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3.婚約者の瞳に映る僕
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社交界デビューから一週間後。
僕はパリス伯爵邸に招かれていた。
「婚約者同士、もっと親交を深めるべきだ」
父であるカペレッティ公爵の言葉で、断ることはできなかった。
「ジュリオ様、お茶をどうぞ」
パリス邸の執事が、優雅に紅茶を淹れる。
応接室には、僕とパリスの二人だけ。
パリスは微笑みながら紅茶を一口飲むと、突然、軽く眉を上げた。
「ジュリオ君、少し緊張している?」
「えっ……」
「そんなことは……」と言いかけると、彼はくすっと笑った。
「……少し聞いてもいいかな」
「何でしょう?」
「君は本当に、僕との結婚を望んでいるのかい?」
さすがにこれは、ちょっと予想外の質問だった。
「政略結婚ですから。僕個人の望みは関係ありません」
「そうか」
パリスは少し寂しそうな顔をした。
「でも僕は、君の本心が知りたいんだ」
「本心……ですか」
「うん。君は舞踏会でも、今も、どこか演技をしているように見える」
……っ、鋭い。
パーティーの日も思ったが、この人は本当に洞察力がある。
「演技などしておりませんよ」
「嘘だね」
パリスは穏やかに、でもはっきりと言った。
「君の瞳は、言葉と違うことを語っている」
「……」
「ジュリオ君。僕は君を責めているわけじゃないよ。ただ……君が何か抱えているなら、力になりたいと思っているだけだ」
その優しい言葉に、僕は少し心が揺れた。
でも、真実は話せない。
「パリス様の優しさには感謝します。でも、僕には何もありません」
「……そうか」
彼はそれ以上追求しなかった。
ただ、その紫の瞳は、まるで僕の全てを見透かしているようだった。
その後、パリスは屋敷の庭園を案内してくれた。
「この薔薇園は、母が好きで育てていたものなんだ」
赤、白、黄色。
様々な色の薔薇が咲き誇っていて、とても綺麗だ。
「綺麗ですね」
「うん。母はもう亡くなってしまったけど、この庭だけは大切に守っている」
その横顔は、どこか寂しげだった。
「パリス様は……お母様を愛していらしたんですね」
「ああ。母は優しい人だった。いつも、誰かのために生きていた」
彼は一輪の白い薔薇を摘んで、僕に差し出した。
「君に」
「……ありがとうございます」
白い薔薇を受け取る。
花言葉は“純潔”“私はあなたにふさわしい”。
「ジュリオ君」
「はい?」
「僕は君の味方だ。それだけは信じてほしいんだ」
ゲームでパリスが見せる誠実さ、優しさ、溺愛感……現実も同じだった。
「……ありがとうございます、パリス様」
その白い薔薇を受け取ると、パリスはくすりと笑い、僕の手を軽く握った。
「君の手、少し冷たいね」
「え……?」
「うん、でも大丈夫。僕が温めてあげるから」
その距離の近さ、声の柔らかさに、思わず胸が高鳴る。
こんなふうに甘く優しくされるなんて思わず、少し恥ずかしかった。
この人なら話せばわかってくれる……とは思うけど、まだ早い。
信頼は、少しずつ築いていくものだ。
パリス邸からの帰り道。
馬車の中で、僕は白い薔薇を見つめていた。
「パリス様……」
彼は本当に誠実な人だ。
ゲームでは、主人公ロメオに惹かれて婚約破棄されてしまうが、それは彼がロメオを本気で愛してしまうから。
そして悪役の僕――ジュリオは、国外追放を命じられるんだ。
でもこの世界では、パリスを協力者にしなければならない。
そしてロメオには、別の相手と幸せになってもらう。
「そのためには……」
次のイベントが重要だ。
一週間後、王立学園で新学期が始まる。
そこで、従兄ティボルトの敵であるマキューシオとロメオが出会う。
ゲームでは、これが“マキューシオルート”の始まりだ。
マキューシオとロメオをくっつければいい。
そのルートを、確実に進めなければならない。
「頑張ろう……」
白い薔薇を胸に抱きしめて、僕は決意を新たにした。
僕はパリス伯爵邸に招かれていた。
「婚約者同士、もっと親交を深めるべきだ」
父であるカペレッティ公爵の言葉で、断ることはできなかった。
「ジュリオ様、お茶をどうぞ」
パリス邸の執事が、優雅に紅茶を淹れる。
応接室には、僕とパリスの二人だけ。
パリスは微笑みながら紅茶を一口飲むと、突然、軽く眉を上げた。
「ジュリオ君、少し緊張している?」
「えっ……」
「そんなことは……」と言いかけると、彼はくすっと笑った。
「……少し聞いてもいいかな」
「何でしょう?」
「君は本当に、僕との結婚を望んでいるのかい?」
さすがにこれは、ちょっと予想外の質問だった。
「政略結婚ですから。僕個人の望みは関係ありません」
「そうか」
パリスは少し寂しそうな顔をした。
「でも僕は、君の本心が知りたいんだ」
「本心……ですか」
「うん。君は舞踏会でも、今も、どこか演技をしているように見える」
……っ、鋭い。
パーティーの日も思ったが、この人は本当に洞察力がある。
「演技などしておりませんよ」
「嘘だね」
パリスは穏やかに、でもはっきりと言った。
「君の瞳は、言葉と違うことを語っている」
「……」
「ジュリオ君。僕は君を責めているわけじゃないよ。ただ……君が何か抱えているなら、力になりたいと思っているだけだ」
その優しい言葉に、僕は少し心が揺れた。
でも、真実は話せない。
「パリス様の優しさには感謝します。でも、僕には何もありません」
「……そうか」
彼はそれ以上追求しなかった。
ただ、その紫の瞳は、まるで僕の全てを見透かしているようだった。
その後、パリスは屋敷の庭園を案内してくれた。
「この薔薇園は、母が好きで育てていたものなんだ」
赤、白、黄色。
様々な色の薔薇が咲き誇っていて、とても綺麗だ。
「綺麗ですね」
「うん。母はもう亡くなってしまったけど、この庭だけは大切に守っている」
その横顔は、どこか寂しげだった。
「パリス様は……お母様を愛していらしたんですね」
「ああ。母は優しい人だった。いつも、誰かのために生きていた」
彼は一輪の白い薔薇を摘んで、僕に差し出した。
「君に」
「……ありがとうございます」
白い薔薇を受け取る。
花言葉は“純潔”“私はあなたにふさわしい”。
「ジュリオ君」
「はい?」
「僕は君の味方だ。それだけは信じてほしいんだ」
ゲームでパリスが見せる誠実さ、優しさ、溺愛感……現実も同じだった。
「……ありがとうございます、パリス様」
その白い薔薇を受け取ると、パリスはくすりと笑い、僕の手を軽く握った。
「君の手、少し冷たいね」
「え……?」
「うん、でも大丈夫。僕が温めてあげるから」
その距離の近さ、声の柔らかさに、思わず胸が高鳴る。
こんなふうに甘く優しくされるなんて思わず、少し恥ずかしかった。
この人なら話せばわかってくれる……とは思うけど、まだ早い。
信頼は、少しずつ築いていくものだ。
パリス邸からの帰り道。
馬車の中で、僕は白い薔薇を見つめていた。
「パリス様……」
彼は本当に誠実な人だ。
ゲームでは、主人公ロメオに惹かれて婚約破棄されてしまうが、それは彼がロメオを本気で愛してしまうから。
そして悪役の僕――ジュリオは、国外追放を命じられるんだ。
でもこの世界では、パリスを協力者にしなければならない。
そしてロメオには、別の相手と幸せになってもらう。
「そのためには……」
次のイベントが重要だ。
一週間後、王立学園で新学期が始まる。
そこで、従兄ティボルトの敵であるマキューシオとロメオが出会う。
ゲームでは、これが“マキューシオルート”の始まりだ。
マキューシオとロメオをくっつければいい。
そのルートを、確実に進めなければならない。
「頑張ろう……」
白い薔薇を胸に抱きしめて、僕は決意を新たにした。
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