【完結】こじらせ半猫くんは、好きな人の前だけ可愛い―溺愛ダーリン×半猫化男子―

砂原紗藍

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【第二章】無自覚メンヘラ発動中

2.嫉妬のしっぽ

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ソファに座らされる。カナトさんは僕の正面に座った。

「何があったのか、話してみ」
「別に……何もないって」
「嘘つくな。お前、明らかに機嫌悪いだろ」

カナトさんの声は優しいけど、どこか厳しかった。

あ、これ、本気で心配してくれてる。

「……機嫌悪くない」
「じゃあ、なんでしっぽがそんなに動いてるんだ?」

カナトさんが言うように、僕のしっぽはバタバタと不機嫌そうに揺れていた。

「勝手に動くだけだもん……」
「レン」
「……何」
「俺に、言いたいことがあるんじゃないか?」
「……ない」
「本当に?」

カナトさんの優しい目が僕を見つめる。
……そんな目で見ないでほしい。

「……あの」
「ん?」
「三日前に、カナトさんと一緒にいた女性は……誰?」

カナトさんは少し驚いた顔をした後、くすりと笑った。

「それで機嫌悪かったのか」
「別に……機嫌悪くないし」
「あれは会社の同僚な。たまたま同じ方向だったから、一緒に帰っただけ」
「……本当?」
「ああ、本当」
「恋人とか……じゃないの?」
「違うよ」

カナトさんが僕の顎を持ち上げた。目が合う。

「レン、もしかして嫉妬してたのか?」
「し、してないし!」
「してただろ」

カナトさんが優しく笑う。
からかうような笑顔じゃなく、本当に嬉しそうな笑顔。

「だから、もう機嫌直して」
「……機嫌悪くなかったし」
「そうか。じゃあ、これからも毎日来てくれるか?」
「……考えとく」

僕はそう言いながら、カナトさんの肩に頭を置いた。

「素直じゃないな」
「素直だもん……」

カナトさんの手が僕の耳を優しく撫でた。

「んん……」

喉からゴロゴロという音が漏れる。

「ほら、身体は素直」
「勝手に……出るんだもん」
「分かってる」

カナトさんが僕の頭に顎を乗せた。

「……カナトさん」
「ん?」
「これからも……毎日来る」
「待ってるよ」

カナトさんの優しい声に、僕は目を閉じた。



次の日、僕はまたカナトさんの部屋を訪れた。

「来たか」
「気が向いただけ」
「そうか」

カナトさんが笑う。
もう、僕の嘘を見抜いているんだろう。

「おいで」

カナトさんが僕の手を引いた。

「ちょっと……」

またソファに座らされる。そして、カナトさんが僕の隣に座った。

「レン、もっとこっちに来い」
「……行かない」
「じゃあ、俺が行く」

カナトさんが僕を抱き寄せた。

「んっ……」

カナトさんの手が、僕の髪を優しく撫でる。

……気持ちいい。
猫だから、撫でられるの好きなんだよね。

「可愛いな」
「可愛くないし……」

でも、僕のしっぽは嬉しそうに大きく揺れていた。

「なぁ、レン」
「なに?」
「俺、お前に言いたいことがある」

カナトさんの声が、いつもより真剣だった。

「……何?」
「お前のことが好きだ」

カナトさんの瞳が、僕をまっすぐに見つめている。
逃げられない。この視線から。

「……僕、半猫だよ?」
「知ってる」
「勝手に耳としっぽが出るし、ゴロゴロ言うし、猫みたいなことするよ?」
「それも含めて、お前が好きなんだ」

カナトさんが僕の頬を撫でた。

「レン、俺はお前のすべてが好きだよ。半猫のところも、ツンツンするところも、たまに素直になるところも」
「……カナトさん」
「どうした?」
「……嬉しい」

でも、同時に怖かった。

「本当は、ずっとカナトさんのこと好きだった。でも、半猫の僕なんか…いつか飽きられるって思ってた」

視界が滲む。涙が溢れそうだ。

「だから、期待しちゃダメだって思ってた。でも、カナトさんが優しくしてくれるから、どんどん好きになって」
「レン……」
「怖いんだ。カナトさんに依存して、それで捨てられたら、僕……生きていけない」

心の奥底にあった不安が、全部溢れ出した。ずっと抱えていた恐怖が。

「……カナトさんのことが大好き」

言葉にしたら、涙が止まらなくなった。
嬉しい。
嬉しくて、怖くて、でも幸せで。

「ありがとう、レン」
「こちらこそ……ありがと」
「レン」
「ん?」
「キスしてもいいか?」
「……うん」

僕は目を閉じた。
カナトさんの唇が、優しく僕の唇に触れた。

「んっ……」

柔らかくて、温かいキス。
耳もしっぽも優しくなでられて、敏感に身体は反応する。
どんどんと快楽の渦に飲み込まれて、必死で抑えようとしても抑えられない声。

「カナトさん……っ、それ……きもちい……」

僕はカナトさんの胸に顔を埋めた。

本当に、ずっと一緒にいてくれるのかな。
飽きられないかな。
置いていかれないかな。

「……ねえ、カナトさん」
「ん?」
「置いてかないでね」
「置いていかない。何度でも言う。俺は絶対にお前を置いていかない」
「……約束?」
「約束するよ」

カナトさんが僕を強く抱きしめた。
その温もりに、僕は少しだけ安心した。
でも、心の奥ではまだ不安が渦巻いていた。


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