【完結】俺の教育係は、甘くて意地悪なエリート【α】――未熟御曹司【Ω】の恋レッスン

砂原紗藍

文字の大きさ
7 / 31
【第一章】スパダリαのスパルタ授業

5.残るαの感触と、止まらない鼓動

しおりを挟む
side 律

自分の部屋に戻って、ベッドに倒れ込んだ。

「……はぁ」

大きく息を吐く。心臓が、うるさい。
冬馬に、キスされた。
抱きしめられた。

「……っ」

枕に顔を押し付ける。

別に何とも思ってない。
ただの、起こすための手段だ。
意味なんてない。

――嘘だ。

“Ωには効くと思ったけど”

なんて言いながら笑う冬馬の顔と、あの、唇の感触。

「……くそ」

小さく呟く。

冬馬のαの香りが、まだ身体に残ってる気がする。
甘くて、強くて、安心する香り。

“俺が律をしっかり教育してやるから”

そう言って、俺を見つめる冬馬。
真剣で、優しくて、でもちょっと意地悪で。

「……ダメだ」

頭を振る。
考えれば考えるほど、冬馬のことばかり浮かんでくる。
これから、どうなるんだろう。

冬馬と、毎日過ごす。
毎日、顔を合わせる。

「律、夕飯できたぞー」

誠さんの声が聞こえた。

「……はい」

ベッドから起き上がって、鏡を見る。
顔、少し赤い。

「……大丈夫」

髪を整えて、服を直して、深呼吸する。

「よし……」

そう呟いて、部屋を出た。
リビングに向かう廊下で、冬馬とばったり会った。

「あ……」
「おう、律。飯だぞ」
「……ああ」

目が合う。
さっきのことを思い出して――視線を逸らす。

「どうした?」

冬馬が、不思議そうに首を傾げる。

「……別に」
「ふふっ、何その態度」
「……何がおかしいんだよ」
「いや、お前、わかりやすいなって」
「わかりやすくない」

先にリビングに向かう。
後ろから、冬馬の笑い声が聞こえた。

「律、顔真っ赤だぞ」
「……赤くない」

むかつく。
でも――嫌じゃない。
そんな自分が、よくわからない。

リビングに着くと、テーブルに料理が並んでいた。

「おお、豪華だな」

後ろから来た冬馬が感心する。

「……すごいね」
「ああ、冬馬の歓迎も兼ねてな」

誠さんが笑う。

「いただきます」

三人で手を合わせる。
料理を食べながら、誠さんが話しかけてくる。

「律、冬馬の指導はどうだった?」
「……まあまあ」
「そうか。冬馬、厳しくしすぎるなよ」
「わかってるって」

そう言って、冬馬が俺の頭を撫でた。

「……っ」

ドキッとする。

「……何してんの」
「よく頑張ったなって」

優しく言われたから、そっぽを向いて答える。

「……別に、普通」
「素直じゃないな」

冬馬が笑う。

「律、明日から本格的に始めるからな」
「……わかった」
「朝は七時起きだ」
「……七時?」
「当たり前だろ。朝比奈家の跡取りは、規則正しい生活が基本だ」

冬馬が当然のように言う。

「……無理」
「無理じゃない。俺が毎朝起こしに行ってやるから」

ニヤリと笑う冬馬。

「……部屋に入ってくるのかよ」
「当然。律、朝弱そうだしな」
「弱くないし」
「じゃあ、一人で起きられるんだな?」

意地悪そうに聞かれる。

「……起きられる」
「本当か?」
「……たぶん」

小さく呟くと、冬馬が楽しそうに笑った。

「律が可愛く『おはよう』って言ってくれたら優しく起こしてやるよ」

またからかうように言われる。

「……別に、優しくなくていい」
「そうか?」

むすっとすると、冬馬がますます楽しそうに笑った。

「怒るなよ。律の反応が可愛いから、ついいじめたくなんだよ」
「……可愛くない」
「可愛い」
「可愛くない」
「可愛い」
「……もう知らない」

そっぽを向く。
冬馬と誠さんが笑った。

「冬馬、律をからかいすぎるなよ」
「大丈夫、すぐ慣れる」

誠さんが笑う。

「頑張ってな、律」
「……うん」

そう答えると、冬馬が満足そうに笑った。

冬馬も、誠さんも、俺のことを気にかけてくれてる。
家族みたいで温かい。
そんなことを思いながら、夕食を食べ続けた。

食事が終わって、部屋に戻る。
ベッドに座って窓の外を見ると、庭のバラが月明かりに照らされている。

「……綺麗」

明日から、本格的に始まる。
冬馬との生活。

「……まあ、悪くないか」

そう呟いて、ベッドに横になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

大嫌いなアルファと結婚しまして

リミル
BL
面倒見のいい隠れSなα×アルファから転化したΩ 久世優生と神崎基城はアルファの幼馴染みで、互いのスペックを競い合うライバル同士でもあった。 パーティーの最中、基城は原因不明の体調不良に襲われ、第二性がアルファからオメガに転化したと告げられる。 オメガになったことで、優生に馬鹿にされるかと思えば、何故かプロポーズを申し込まれてしまい──!?

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

巣作りΩと優しいα

伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。 そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……

久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ

いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。 いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。 ※pixivにも同様の作品を掲載しています

処理中です...