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4.ベンヴォーリオとの駆け引き
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その夜、屋敷に戻ると、執事が告げた。
「ジュリオ様、お客様がお見えです」
「客? 誰です?」
「モンタギュー家のベンヴォーリオ様とおっしゃる方です」
ベンヴォーリオ……?
彼はロメオの従兄で、ゲームの攻略対象の一人。
なぜ、彼がここに……。
「……応接室に通してください」
「かしこまりました」
なんだ、この展開は。
僕は急いで応接室へ向かった。
応接室には、穏やかな顔立ちの青年が座っていた。
――ベンヴォーリオ・モンタギュー。
「初めまして、ジュリオ・カペレッティ君」
「……初めまして。ベンヴォーリオ様」
僕は警戒しながら席に着く。
「突然の訪問、失礼をお許しください」
「いえ。それで、ご用件は?」
ベンヴォーリオは少し困ったような顔をした。
「実は……君に頼みがあって来たんだ」
「頼み?」
「ああ。僕は争いが嫌いなんだ。カペレッティ家とモンタギュー家の確執を、どうにか終わらせたいと思っている」
予想外の言葉だった。
……でも、これは本心なのか。
「それで、君の協力が欲しいんだ」
「僕の……協力ですか?」
「うん。君はカペレッティ家の嫡子だ。もし君が和平を望むなら、きっと状況は変わる」
ベンヴォーリオの瞳は、真剣だった。
たしかゲームでも、ベンヴォーリオは平和主義者として描かれている。
……しかし、この人を信用してもいいのか。
「ベンヴォーリオ様。それは、随分と大胆なお願いですね」
「そうだね。でも、誰かが最初の一歩を踏み出さなければ、この確執は永遠に続く」
「なぜ、僕に?」
ベンヴォーリオは少し考えてから答えた。
「今夜の舞踏会で、君を見ていたんだ」
「……見ていた?」
ベンヴォーリオは真っ直ぐに僕を見つめる。
「ティボルトとマキューシオの衝突を止めた時の君は、必死だった」
「それは……」
「君は本当は、争いなんて望んでいない。違うか?」
沈黙が流れる。
この人は、僕の本質を見抜いている。
でも、だからといって簡単に信用するわけにはいかない。
「ベンヴォーリオ様。もし、これが罠だったら?」
僕は冷たく言った。
「罠……?」
「はい。あなたがモンタギュー家のために、僕の弱みを掴もうとしているなら、今すぐお帰りください」
ベンヴォーリオは驚いた顔をしたあと、ふっと笑った。
「君は、賢いね」
「え……?」
「これは僕にとっても危険な賭けだ」
彼は真剣な顔になった。
「もし君が、この話を利用してモンタギュー家を陥れようとするなら、僕も裏切り者として処罰される」
「……」
「でも、僕は君を信じてここに来た。なぜなら――」
ベンヴォーリオは立ち上がり、深々とお辞儀をした。
「僕も争いが嫌いだからだ。本気で、和平を望んでいるからだ」
その姿に、僕は息を呑んだ。
これは……演技じゃない。本気だ。
「ベンヴォーリオ様」
「何だ?」
「僕も同じことを考えていました。でも、表立って和平を唱えることはできません。周囲の反発が大きすぎる」
「それは……そうだね」
「ですから、裏で動きます。表向きは、今まで通り冷たく振る舞いますが……」
「分かった。僕も協力する」
ベンヴォーリオは手を差し出した。僕はその手を握る。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
こうして僕は、最初の協力者を得た。
――そして、ついに、王立学園の新学期が始まった。
僕はこの学園に通うことになっている。
貴族の子弟が集まる名門校だ。
そして当然、ロメオやマキューシオ、ベンヴォーリオもここに通っている。
「ジュリオ様、お気をつけて」
「ありがとう」
侍従に見送られ、僕は学園の門をくぐった。
石造りの重厚な校舎。広大な敷地。
おお……やっぱりすごいな。
ゲームで見た風景が、目の前に広がっている。
「さて……」
今日から、本格的に「悪役」を演じなければならない。
「やあ、ジュリオ」
教室に向かう途中、廊下で声をかけられた。
振り返ると、ベンヴォーリオが笑顔で立っていた。
「ベンヴォーリオ様」
「堅苦しいから、“様”はいらないよ」
周囲の視線が気になる。
まずいな。
カペレッティ家とモンタギュー家が親しげに話しているのは……さすがに不審に思われる。
「あまり僕と親しくしていると、噂になりますよ」
「構わないよ。僕は君と友達になりたいと思っているから」
その屈託のない笑顔に、僕は少し心が温かくなった。
でも、ここで友好的になりすぎるのは危険だ。
「……僕はそうは思いません。失礼します」
冷たく言って、僕はその場を離れた。
後ろで、ベンヴォーリオが僕を呼ぶ声が聞こえたが、振り返らなかった。
「ジュリオ様、お客様がお見えです」
「客? 誰です?」
「モンタギュー家のベンヴォーリオ様とおっしゃる方です」
ベンヴォーリオ……?
彼はロメオの従兄で、ゲームの攻略対象の一人。
なぜ、彼がここに……。
「……応接室に通してください」
「かしこまりました」
なんだ、この展開は。
僕は急いで応接室へ向かった。
応接室には、穏やかな顔立ちの青年が座っていた。
――ベンヴォーリオ・モンタギュー。
「初めまして、ジュリオ・カペレッティ君」
「……初めまして。ベンヴォーリオ様」
僕は警戒しながら席に着く。
「突然の訪問、失礼をお許しください」
「いえ。それで、ご用件は?」
ベンヴォーリオは少し困ったような顔をした。
「実は……君に頼みがあって来たんだ」
「頼み?」
「ああ。僕は争いが嫌いなんだ。カペレッティ家とモンタギュー家の確執を、どうにか終わらせたいと思っている」
予想外の言葉だった。
……でも、これは本心なのか。
「それで、君の協力が欲しいんだ」
「僕の……協力ですか?」
「うん。君はカペレッティ家の嫡子だ。もし君が和平を望むなら、きっと状況は変わる」
ベンヴォーリオの瞳は、真剣だった。
たしかゲームでも、ベンヴォーリオは平和主義者として描かれている。
……しかし、この人を信用してもいいのか。
「ベンヴォーリオ様。それは、随分と大胆なお願いですね」
「そうだね。でも、誰かが最初の一歩を踏み出さなければ、この確執は永遠に続く」
「なぜ、僕に?」
ベンヴォーリオは少し考えてから答えた。
「今夜の舞踏会で、君を見ていたんだ」
「……見ていた?」
ベンヴォーリオは真っ直ぐに僕を見つめる。
「ティボルトとマキューシオの衝突を止めた時の君は、必死だった」
「それは……」
「君は本当は、争いなんて望んでいない。違うか?」
沈黙が流れる。
この人は、僕の本質を見抜いている。
でも、だからといって簡単に信用するわけにはいかない。
「ベンヴォーリオ様。もし、これが罠だったら?」
僕は冷たく言った。
「罠……?」
「はい。あなたがモンタギュー家のために、僕の弱みを掴もうとしているなら、今すぐお帰りください」
ベンヴォーリオは驚いた顔をしたあと、ふっと笑った。
「君は、賢いね」
「え……?」
「これは僕にとっても危険な賭けだ」
彼は真剣な顔になった。
「もし君が、この話を利用してモンタギュー家を陥れようとするなら、僕も裏切り者として処罰される」
「……」
「でも、僕は君を信じてここに来た。なぜなら――」
ベンヴォーリオは立ち上がり、深々とお辞儀をした。
「僕も争いが嫌いだからだ。本気で、和平を望んでいるからだ」
その姿に、僕は息を呑んだ。
これは……演技じゃない。本気だ。
「ベンヴォーリオ様」
「何だ?」
「僕も同じことを考えていました。でも、表立って和平を唱えることはできません。周囲の反発が大きすぎる」
「それは……そうだね」
「ですから、裏で動きます。表向きは、今まで通り冷たく振る舞いますが……」
「分かった。僕も協力する」
ベンヴォーリオは手を差し出した。僕はその手を握る。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
こうして僕は、最初の協力者を得た。
――そして、ついに、王立学園の新学期が始まった。
僕はこの学園に通うことになっている。
貴族の子弟が集まる名門校だ。
そして当然、ロメオやマキューシオ、ベンヴォーリオもここに通っている。
「ジュリオ様、お気をつけて」
「ありがとう」
侍従に見送られ、僕は学園の門をくぐった。
石造りの重厚な校舎。広大な敷地。
おお……やっぱりすごいな。
ゲームで見た風景が、目の前に広がっている。
「さて……」
今日から、本格的に「悪役」を演じなければならない。
「やあ、ジュリオ」
教室に向かう途中、廊下で声をかけられた。
振り返ると、ベンヴォーリオが笑顔で立っていた。
「ベンヴォーリオ様」
「堅苦しいから、“様”はいらないよ」
周囲の視線が気になる。
まずいな。
カペレッティ家とモンタギュー家が親しげに話しているのは……さすがに不審に思われる。
「あまり僕と親しくしていると、噂になりますよ」
「構わないよ。僕は君と友達になりたいと思っているから」
その屈託のない笑顔に、僕は少し心が温かくなった。
でも、ここで友好的になりすぎるのは危険だ。
「……僕はそうは思いません。失礼します」
冷たく言って、僕はその場を離れた。
後ろで、ベンヴォーリオが僕を呼ぶ声が聞こえたが、振り返らなかった。
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