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【第2章】下から大好きって言われたい
1.攻防戦は楽屋で
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side 純
そして例の雑誌が発売され、俺と直人のアイドルユニットは更に売れた。
ライブ、雑誌、ドラマ、バラエティ。
気づけば俺はモデル、直人は俳優の仕事まで入ってきている。
まさに飛ぶ鳥を落とす勢いってやつ。
とにかく忙しい。
ありがたいけど、ちょっと働きすぎじゃないかと思うくらいには。
「純、休憩したら、また次の収録だって」
「……なんか、ずっと働いてるよな」
「まあでも、仕事があるって幸せなことだよ」
楽屋で並んでスマホをいじりながら、そんな他愛ない会話をしていた、その時。
「……は?」
画面を見て、思わず声が漏れる。
「なぁ直人、これ……」
表示されていたのは、SNSのトレンド。
そこに、でかでかと載っていた文字。
#直人攻め×純受け
「……へえ。ついに、そっちが主流になったんだね」
「“そっち”ってなんだよ。俺が攻め側だろ」
きっと睨むと、直人は楽しそうに口角を上げる。
「いや、あの雑誌で流れ変わったでしょ。今やファンの8割は“純受け”推しだよ」
「は? あれはお前が調子に乗って、勝手に上になっただけだろ」
「違う違う。俺が攻めだから。もう受けでいいじゃん、純」
なんで俺が散々いじられた挙げ句、こいつに余裕ぶって言われなきゃならないんだよ。
「俺が受けなわけねぇだろ……」
そう言い返しながら、スマホの画面をもう一度見る。
“純くん受け確定”
“直人くんに攻められてる純くんが見たい”
……違う。ありえねぇし。
俺はずっと、強気キャラでやってきた。
“かっこいいお兄さん”。それが俺の立ち位置だ。
「純」
名前を呼ばれて、現実に引き戻される。
「なんだよ」
「俺ね、純のこと大好き」
「だから、そういうとこだって言ってんだよ。お前、すぐ甘えてきたりするし」
……甘い言葉も平気で言うし。
「それとこれとは話が別」
「は?」
言い返そうとしたのに、言葉が出ない。
そんな俺を見て、直人が少しだけ低い声で続けた。
「そんなに“攻め”がいいならさ」
「……なんだよ」
直人が立ち上がって、鏡の前に座ってる俺の肩に手を置いてくる。
鏡越しに目が合うと、なんだかバツが悪くて目を逸らした。
「純に譲ってあげてもいいけど、無理でしょ」
「譲るってなんだよ。そもそも俺が“攻め”だろ」
「いや、純は事務所が用意した設定ですら、できてないじゃん」
“設定ですら、できてない”
その言葉が、胸に刺さる。
ベッドで直人を押し倒したときのことを思い出す。
何をすればいいのかわからなくて、直人に指示されて。
結局、逆に押し倒されて。
「ね? 純には無理だから」
「……何がだよ」
「こういうの」
直人がぐっと近づいてくる。
人差し指で顎をすくい上げられ、視線ごと逃げ場を塞がれた。
そのまま、親指が下唇をなぞる。
「……っ」
反射的に肩が跳ねる。
まただ。
考えるより先に、身体が反応してしまう。
「そんなびくってする?」
くすっと笑う声が近い。
指は離れたけど、唇のとこにじんわり熱が残る。
なんでだよ。
どうして、こんな――。
頬に熱が集まっていくのがわかって、ぎゅっと唇を噛みしめた。
「純はいちいち反応が可愛い」
「……うるせぇ!」
勢いで立ち上がり、直人の腕を掴んで引き寄せる。
目の前まで距離を詰めた。
「……ぷっ」
「何がおかしいんだよ」
「だってさ。純、この距離で見つめ合うだけ?」
「は?」
「キスくらいできないの?」
できる。
できるに決まってんだろ。
「……できるし」
「へぇ、じゃあ証明して?」
挑発に、悔しさが勝った。
勢いのまま唇を重ねると、直人は抵抗もせず受け止めた。
「……んっ……」
そして、直人の両腕が俺の首に絡まって、ぐっと引き寄せられる。
……え?
頬に首に、キスが落ちてくる。
首筋を舌が這って、背筋が震えた。
「おいっ……やめ……っ」
直人の手がシャツの隙間に滑り込んでくる。
肌に直に触れた瞬間、体が震えて息を呑んだ。
「っ……」
「純……無防備すぎ」
直人は妖しく笑ったかと思えば、今度は胸の先端を弄り始めた。
「あ、やっ……ばかっ、誰か来る……」
「だったら声出さないで」
……まずい。
直人の指の動きは止まらない。
そして、止められない自分。
ズボンのベルトに手がかかった、その瞬間。
「直人さん、純さん、そろそろです!」
ドア越しの声に、二人同時に固まった。
「……っ」
「はーい!」
慌てて距離を取って鏡を見ると、真っ赤な顔の自分が映っていた。
はあ、最悪。
「……全然休憩になってねぇし……」
「純」
扉へ向かおうとした瞬間、背後から抱きしめられる。
そのまま耳元と首のあたりに唇が触れる。
「おい……時間ないって」
「時間あったら、いいの?」
「……そういう意味じゃねぇ!」
耳が熱い。ほんと、こいつは……!
「純ってさ、俺が触ると、ちゃんと反応するでしょ」
「……っ」
「嫌なら、拒めばいいのに。逃げないし、離れない」
その言葉が胸の奥に、波紋みたいに広がった。
「……知らねぇよ」
やっと絞り出した声はひどく小さかった。
直人は何も言わず、手を離す。
けど、さっきの言葉が頭から離れねぇ……。
そして例の雑誌が発売され、俺と直人のアイドルユニットは更に売れた。
ライブ、雑誌、ドラマ、バラエティ。
気づけば俺はモデル、直人は俳優の仕事まで入ってきている。
まさに飛ぶ鳥を落とす勢いってやつ。
とにかく忙しい。
ありがたいけど、ちょっと働きすぎじゃないかと思うくらいには。
「純、休憩したら、また次の収録だって」
「……なんか、ずっと働いてるよな」
「まあでも、仕事があるって幸せなことだよ」
楽屋で並んでスマホをいじりながら、そんな他愛ない会話をしていた、その時。
「……は?」
画面を見て、思わず声が漏れる。
「なぁ直人、これ……」
表示されていたのは、SNSのトレンド。
そこに、でかでかと載っていた文字。
#直人攻め×純受け
「……へえ。ついに、そっちが主流になったんだね」
「“そっち”ってなんだよ。俺が攻め側だろ」
きっと睨むと、直人は楽しそうに口角を上げる。
「いや、あの雑誌で流れ変わったでしょ。今やファンの8割は“純受け”推しだよ」
「は? あれはお前が調子に乗って、勝手に上になっただけだろ」
「違う違う。俺が攻めだから。もう受けでいいじゃん、純」
なんで俺が散々いじられた挙げ句、こいつに余裕ぶって言われなきゃならないんだよ。
「俺が受けなわけねぇだろ……」
そう言い返しながら、スマホの画面をもう一度見る。
“純くん受け確定”
“直人くんに攻められてる純くんが見たい”
……違う。ありえねぇし。
俺はずっと、強気キャラでやってきた。
“かっこいいお兄さん”。それが俺の立ち位置だ。
「純」
名前を呼ばれて、現実に引き戻される。
「なんだよ」
「俺ね、純のこと大好き」
「だから、そういうとこだって言ってんだよ。お前、すぐ甘えてきたりするし」
……甘い言葉も平気で言うし。
「それとこれとは話が別」
「は?」
言い返そうとしたのに、言葉が出ない。
そんな俺を見て、直人が少しだけ低い声で続けた。
「そんなに“攻め”がいいならさ」
「……なんだよ」
直人が立ち上がって、鏡の前に座ってる俺の肩に手を置いてくる。
鏡越しに目が合うと、なんだかバツが悪くて目を逸らした。
「純に譲ってあげてもいいけど、無理でしょ」
「譲るってなんだよ。そもそも俺が“攻め”だろ」
「いや、純は事務所が用意した設定ですら、できてないじゃん」
“設定ですら、できてない”
その言葉が、胸に刺さる。
ベッドで直人を押し倒したときのことを思い出す。
何をすればいいのかわからなくて、直人に指示されて。
結局、逆に押し倒されて。
「ね? 純には無理だから」
「……何がだよ」
「こういうの」
直人がぐっと近づいてくる。
人差し指で顎をすくい上げられ、視線ごと逃げ場を塞がれた。
そのまま、親指が下唇をなぞる。
「……っ」
反射的に肩が跳ねる。
まただ。
考えるより先に、身体が反応してしまう。
「そんなびくってする?」
くすっと笑う声が近い。
指は離れたけど、唇のとこにじんわり熱が残る。
なんでだよ。
どうして、こんな――。
頬に熱が集まっていくのがわかって、ぎゅっと唇を噛みしめた。
「純はいちいち反応が可愛い」
「……うるせぇ!」
勢いで立ち上がり、直人の腕を掴んで引き寄せる。
目の前まで距離を詰めた。
「……ぷっ」
「何がおかしいんだよ」
「だってさ。純、この距離で見つめ合うだけ?」
「は?」
「キスくらいできないの?」
できる。
できるに決まってんだろ。
「……できるし」
「へぇ、じゃあ証明して?」
挑発に、悔しさが勝った。
勢いのまま唇を重ねると、直人は抵抗もせず受け止めた。
「……んっ……」
そして、直人の両腕が俺の首に絡まって、ぐっと引き寄せられる。
……え?
頬に首に、キスが落ちてくる。
首筋を舌が這って、背筋が震えた。
「おいっ……やめ……っ」
直人の手がシャツの隙間に滑り込んでくる。
肌に直に触れた瞬間、体が震えて息を呑んだ。
「っ……」
「純……無防備すぎ」
直人は妖しく笑ったかと思えば、今度は胸の先端を弄り始めた。
「あ、やっ……ばかっ、誰か来る……」
「だったら声出さないで」
……まずい。
直人の指の動きは止まらない。
そして、止められない自分。
ズボンのベルトに手がかかった、その瞬間。
「直人さん、純さん、そろそろです!」
ドア越しの声に、二人同時に固まった。
「……っ」
「はーい!」
慌てて距離を取って鏡を見ると、真っ赤な顔の自分が映っていた。
はあ、最悪。
「……全然休憩になってねぇし……」
「純」
扉へ向かおうとした瞬間、背後から抱きしめられる。
そのまま耳元と首のあたりに唇が触れる。
「おい……時間ないって」
「時間あったら、いいの?」
「……そういう意味じゃねぇ!」
耳が熱い。ほんと、こいつは……!
「純ってさ、俺が触ると、ちゃんと反応するでしょ」
「……っ」
「嫌なら、拒めばいいのに。逃げないし、離れない」
その言葉が胸の奥に、波紋みたいに広がった。
「……知らねぇよ」
やっと絞り出した声はひどく小さかった。
直人は何も言わず、手を離す。
けど、さっきの言葉が頭から離れねぇ……。
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