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【第五章】つがいの名を呼ばれて
4.君に守られ、君に愛される
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その夜。
父さんがいきなり「重大な報告がある」なんて言うから、嫌な予感しかしなかった。
「城崎の会社が、不正会計で摘発された」
「……は?」
「私が調査を依頼していたんだ」
頭が追いつかないまま固まる俺に、父さんは淡々と続ける。
「あの男、事業でも不正をしていた。今頃、警察に事情聴取されているだろう」
「……そうなんだ」
「翔太も、今日の襲撃未遂で警察に通報した。もう、お前に近づけない」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥にずっと張りついてた重さが、すっと消えた。
「よかったな、律」
冬馬が俺の顔を覗き込むみたいにして笑う。
「……うん」
頷くと、父さんが今度は急に真面目な顔をして俺を見る。
「律。お前と冬馬くんの関係、改めて祝福する。幸せになれ」
「……ありがとう」
真正面から言われると、なんか泣きそうになる。
泣かないけど。
*
それからの日々は、嘘みたいに穏やかだった。
「律、起きろ」
毎朝、冬馬が当たり前みたいに部屋に入ってくる。
「……やだ」
とりあえず布団に潜り込むのが俺の朝のルーティン。
「また逃げてる……今日は大学の資料が届く日だろ」
「めんどくさい」
「めんどくさくない」
ばさっと布団が剥がされる。
「さむ……っ!」
「ほら。寒いなら起きろ」
理不尽すぎる。でも毎朝これだ。
「……もう……」
渋々起き上がったら、冬馬の手が俺の頭をぽんぽん撫でる。
「よし、いい子」
「……子供扱いすんな」
「可愛いから」
……もう勝てる気がしない。
そのあと朝食を一緒に食べて、勉強して、気づけば夜で。
冬馬と過ごす時間が、いつのまにか“日常”になっていた。
「律」
布団に入ると、冬馬が背中から抱き寄せてきて、低く耳元で囁く。
「……何」
「愛してる」
ほんと、この人はずるい。
「……俺も」
顔が熱くなると、冬馬は必ず気づく。
そして嬉しそうに、もっと抱き寄せてくれる。
――俺はこの人と生きていくんだ。
初めて、その未来が当たり前に思えた。
*
春。
俺は大学に入学した。
経営学部。将来、父さんの会社を継ぐかもしれないから。
桜の舞う門の前で立ちすくむ俺の横に、冬馬が立つ。
「律、緊張してるだろ」
冬馬の声が横から落ちてくる。
「……してない」
「嘘。手が冷たいな」
冬馬は俺の指を絡めてきた。
触れた瞬間、胸まで熱がのぼった。
「大丈夫。お前はちゃんと前に進める」
冬馬の声は、いつだって俺の背中を押してくれる。
「……うん」
小さく答えて門をくぐると、少しだけ世界が変わった気がした。
「大学は広いし、色んなαがいる。お前を狙うやつも絶対いるから」
「……わかってる」
「できる限り送り迎えする。無理でも、すぐ連絡しろ」
「……ありがと」
振り返った俺に向けて、冬馬が柔らかく笑う。
その笑顔が胸の奥に落ちて、緊張がすっと溶けていく。
「行ってこい、律」
まるで軽く背中を押されたみたいだった。
――ここから、また、新しい日々が始まる。
父さんがいきなり「重大な報告がある」なんて言うから、嫌な予感しかしなかった。
「城崎の会社が、不正会計で摘発された」
「……は?」
「私が調査を依頼していたんだ」
頭が追いつかないまま固まる俺に、父さんは淡々と続ける。
「あの男、事業でも不正をしていた。今頃、警察に事情聴取されているだろう」
「……そうなんだ」
「翔太も、今日の襲撃未遂で警察に通報した。もう、お前に近づけない」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥にずっと張りついてた重さが、すっと消えた。
「よかったな、律」
冬馬が俺の顔を覗き込むみたいにして笑う。
「……うん」
頷くと、父さんが今度は急に真面目な顔をして俺を見る。
「律。お前と冬馬くんの関係、改めて祝福する。幸せになれ」
「……ありがとう」
真正面から言われると、なんか泣きそうになる。
泣かないけど。
*
それからの日々は、嘘みたいに穏やかだった。
「律、起きろ」
毎朝、冬馬が当たり前みたいに部屋に入ってくる。
「……やだ」
とりあえず布団に潜り込むのが俺の朝のルーティン。
「また逃げてる……今日は大学の資料が届く日だろ」
「めんどくさい」
「めんどくさくない」
ばさっと布団が剥がされる。
「さむ……っ!」
「ほら。寒いなら起きろ」
理不尽すぎる。でも毎朝これだ。
「……もう……」
渋々起き上がったら、冬馬の手が俺の頭をぽんぽん撫でる。
「よし、いい子」
「……子供扱いすんな」
「可愛いから」
……もう勝てる気がしない。
そのあと朝食を一緒に食べて、勉強して、気づけば夜で。
冬馬と過ごす時間が、いつのまにか“日常”になっていた。
「律」
布団に入ると、冬馬が背中から抱き寄せてきて、低く耳元で囁く。
「……何」
「愛してる」
ほんと、この人はずるい。
「……俺も」
顔が熱くなると、冬馬は必ず気づく。
そして嬉しそうに、もっと抱き寄せてくれる。
――俺はこの人と生きていくんだ。
初めて、その未来が当たり前に思えた。
*
春。
俺は大学に入学した。
経営学部。将来、父さんの会社を継ぐかもしれないから。
桜の舞う門の前で立ちすくむ俺の横に、冬馬が立つ。
「律、緊張してるだろ」
冬馬の声が横から落ちてくる。
「……してない」
「嘘。手が冷たいな」
冬馬は俺の指を絡めてきた。
触れた瞬間、胸まで熱がのぼった。
「大丈夫。お前はちゃんと前に進める」
冬馬の声は、いつだって俺の背中を押してくれる。
「……うん」
小さく答えて門をくぐると、少しだけ世界が変わった気がした。
「大学は広いし、色んなαがいる。お前を狙うやつも絶対いるから」
「……わかってる」
「できる限り送り迎えする。無理でも、すぐ連絡しろ」
「……ありがと」
振り返った俺に向けて、冬馬が柔らかく笑う。
その笑顔が胸の奥に落ちて、緊張がすっと溶けていく。
「行ってこい、律」
まるで軽く背中を押されたみたいだった。
――ここから、また、新しい日々が始まる。
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