6 / 31
【第一章】スパダリαのスパルタ授業
4.残るΩの温もりと、揺れる理性
しおりを挟む
side 桐生冬馬
律が部屋を出て行ったあと、静まり返った空間にひとり取り残された。
ソファに腰を下ろし、深く息を吐く。
「……参ったな」
思わず口に出た。
律が、想像以上に可愛い。
昔から可愛い子だとは思っていたけど、今は――もっとだ。
クールに装って、素っ気ない態度を取る。
でも、時々見せる照れた顔。
顔を背ける仕草。
全部が、俺の理性を揺らしてくる。
それに――律のΩとしての香り。
甘くて、柔らかくて、無防備すぎる。
一度吸い込むだけで、αの本能がざわつく。
まるで“お前のものだ”と囁かれているみたいで、危険だ。
「……っ、駄目だろ」
額を押さえて首を振る。
俺は、あいつの教育係だ。
親父さんから直接託された、大事な役目。
律を導く立場で、手を出すなんて――絶対に許されない。
それでも、さっき抱きしめた瞬間の感触が離れない。
細い体の温かさ。背中越しに感じた呼吸。
そして、律の唇に触れた時の、柔らかさ。
「やめろ」って言いながら、でも離れようとしなかった。
俺を見上げた時のあの目が、まるで俺を求めてるみたいで、心臓が跳ねた。
「……律」
小さく呟く。
この先、毎日顔を合わせる。距離は近くなる一方だ。
もし――ヒートが来たら。
あのフェロモンが本格的に溢れたら、俺は耐えられるのか。
「……落ち着け」
深く息を吸い、拳を握る。
俺は律を守るためにここにいる。
教育係として、律を一人前に育てるために。
その気持ちだけは、絶対に曲げちゃいけない。
そんな時、コンコン、と控えめなノック。
「冬馬、入るぞ」
誠の声だ。
「ああ」
扉が開いて、誠が顔を出す。
「律、どうだった?」
「……順調だよ」
誤魔化すように答える。
「冬馬、お前、顔赤いぞ」
「赤くねえよ」
「嘘つけ。律に何した?」
図星を突かれ、思わず視線を逸らす。
誠は俺の反応を見て、ますます面白そうに笑った。
「律のこと、好きなんだろ?」
「……教育係として、だ」
「本当にそうか?」
誠が真顔になる。
「冬馬、お前の目、律を見る時だけ違うぞ」
「……そんなことねぇって」
「ま、無理して隠そうとすんな」
「何をだよ」
「自分の気持ち、だよ」
軽く肩を叩いて、誠は部屋を出て行った。
残された部屋に静寂が戻る。
窓の外には白く霞む冬空。
庭の一角に、バラが咲いている。
律が「可哀想だから」って言って、切らずに残した花だ。
「……律らしいな」
思わず、笑みが漏れた。
クールに装ってるけど、本当は優しい。
素直じゃないけど、可愛い。
「……自分の気持ち、か」
誠の言葉が頭に残る。
守りたい――
その想いは、ただの教育係の義務なんかじゃない。
もっと深いところから湧き上がってくる。
「よし……頑張るか」
小さく呟いて立ち上がる。
胸の奥で、まだ律の温度が消えないまま。
律が部屋を出て行ったあと、静まり返った空間にひとり取り残された。
ソファに腰を下ろし、深く息を吐く。
「……参ったな」
思わず口に出た。
律が、想像以上に可愛い。
昔から可愛い子だとは思っていたけど、今は――もっとだ。
クールに装って、素っ気ない態度を取る。
でも、時々見せる照れた顔。
顔を背ける仕草。
全部が、俺の理性を揺らしてくる。
それに――律のΩとしての香り。
甘くて、柔らかくて、無防備すぎる。
一度吸い込むだけで、αの本能がざわつく。
まるで“お前のものだ”と囁かれているみたいで、危険だ。
「……っ、駄目だろ」
額を押さえて首を振る。
俺は、あいつの教育係だ。
親父さんから直接託された、大事な役目。
律を導く立場で、手を出すなんて――絶対に許されない。
それでも、さっき抱きしめた瞬間の感触が離れない。
細い体の温かさ。背中越しに感じた呼吸。
そして、律の唇に触れた時の、柔らかさ。
「やめろ」って言いながら、でも離れようとしなかった。
俺を見上げた時のあの目が、まるで俺を求めてるみたいで、心臓が跳ねた。
「……律」
小さく呟く。
この先、毎日顔を合わせる。距離は近くなる一方だ。
もし――ヒートが来たら。
あのフェロモンが本格的に溢れたら、俺は耐えられるのか。
「……落ち着け」
深く息を吸い、拳を握る。
俺は律を守るためにここにいる。
教育係として、律を一人前に育てるために。
その気持ちだけは、絶対に曲げちゃいけない。
そんな時、コンコン、と控えめなノック。
「冬馬、入るぞ」
誠の声だ。
「ああ」
扉が開いて、誠が顔を出す。
「律、どうだった?」
「……順調だよ」
誤魔化すように答える。
「冬馬、お前、顔赤いぞ」
「赤くねえよ」
「嘘つけ。律に何した?」
図星を突かれ、思わず視線を逸らす。
誠は俺の反応を見て、ますます面白そうに笑った。
「律のこと、好きなんだろ?」
「……教育係として、だ」
「本当にそうか?」
誠が真顔になる。
「冬馬、お前の目、律を見る時だけ違うぞ」
「……そんなことねぇって」
「ま、無理して隠そうとすんな」
「何をだよ」
「自分の気持ち、だよ」
軽く肩を叩いて、誠は部屋を出て行った。
残された部屋に静寂が戻る。
窓の外には白く霞む冬空。
庭の一角に、バラが咲いている。
律が「可哀想だから」って言って、切らずに残した花だ。
「……律らしいな」
思わず、笑みが漏れた。
クールに装ってるけど、本当は優しい。
素直じゃないけど、可愛い。
「……自分の気持ち、か」
誠の言葉が頭に残る。
守りたい――
その想いは、ただの教育係の義務なんかじゃない。
もっと深いところから湧き上がってくる。
「よし……頑張るか」
小さく呟いて立ち上がる。
胸の奥で、まだ律の温度が消えないまま。
45
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
大嫌いなアルファと結婚しまして
リミル
BL
面倒見のいい隠れSなα×アルファから転化したΩ
久世優生と神崎基城はアルファの幼馴染みで、互いのスペックを競い合うライバル同士でもあった。
パーティーの最中、基城は原因不明の体調不良に襲われ、第二性がアルファからオメガに転化したと告げられる。
オメガになったことで、優生に馬鹿にされるかと思えば、何故かプロポーズを申し込まれてしまい──!?
被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
巣作りΩと優しいα
伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。
そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……
久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ
いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。
いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。
※pixivにも同様の作品を掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる