【完結】俺の教育係は、甘くて意地悪なエリート【α】――未熟御曹司【Ω】の恋レッスン

砂原紗藍

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【第五章】つがいの名を呼ばれて

4.君に守られ、君に愛される

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その夜。
父さんがいきなり「重大な報告がある」なんて言うから、嫌な予感しかしなかった。

「城崎の会社が、不正会計で摘発された」
「……は?」
「私が調査を依頼していたんだ」

頭が追いつかないまま固まる俺に、父さんは淡々と続ける。

「あの男、事業でも不正をしていた。今頃、警察に事情聴取されているだろう」
「……そうなんだ」
「翔太も、今日の襲撃未遂で警察に通報した。もう、お前に近づけない」

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥にずっと張りついてた重さが、すっと消えた。

「よかったな、律」

冬馬が俺の顔を覗き込むみたいにして笑う。

「……うん」

頷くと、父さんが今度は急に真面目な顔をして俺を見る。

「律。お前と冬馬くんの関係、改めて祝福する。幸せになれ」
「……ありがとう」

真正面から言われると、なんか泣きそうになる。
泣かないけど。



それからの日々は、嘘みたいに穏やかだった。

「律、起きろ」

毎朝、冬馬が当たり前みたいに部屋に入ってくる。

「……やだ」

とりあえず布団に潜り込むのが俺の朝のルーティン。

「また逃げてる……今日は大学の資料が届く日だろ」
「めんどくさい」
「めんどくさくない」

ばさっと布団が剥がされる。

「さむ……っ!」
「ほら。寒いなら起きろ」

理不尽すぎる。でも毎朝これだ。

「……もう……」

渋々起き上がったら、冬馬の手が俺の頭をぽんぽん撫でる。

「よし、いい子」
「……子供扱いすんな」
「可愛いから」

……もう勝てる気がしない。

そのあと朝食を一緒に食べて、勉強して、気づけば夜で。
冬馬と過ごす時間が、いつのまにか“日常”になっていた。

「律」

布団に入ると、冬馬が背中から抱き寄せてきて、低く耳元で囁く。

「……何」
「愛してる」

ほんと、この人はずるい。

「……俺も」

顔が熱くなると、冬馬は必ず気づく。
そして嬉しそうに、もっと抱き寄せてくれる。

――俺はこの人と生きていくんだ。

初めて、その未来が当たり前に思えた。



春。
俺は大学に入学した。
経営学部。将来、父さんの会社を継ぐかもしれないから。

桜の舞う門の前で立ちすくむ俺の横に、冬馬が立つ。

「律、緊張してるだろ」

冬馬の声が横から落ちてくる。

「……してない」
「嘘。手が冷たいな」

冬馬は俺の指を絡めてきた。
触れた瞬間、胸まで熱がのぼった。

「大丈夫。お前はちゃんと前に進める」

冬馬の声は、いつだって俺の背中を押してくれる。

「……うん」

小さく答えて門をくぐると、少しだけ世界が変わった気がした。

「大学は広いし、色んなαがいる。お前を狙うやつも絶対いるから」
「……わかってる」
「できる限り送り迎えする。無理でも、すぐ連絡しろ」
「……ありがと」

振り返った俺に向けて、冬馬が柔らかく笑う。
その笑顔が胸の奥に落ちて、緊張がすっと溶けていく。

「行ってこい、律」

まるで軽く背中を押されたみたいだった。

――ここから、また、新しい日々が始まる。




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