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【第二章】無自覚メンヘラ発動中
4.猫耳店員、開店します
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そして、カフェ当日。
店内は煌びやかな装飾で彩られ、学生だけでなく一般客も入店できるとあって、開店前から賑わいを見せていた。
鏡の前で何度も襟元を直していた。胸の奥がざわざわと落ち着かない。
スマホを取り出して、カナトさんの名前をタップする。
「レン、どうした?」
「ねえ、カナトさん」
「ん?」
「……緊張する……」
カナトさんは少し困ったような声だった。
「ごめんな、レン。行ってやりたいんだけど、今日は会議が入って。夕方まではちょっと難しいかもしれない」
「……そうなんだ」
思ったより声が低くなる。
あ、やばい。このままじゃ不機嫌なのバレる。
「ま、まあ、別にいいけど。カナトさんも忙しいだろうし。別に全然平気だし」
我ながら、強がりが下手すぎる。
「レン」
カナトさんの声が優しく響く。
「終わったらすぐ向かうから。それと」
「……なに」
「変な奴には気をつけろよ。何かあったら連絡して。すぐ行くからな」
その言葉に、胸がきゅっと温かくなった。
でも、同時にもやもやとした感情も湧き上がる。
「……わかってるって。僕だって子供じゃないし。一人で何でもできるから」
「それでも、な」
カナトさんの声が少し低くなった。
「レンのことになると、俺は心配で仕方ないんだよ」
顔が熱くなる。僕は慌ててスマホを持ち直した。
「わ、わかったから。何かあったら連絡するって」
「うん。いい子だな」
「子供扱いしないでよ」
ぶっきらぼうに答えてから、僕は通話を切った。
スマホを握りしめたまま、僕は深く息を吐いた。
……来てくれないのか。
まあ、仕方ない。カナトさんだって忙しいんだし。
会議があるなら、それは大事な仕事で。
でもさ、ちょっとくらい……僕のこと優先してくれてもいいのに。
僕は頭を振った。
こんなこと考えちゃダメだ。カナトさんが悪いわけじゃないのに。
仕事があるのは当たり前で、僕が我儘言ってるだけ。それに、終わったら来てくれるって言ってくれたし。
でも、でも……。
やっぱり胸の奥がもやもやする。
鏡に映った自分を見つめて、僕は頬を両手で叩いた。
「よし、頑張ろう」
カフェの開店時刻が近づいてきた。
僕は深呼吸をしながら、接客の流れを頭の中で何度も確認する。
周りのメンバーは楽しそうにはしゃいでいて、その明るい空気に少しだけ気持ちが紛れた。
「レンくん、大丈夫? なんか顔色悪いよ」
先輩が心配そうに声をかけてくる。
「あ、平気です。ちょっと緊張してるだけで」
「そっか。でもレンくんエプロン似合ってるね! 可愛い!」
「か、可愛いって……僕、男なんですけど」
「わかってるよー。でも可愛いものは可愛い」
先輩はくすくすと笑いながら、僕の頭をぽんぽんと撫でた。
「頑張ってね」
「……はい」
先輩が離れていった後、僕は胸に手を当てた。
心臓がばくばくと速く打っている。
カナトさんがいないから不安とか、そういうんじゃ……。
いや、それもあるかも。
嫌な予感がする。
この感じ、知ってる。
――やばい。落ち着け、落ち着け……!
僕は必死に意識を集中させようとした。
深呼吸して、カナトさんの顔を思い浮かべて。
でも、緊張とカナトさんへの複雑な感情が入り混じって、どうにもコントロールが効かなくなってきた。
そして、開店のベルが鳴り響いた瞬間。
ぴょこん。
頭の上に、茶色と黒と白の斑模様の猫耳が生えた。
腰の後ろからは、同じく三毛模様のふさふさとした尻尾がするり。
「……嘘でしょ」
僕は思わず頭に手をやった。
確かに、そこには柔らかくて温かい耳の感触がある。
ぴくぴくと動いてしまう。
「うわあ、レンくんすごい! そのコスプレ、どこで手に入れたの?」
「めっちゃリアルじゃん! しかも動いてる!」
「すごーい! 触っていい?」
周りのメンバーが興味津々で集まってくる。
待って待って、来ないで……。
「い、いや、これは……その……」
言い訳を考える前に、次々とお客さんが入ってくる。
……もう、覚悟決めるしかない。
コスプレ。
そう、これはコスプレ。
こうなったら、このままやるしかないんだ。
店内は煌びやかな装飾で彩られ、学生だけでなく一般客も入店できるとあって、開店前から賑わいを見せていた。
鏡の前で何度も襟元を直していた。胸の奥がざわざわと落ち着かない。
スマホを取り出して、カナトさんの名前をタップする。
「レン、どうした?」
「ねえ、カナトさん」
「ん?」
「……緊張する……」
カナトさんは少し困ったような声だった。
「ごめんな、レン。行ってやりたいんだけど、今日は会議が入って。夕方まではちょっと難しいかもしれない」
「……そうなんだ」
思ったより声が低くなる。
あ、やばい。このままじゃ不機嫌なのバレる。
「ま、まあ、別にいいけど。カナトさんも忙しいだろうし。別に全然平気だし」
我ながら、強がりが下手すぎる。
「レン」
カナトさんの声が優しく響く。
「終わったらすぐ向かうから。それと」
「……なに」
「変な奴には気をつけろよ。何かあったら連絡して。すぐ行くからな」
その言葉に、胸がきゅっと温かくなった。
でも、同時にもやもやとした感情も湧き上がる。
「……わかってるって。僕だって子供じゃないし。一人で何でもできるから」
「それでも、な」
カナトさんの声が少し低くなった。
「レンのことになると、俺は心配で仕方ないんだよ」
顔が熱くなる。僕は慌ててスマホを持ち直した。
「わ、わかったから。何かあったら連絡するって」
「うん。いい子だな」
「子供扱いしないでよ」
ぶっきらぼうに答えてから、僕は通話を切った。
スマホを握りしめたまま、僕は深く息を吐いた。
……来てくれないのか。
まあ、仕方ない。カナトさんだって忙しいんだし。
会議があるなら、それは大事な仕事で。
でもさ、ちょっとくらい……僕のこと優先してくれてもいいのに。
僕は頭を振った。
こんなこと考えちゃダメだ。カナトさんが悪いわけじゃないのに。
仕事があるのは当たり前で、僕が我儘言ってるだけ。それに、終わったら来てくれるって言ってくれたし。
でも、でも……。
やっぱり胸の奥がもやもやする。
鏡に映った自分を見つめて、僕は頬を両手で叩いた。
「よし、頑張ろう」
カフェの開店時刻が近づいてきた。
僕は深呼吸をしながら、接客の流れを頭の中で何度も確認する。
周りのメンバーは楽しそうにはしゃいでいて、その明るい空気に少しだけ気持ちが紛れた。
「レンくん、大丈夫? なんか顔色悪いよ」
先輩が心配そうに声をかけてくる。
「あ、平気です。ちょっと緊張してるだけで」
「そっか。でもレンくんエプロン似合ってるね! 可愛い!」
「か、可愛いって……僕、男なんですけど」
「わかってるよー。でも可愛いものは可愛い」
先輩はくすくすと笑いながら、僕の頭をぽんぽんと撫でた。
「頑張ってね」
「……はい」
先輩が離れていった後、僕は胸に手を当てた。
心臓がばくばくと速く打っている。
カナトさんがいないから不安とか、そういうんじゃ……。
いや、それもあるかも。
嫌な予感がする。
この感じ、知ってる。
――やばい。落ち着け、落ち着け……!
僕は必死に意識を集中させようとした。
深呼吸して、カナトさんの顔を思い浮かべて。
でも、緊張とカナトさんへの複雑な感情が入り混じって、どうにもコントロールが効かなくなってきた。
そして、開店のベルが鳴り響いた瞬間。
ぴょこん。
頭の上に、茶色と黒と白の斑模様の猫耳が生えた。
腰の後ろからは、同じく三毛模様のふさふさとした尻尾がするり。
「……嘘でしょ」
僕は思わず頭に手をやった。
確かに、そこには柔らかくて温かい耳の感触がある。
ぴくぴくと動いてしまう。
「うわあ、レンくんすごい! そのコスプレ、どこで手に入れたの?」
「めっちゃリアルじゃん! しかも動いてる!」
「すごーい! 触っていい?」
周りのメンバーが興味津々で集まってくる。
待って待って、来ないで……。
「い、いや、これは……その……」
言い訳を考える前に、次々とお客さんが入ってくる。
……もう、覚悟決めるしかない。
コスプレ。
そう、これはコスプレ。
こうなったら、このままやるしかないんだ。
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