【完結】俺の教育係は、甘くて意地悪なエリート【α】――未熟御曹司【Ω】の恋レッスン

砂原紗藍

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【第二章】距離が縮まる日々

1.可愛いΩは、朝に弱い

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side 朝比奈 律

――朝、二日目。

コンコン、とドアを軽く叩く音が聞こえた。

「律、起きろ」

低い声が聞こえて、頭の奥がじんと響く。

「……ん」

布団の中から小さく返すと、ドアが開く。

冷たい朝の空気とともに、冬馬の香りがふわりと流れ込んでくる。

「律、七時だぞ。約束しただろ」

――最悪だ。冬馬が入ってきた。

思わず布団を頭までかぶる。

「おい、律」

足音が近づき、布団を引っ張られる。

「……眠い」
「ダメだ。ほら、起きろ」

容赦なく布団を剥がされ、腕を掴まれる。

「……っ、寒い」

身体を丸めると、冬馬の腕が腰に回された。密着する距離に、呼吸が浅くなるのを感じる。

「寒いなら、起きて服着ろ」
「……もう少し」
「ダメだ」

腕を掴まれて、半ば強引に引き起こされる。

「……冬馬、うるさい」
「うるさくない。これが教育だ」

本当にムカつく。
でも――冬馬の匂いが、近い。

αのフェロモン。
清潔な石鹸の匂いの奥に、熱っぽい甘さが混ざってる。

「……冬馬の匂い」

ぼんやりした頭で、つい口からこぼれる。

「ん?」
「……別に」

慌てて否定する。

「今、何て言った?」
「何も言ってない」
「嘘つけ。『冬馬の匂い』って言ったろ」

顔が一気に熱くなる。

「……言ってない」
「言った」
「言ってない!」
「律、お前、俺の匂い好きなのか?」

にやりと笑う冬馬。

「……っ、好きじゃない」
「そうか? でも、さっき落ち着く顔してたぞ」
「してない!」
「してた」

ほんと、むかつく。

「……もういい。起きる」

ベッドから立ち上がろうとした瞬間――

「おっと」

冬馬の腕が腰にまわって、ぐっと支えられる。

「……っ」
「律、ふらついてるぞ。ほら、ちゃんと立て」

冬馬の腕が、しっかりと俺を支えている。

「……離せ」
「離したら倒れるだろ」
「倒れない」
「本当か?」

試すように腕を離されて、案の定よろめいた。
すぐに冬馬が支えながら笑う。

「素直じゃないな」
「……もういい。着替えるから出て」
「わかった。朝食は三十分後だ」

ドアが閉まる音。

「……はぁ」

大きく息を吐いた。胸がまだ落ち着かない。
朝から、心臓がうるさい。

……やっぱり冬馬のせいだ。

身支度を整えてリビングへ向かうと、テーブルには誠さんが用意した朝食が並んでいた。

「おはよう、律」
「……おはよう」

誠さんに挨拶して席に着く。
冬馬の姿はない。

さっきのことが頭から離れない。
思い出すたびに、顔が熱くなる。

「……いただきます」

焼きたてのパン、ふわふわのオムレツ、香ばしいベーコン。
誠さんの作る朝食は、まるでホテルみたいだ。

「律」
「なに?」
「冬馬、厳しいか?」
「……厳しいけど、まあ、普通」

正直に答えると、誠さんが穏やかに笑った。

「そうか。良かった」
「心配してたの?」
「まあな。律が嫌がってないか、気になってた」
「……ちゃんと教えてくれるから」
「律も素直になったな」
「……別に」

でも、本当は――
冬馬の言葉一つで、心が少しだけ軽くなるのを知っている。

「じゃあ、勉強頑張ってな」
「……はい」

パンをちぎりながら、ついさっきまで感じていた冬馬の匂いを思い出していた。

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