっちゃんも彼女と話をして分かったでしょ?彼女は口が上手い。きっと思想の布教なんかは彼女が任されてるんだ」
「だからって、殺すことは…」
躊躇する浦安に、朝霧は大きくため息をついた。
「まこっちゃん、思い出しなよ。きのう、何が起こった?室長との報告で教えてくれたよね?仲間が裏切ってたって。まこっちゃんは影武者とか何とかファンタジーなこと言ってたけどさ、それってただの洗脳っしょ。言ってたじゃん、僕らの特務調査室の中にも裏切り者がいたって。そうやってさ、やつらはこっちの内部にも染み込んでくるんだ。その元を絶たないと、これからもそういう悲劇は起こる。まこっちゃんに取っても敵討ちになるんだよ。ちょうど、まこっちゃんは天冥から信頼されてるみたいだからさ、この役はまこっちゃんにしか出来ないんだ。頼むよ。日本の未来は、まこっちゃんに掛かってるって言ってもいい。ここは躊躇するとこじゃないっしょ!」
確かに、敵は討ちたい。だがその相手は本当に天冥でいいのだろうか?きのうの夜、確かにお焚き火に照らされてできるはずの天冥の影は無かった。怪しいといえば、かなり怪しい。そのことの真意を確かめたいとは思っていた。だが殺意までは湧いてこない。天冥の言葉には、それなりの説得力があったのだ。だがそれを朝霧に言っても、それこそが洗脳だと言うだろう。
「分かりました。これからセフィロトに向かいます。ですが、まずは自分一人に行かせてもらえませんか?天冥を見舞い、もし必要とあらば仰る通りにします。自分だって無惨に死んでいった仲間たちの敵を討てるなら本望です。必ずやり遂げてみせます」
生ぬるい、と言われそうだったが、それが自分の譲歩できる精一杯だった。朝霧はそんな浦安の言葉に異論を唱えることなく、ただ肩をポンポンと叩いた。浦安はそれを肯定と判断し、車を降りた。降りる間際、
「草太に会っても尋問とかしないように。それは天冥の方のカタがついてからでいいから、まずは天冥に専念して。それと、僕らはセフィロトの入り口で待機してるから、何かあったらすぐに連絡するように」
と言って送り出した。浦安はそれに頷き、自分の車へと移った。ヒグラシの鳴き声はジーという虫の単調で陰鬱な声に代わっている。浦安は、自分は本当に何も知らなかったというある種の苛立ちを感じながら、禍津町北西部に位置するセフィロトへと車を走らせた。
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