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2話
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「はい。ホットミルク」
あの後泣き出した俺を、咲と言った妹を自称する少女は、俺の背中を撫でながら優しく手を引きリビングまで連れてきた。
「昨日良いハチミツ買ったんだよ~ホットミルクに入れたから飲んでみて!」と差し出してきた。
良い匂いがするそれをゆっくりと口に運ぶと、牛乳とハチミツの強すぎない甘味に少女の優しさを感じた。
「ふふっ、どう?」と微笑みを浮かべる少女に俺は本心から「美味しい……です」と言った。
「私も入れてこよ~」とキッチンに向かった少女を後目に、俺はため息をついた。
情けない……俺24になってあんな泣くなんて……
本当小学生の頃から何も成長してないんだなぁ…… 俺が小学生だった頃の20代なんて、すごい大人で、自分はそうなるのに途方もない時間がかかる気がしていた。
でも振り返ってみれば一瞬でこの歳、タイムスリップでもした気分だ。
成長してないのも当たり前、そんな経験を何もしてないんだからな…… きっかけはあった。
それを無駄にしたのは俺。全部俺のせいだ。
「はーい。お待たせ」暗い思考に沈んでいると少女が戻ってきた。
言った通りハチミツホットミルクを手に持って。
横に座った少女は「どれどれ」と言いホットミルクを口に運ぶ。
「本当だ、美味しい~」彼女は、甘みが強すぎなくて美味しいと微笑んだ。
「えっとね、お兄ちゃん……うーん……」彼女はうんうん唸った後真剣な表情をして俺の目を見つめた。
「あなたは白水真。私、白水咲のお兄ちゃん。なんだけど……さっきの反応からして多分分からないんだよね?」
俺はその質問に自分が問い詰められているように感じ、心臓の鼓動が速くなった。
犯人はあなただ!、と言われた時の犯人もこんな感じなんだろうか。
確かに自分が白水真だとは分からない。ただ自分には24年間生きてきた別の記憶はある、だから質問に対して分からないとそのまま答えていいものか、迷ってしまう。
俺が言い淀んでいると、「何か覚えていることはある?例えば……家の中を見て何か見覚えのあるものとか」
黙っていることが気まずくなった俺は正直に思ってることを話すことにした。
「えっと……間取りは見覚えがある……でも物の配置とかは全然違う……」
「私も病気に詳しいわけじゃないけど、記憶喪失ってやつなのかな。お兄ちゃん昨日頭にボールをぶつけたって言ってたから。」
「家に帰ってきた時は頭をさすってるだけで元気そうだったけど、時間差で記憶喪失になったのかな?」
俺が覚えてないだけなら記憶喪失かもしれない。でも俺には別の人間として生きてきた昨日までの記憶がある。
現実じゃありえないような話だが、ニートの俺の魂がこの学生と思われる子に入ってしまったのだろうか。
それともこういう病気があるんだろうか?ある日突然自分が別人だと思ってしまうような病気が。
「でもとりあえず病院に行ったほうが良いね、記憶喪失ってどこの病院に掛かれば良いんだろう」ちょっと待ってて、と言い彼女はスマホで調べ始めた。
俺はおそらく記憶喪失ではない。白水真という人物で過ごした記憶は全くないが、平本太陽として24年間生きてきた記憶ならちゃんとあるのだ。思い出したくもない記憶ばっかりだけど。
俺は悪霊のような物なんじゃないだろうか?寝ている間に死んだ平本太陽は幽霊になって、知らない高校生に取り憑いたとか。
バカみたいな考えだがこんな状況じゃそんな事しか思い浮かばない。
いや、そもそも夢なんじゃないか?普通に考えたらそうだろう、何で今まで思いつかなかったんだ?
これはいわゆる明晰夢ってやつなんだろう。体が別人になった夢だ
それならばどうやって覚めれば良いんだろう?夢から覚める方法だと頬を抓るのをよく見るが明晰夢でもそれで良いのだろうか。
俺は目を瞑り絶対に目覚めてやると意気込み、頬をつねるのではなく思いっきり叩くことにした。
俺は引きこもりのニートだ。顔もブサイクで身長も低い。そんな人間がフツメンだが愛嬌のある顔、10cm以上は高い身長。さらに金髪美少女の妹までいるとなったら普通は喜ぶのかもしれない。でも俺は嫌だ。
確かに俺の人生は碌な事がなかった。未練なんてない。
でもたとえ夢の中だとしても他人の人生にタダ乗りするような真似は絶対にしたくない。
俺がニートになったのは俺だけのせいじゃない、小学校で俺をいじめてきた奴ら。行きたくないと言ったら俺を殴って無理やり学校に連れて行った両親。俺がニートになったのはそこで人が怖くなったからだ。
でも俺に責任が無いわけじゃない。高校を2年の時に中退してそこから8年間ニートをしていた、その時期に俺は家で何もしていなかった。何もする気が起きなかった、しようとも思わなかった。
そもそも俺の人生なんだ、最終的に責任を取るのは自分だ。他人の体になってそのことに気がつくなんて可笑しな話だ。
目が覚めたら家族の居るうちに部屋の外に出てみよう。そして感謝を伝えよう。
小学生の時の事は今でも恨んでる、でもその事は謝られたし、8年ニートしてる俺を養って毎日食事を作ってくれてるんだ。感謝くらい言わなきゃだめだ。
よし……
俺は深呼吸して、覚めろ!と思いながら勢いよく自分の両手で両頬を叩いた
バチンッ!!
ゆっくりと目を開けると、こちらを心配そうに見ている咲と目が合った。
あれ?
あの後泣き出した俺を、咲と言った妹を自称する少女は、俺の背中を撫でながら優しく手を引きリビングまで連れてきた。
「昨日良いハチミツ買ったんだよ~ホットミルクに入れたから飲んでみて!」と差し出してきた。
良い匂いがするそれをゆっくりと口に運ぶと、牛乳とハチミツの強すぎない甘味に少女の優しさを感じた。
「ふふっ、どう?」と微笑みを浮かべる少女に俺は本心から「美味しい……です」と言った。
「私も入れてこよ~」とキッチンに向かった少女を後目に、俺はため息をついた。
情けない……俺24になってあんな泣くなんて……
本当小学生の頃から何も成長してないんだなぁ…… 俺が小学生だった頃の20代なんて、すごい大人で、自分はそうなるのに途方もない時間がかかる気がしていた。
でも振り返ってみれば一瞬でこの歳、タイムスリップでもした気分だ。
成長してないのも当たり前、そんな経験を何もしてないんだからな…… きっかけはあった。
それを無駄にしたのは俺。全部俺のせいだ。
「はーい。お待たせ」暗い思考に沈んでいると少女が戻ってきた。
言った通りハチミツホットミルクを手に持って。
横に座った少女は「どれどれ」と言いホットミルクを口に運ぶ。
「本当だ、美味しい~」彼女は、甘みが強すぎなくて美味しいと微笑んだ。
「えっとね、お兄ちゃん……うーん……」彼女はうんうん唸った後真剣な表情をして俺の目を見つめた。
「あなたは白水真。私、白水咲のお兄ちゃん。なんだけど……さっきの反応からして多分分からないんだよね?」
俺はその質問に自分が問い詰められているように感じ、心臓の鼓動が速くなった。
犯人はあなただ!、と言われた時の犯人もこんな感じなんだろうか。
確かに自分が白水真だとは分からない。ただ自分には24年間生きてきた別の記憶はある、だから質問に対して分からないとそのまま答えていいものか、迷ってしまう。
俺が言い淀んでいると、「何か覚えていることはある?例えば……家の中を見て何か見覚えのあるものとか」
黙っていることが気まずくなった俺は正直に思ってることを話すことにした。
「えっと……間取りは見覚えがある……でも物の配置とかは全然違う……」
「私も病気に詳しいわけじゃないけど、記憶喪失ってやつなのかな。お兄ちゃん昨日頭にボールをぶつけたって言ってたから。」
「家に帰ってきた時は頭をさすってるだけで元気そうだったけど、時間差で記憶喪失になったのかな?」
俺が覚えてないだけなら記憶喪失かもしれない。でも俺には別の人間として生きてきた昨日までの記憶がある。
現実じゃありえないような話だが、ニートの俺の魂がこの学生と思われる子に入ってしまったのだろうか。
それともこういう病気があるんだろうか?ある日突然自分が別人だと思ってしまうような病気が。
「でもとりあえず病院に行ったほうが良いね、記憶喪失ってどこの病院に掛かれば良いんだろう」ちょっと待ってて、と言い彼女はスマホで調べ始めた。
俺はおそらく記憶喪失ではない。白水真という人物で過ごした記憶は全くないが、平本太陽として24年間生きてきた記憶ならちゃんとあるのだ。思い出したくもない記憶ばっかりだけど。
俺は悪霊のような物なんじゃないだろうか?寝ている間に死んだ平本太陽は幽霊になって、知らない高校生に取り憑いたとか。
バカみたいな考えだがこんな状況じゃそんな事しか思い浮かばない。
いや、そもそも夢なんじゃないか?普通に考えたらそうだろう、何で今まで思いつかなかったんだ?
これはいわゆる明晰夢ってやつなんだろう。体が別人になった夢だ
それならばどうやって覚めれば良いんだろう?夢から覚める方法だと頬を抓るのをよく見るが明晰夢でもそれで良いのだろうか。
俺は目を瞑り絶対に目覚めてやると意気込み、頬をつねるのではなく思いっきり叩くことにした。
俺は引きこもりのニートだ。顔もブサイクで身長も低い。そんな人間がフツメンだが愛嬌のある顔、10cm以上は高い身長。さらに金髪美少女の妹までいるとなったら普通は喜ぶのかもしれない。でも俺は嫌だ。
確かに俺の人生は碌な事がなかった。未練なんてない。
でもたとえ夢の中だとしても他人の人生にタダ乗りするような真似は絶対にしたくない。
俺がニートになったのは俺だけのせいじゃない、小学校で俺をいじめてきた奴ら。行きたくないと言ったら俺を殴って無理やり学校に連れて行った両親。俺がニートになったのはそこで人が怖くなったからだ。
でも俺に責任が無いわけじゃない。高校を2年の時に中退してそこから8年間ニートをしていた、その時期に俺は家で何もしていなかった。何もする気が起きなかった、しようとも思わなかった。
そもそも俺の人生なんだ、最終的に責任を取るのは自分だ。他人の体になってそのことに気がつくなんて可笑しな話だ。
目が覚めたら家族の居るうちに部屋の外に出てみよう。そして感謝を伝えよう。
小学生の時の事は今でも恨んでる、でもその事は謝られたし、8年ニートしてる俺を養って毎日食事を作ってくれてるんだ。感謝くらい言わなきゃだめだ。
よし……
俺は深呼吸して、覚めろ!と思いながら勢いよく自分の両手で両頬を叩いた
バチンッ!!
ゆっくりと目を開けると、こちらを心配そうに見ている咲と目が合った。
あれ?
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