【完結】ノンケだった俺が、敵対企業の年下イケメンCEOに堕とされました

砂原紗藍

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【最終章】選ばれる未来、選ぶ覚悟

【最終話】恋人として、パートナーとして

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そして、ステラの月次報告が届いた。

売上、前月比8%増。
新規契約、前月比12%増。

……悪くない。
いや、正直に言えばかなり、いい。

数字を眺めながら、胸の奥に溜まっていたものが少しずつほどけていく。

そのタイミングで、父から電話が入った。

「京介。数字は確認した」
「……はい」

一瞬、間が空く。

「お前の私生活が業績に悪影響を与えているとは、少なくとも、現時点では言えないな」

淡々とした口調だけど、認められた気がした。

「引き続き、結果を出せ」
「……はい。必ず」

通話が切れたあと、俺はゆっくりと息を吐いた。

まだ、すべてが解決したわけじゃない。
批判も、壁も、これからいくらでも出てくるだろう。

それでも――。

隣に慧がいる。それだけで、俺は前を向ける。
俺はひとりじゃない。



――その後、ステラの四半期決算が発表された。

会議室には役員たちが揃い、張りつめた空気が漂っている。
資料が配られ、CFOが淡々と数字を読み上げた。

「売上、前年比15%増。営業利益、20%増」

一瞬の沈黙のあと、ざわめきが広がる。

「株価も、過去最高値を更新しました」

父が資料を見ながら、ゆっくりと口を開いた。

「この成長の一因は、ECHOとの共同事業だ」

慧の名前が、会議の場で出た。

音楽業界の各所へ根回しに行く時、慧はあらゆる力を使ってサポートしてくれた。

「名波CEOの手腕と瀬戸専務の連携が、今期の成長を支えた」
「……はい。これが、答えです」

父は小さく息を吐き、頷いた。

「数字が……全てを物語っていますね。瀬戸専務」

川村常務が立ち上がり、深く頭を下げる。

「私の考えが間違っていました」
「川村常務……」
「公私混同ではなく……公私両立、でしたね」

この人に言われると一段と説得力がある。
俺だけじゃない、父も頷いてた。

「ECHOの名波くんは――」
「え?」
「潜在力の高い人材だ」
「……どういうことですか」
「人を惹きつける力を、生まれつき持っている。ああいう資質は、後から身につけられるものじゃない」

そう言われて、初めて腑に落ちた気がした。

もしかしたら、俺があいつに惹かれたのも……その抗いようのない魅力のせいなのかもしれないな。

会議が終わり廊下を歩いていると、次々に社員が声をかけてきた。

「専務、おめでとうございます」
「素晴らしい結果でしたね」

業界の空気は完全に変わっていた。

結果を出せば、評価はついてくる。
それが、ビジネスの世界だ。

「瀬戸専務と名波さんのタッグ、最強だよな」
「ステラの安定感とECHOの技術力、完璧な組み合わせだ」
「二人が付き合ってるって聞いて、納得した。だから、あんなに息が合うんだな」

そんな声が、もう噂話ではなく、称賛として聞こえていた。



俺と慧は一緒に暮らし始めていた。

毎朝、同じベッドで目を覚ます。
隣には慧がいる。
寝顔を見るのが、日課になった。

「……何見てんの」

慧が目を開けた。寝ぼけた顔。

「いや、別に」
「嘘。絶対見てた」

慧が俺を抱き寄せた。
キスをして、二人でベッドから出る。

「シャワー浴びてくる」

頭が動き出した途端、急に身体まで通常運転に戻った気がする。

急いで風呂を済ませ、そのままリビングに足を踏み入れた。

下着だけの身体に、肩から引っかけたバスタオル。
濡れた髪先からは雫が落ち、火照った肌からはまだ湯気が立っている。

「……お前、なんて格好してるの」

思いがけない声に、反射的に振り向く。
慧がキッチンからじっとこちらを見ていた。

「……っ、い、いるなら言えよ」

慌ててバスタオルを引き寄せると、動いた拍子に、髪からぽた、と雫が床に落ちる。

慧は小さく息を吐いて、視線を逸らす。

「風邪ひくよ。早く乾かさないと」
「言われなくても……」

そう返しながらも、その場を動けない。

視線を外したはずの慧が笑いながら、もう一度、ちらりとこちらを見る。

「……ほんと、無防備だね」

慌てて服を着て、並んでキッチンに立った。
朝食を一緒に作るのは、いつの間にか当たり前になっていた。

……慧は料理が上手いんだよな。

「何作る?」
「オムレツだよ」

殻を割った卵をボウルに落とし、フライパンへ流し込む。
じゅっと音がして、バターの匂いがふわりと広がった。

慧は手慣れた様子で火加減を調整しながら、コーヒーを一口飲む。

「なぁ、京介」
「ん?」
「今日、大事な会議があるんだ」
「どんな?」
「新しいプロジェクト。ステラとの共同事業」 「なるほどね」
「京介とプレゼンしたい。両方の代表として、一緒に」

……ステラとECHO。
恋人同士で、ビジネスパートナー。

「……いいな」
「本当?」
「ああ。一緒にやろう」

そう言うと、慧は嬉しそうに笑った。


――会議は成功。
新しいプロジェクトは、全員から支持された。

音楽配信の新しい形を提案し、業界から高い評価を得た。

「お疲れ様」
「……お疲れ」
「今日、うまくいったね」
「ああ」
「京介と一緒だと、何でもできる気がする」
「……俺もだよ」

そう言ったら、慧は俺のことをじっと見つめてくる。
真剣な瞳に射抜かれて、また胸が高鳴った。

なんとなく距離を取ろうとしたら、慧に引き寄せられた。
一気に距離が縮まる。

唇がやけに近くて、出会った頃のドキドキ感を思い出した。

「今夜は、朝まで離さないからね」

この声はズルいよな。
他の男なんて絶対願い下げだけど、慧だけは特別だ。

磁石みたいに吸い寄せられるように、どちらからともなく抱き合った。

慧と出会って、俺は変わった。
音楽への情熱を取り戻した。本当の自分を見つけた。
そして、愛することの意味を知った。

元から同性愛者だったわけじゃない。
それが……慧に堕とされて、気づけば恋人になった。

人生、何が起こるかわからない。

これから俺と慧は、ビジネスでもプライベートでも、ずっと一緒。

それが、俺たちの選んだ未来。




End.



***


【あとがき】

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
応援してくださった皆様に、心から感謝いたします。
またお会いできる日を楽しみにしています。​​​​​​​​​​​​​​​​


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