【完結】悪役令息、運命を変えたら政略婚約のイケメン伯爵に溺愛されました

砂原紗藍

文字の大きさ
5 / 18

4.ベンヴォーリオとの駆け引き

しおりを挟む
その夜、屋敷に戻ると、執事が告げた。

「ジュリオ様、お客様がお見えです」
「客? 誰です?」
「モンタギュー家のベンヴォーリオ様とおっしゃる方です」

ベンヴォーリオ……? 
彼はロメオの従兄で、ゲームの攻略対象の一人。
なぜ、彼がここに……。

「……応接室に通してください」
「かしこまりました」

なんだ、この展開は。
僕は急いで応接室へ向かった。

応接室には、穏やかな顔立ちの青年が座っていた。

――ベンヴォーリオ・モンタギュー。

「初めまして、ジュリオ・カペレッティ君」
「……初めまして。ベンヴォーリオ様」

僕は警戒しながら席に着く。

「突然の訪問、失礼をお許しください」
「いえ。それで、ご用件は?」

ベンヴォーリオは少し困ったような顔をした。

「実は……君に頼みがあって来たんだ」
「頼み?」
「ああ。僕は争いが嫌いなんだ。カペレッティ家とモンタギュー家の確執を、どうにか終わらせたいと思っている」

予想外の言葉だった。

……でも、これは本心なのか。

「それで、君の協力が欲しいんだ」
「僕の……協力ですか?」
「うん。君はカペレッティ家の嫡子だ。もし君が和平を望むなら、きっと状況は変わる」

ベンヴォーリオの瞳は、真剣だった。
たしかゲームでも、ベンヴォーリオは平和主義者として描かれている。

……しかし、この人を信用してもいいのか。

「ベンヴォーリオ様。それは、随分と大胆なお願いですね」
「そうだね。でも、誰かが最初の一歩を踏み出さなければ、この確執は永遠に続く」
「なぜ、僕に?」

ベンヴォーリオは少し考えてから答えた。

「今夜の舞踏会で、君を見ていたんだ」
「……見ていた?」

ベンヴォーリオは真っ直ぐに僕を見つめる。

「ティボルトとマキューシオの衝突を止めた時の君は、必死だった」
「それは……」
「君は本当は、争いなんて望んでいない。違うか?」

沈黙が流れる。
この人は、僕の本質を見抜いている。
でも、だからといって簡単に信用するわけにはいかない。

「ベンヴォーリオ様。もし、これが罠だったら?」

僕は冷たく言った。

「罠……?」
「はい。あなたがモンタギュー家のために、僕の弱みを掴もうとしているなら、今すぐお帰りください」

ベンヴォーリオは驚いた顔をしたあと、ふっと笑った。

「君は、賢いね」
「え……?」
「これは僕にとっても危険な賭けだ」

彼は真剣な顔になった。

「もし君が、この話を利用してモンタギュー家を陥れようとするなら、僕も裏切り者として処罰される」
「……」
「でも、僕は君を信じてここに来た。なぜなら――」

ベンヴォーリオは立ち上がり、深々とお辞儀をした。

「僕も争いが嫌いだからだ。本気で、和平を望んでいるからだ」

その姿に、僕は息を呑んだ。
これは……演技じゃない。本気だ。

「ベンヴォーリオ様」
「何だ?」
「僕も同じことを考えていました。でも、表立って和平を唱えることはできません。周囲の反発が大きすぎる」
「それは……そうだね」
「ですから、裏で動きます。表向きは、今まで通り冷たく振る舞いますが……」
「分かった。僕も協力する」

ベンヴォーリオは手を差し出した。僕はその手を握る。

「よろしくお願いします」
「こちらこそ」

こうして僕は、最初の協力者を得た。




――そして、ついに、王立学園の新学期が始まった。

僕はこの学園に通うことになっている。
貴族の子弟が集まる名門校だ。

そして当然、ロメオやマキューシオ、ベンヴォーリオもここに通っている。

「ジュリオ様、お気をつけて」
「ありがとう」

侍従に見送られ、僕は学園の門をくぐった。
石造りの重厚な校舎。広大な敷地。

おお……やっぱりすごいな。
ゲームで見た風景が、目の前に広がっている。

「さて……」

今日から、本格的に「悪役」を演じなければならない。

「やあ、ジュリオ」

教室に向かう途中、廊下で声をかけられた。
振り返ると、ベンヴォーリオが笑顔で立っていた。

「ベンヴォーリオ様」
「堅苦しいから、“様”はいらないよ」

周囲の視線が気になる。

まずいな。
カペレッティ家とモンタギュー家が親しげに話しているのは……さすがに不審に思われる。

「あまり僕と親しくしていると、噂になりますよ」
「構わないよ。僕は君と友達になりたいと思っているから」

その屈託のない笑顔に、僕は少し心が温かくなった。
でも、ここで友好的になりすぎるのは危険だ。

「……僕はそうは思いません。失礼します」

冷たく言って、僕はその場を離れた。

後ろで、ベンヴォーリオが僕を呼ぶ声が聞こえたが、振り返らなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?

水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。 断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。 しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。 これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?

異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした

うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。 獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。 怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。 「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」 戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。 獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。 第一章 完結 第二章 完結

完結·氷の宰相の寝かしつけ係に任命されました

BL
幼い頃から心に穴が空いたような虚無感があった亮。 その穴を埋めた子を探しながら、寂しさから逃げるようにボイス配信をする日々。 そんなある日、亮は突然異世界に召喚された。 その目的は―――――― 異世界召喚された青年が美貌の宰相の寝かしつけをする話 ※小説家になろうにも掲載中

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする

葉空
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。 前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち… でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ… 優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。

処理中です...