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煌めくシュガーグラス―光と影のコントラスト―
2.誰かを想う味と、小さな祈り
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マンションに戻ると、暖かな灯りが迎えてくれた。
天井まで続く窓の外には、雨に濡れた都会の街の光。
リビングに入ると、ソファに座る拓実が顔を上げた。
「おかえり、遥」
「ただいま。少し遅くなった」
「今日は取材だったんだろ?」
「うん。環くんに会って、久しぶりに話した。……それで、これ」
紙袋から、小さな箱を取り出す。
落ち着いた色のリボンで包まれたその箱には、環の手書きで《merci》とだけ書かれていた。
リボンをほどくと、中には可愛らしい焼き菓子の詰め合わせが入っている。
ラズベリーのタルト、シトロンのフィナンシェ、そして小さなサブレ。
包みからふわりと、バターと果実の香りが広がった。
「すごい……美味しそう」
隣で拓実が目を細める。
その表情だけで、少し疲れが溶けていく気がした。
「実は、クリスマス特集のスイーツ企画、環くんにお願いしてみたくて」
「いいね。それは正解だと思う」
「それで……聞いたんだけど、環くん、神崎さんと一緒に暮らしてるって」
拓実は少しだけ眉を上げたが、すぐに穏やかに頷いた。
「知ってるよ。神崎さんから連絡があった。これから、西条に対して二人で動くらしい」
「やっぱり……そうなんだ」
「神崎さんなら大丈夫だよ。あの人は、どんな手を使ってでも“正義の形”を通す。環くんも、それをわかってついていってるんだろう」
「……うん。環くん、もう前を向いてた。ちゃんと闘う人の目だったよ」
拓実が静かに微笑む。
テーブルの上、並んだ二つのカップから、湯気が静かに揺れている。
「俺たちも祈ろうか。彼らの“決着”が、無事に終わるように」
「……ああ」
俺はフィナンシェをひと口かじる。
ほろりと崩れて、レモンの香りが広がった。
優しくて、どこか切ない味――まるで、環そのものだ。
「ねぇ、拓実。クリスマス特集、絶対いい号にしたいんだ。“誰かを想って作るスイーツ”ってテーマ、環くんにぴったりだと思う」
「きっとそうなるよ。だって、君が“想い”を信じて選んだ人だから」
その言葉に、胸の奥がじんと温かくなった。
カップを置く音が静かに響いたあと、拓実がこちらに手を伸ばしてきた。
指先が、俺の髪の端をそっとすくう。
「少し濡れてる。外、まだ降ってたんだな」
「ああ、取材の帰りにちょっとだけ」
「ちゃんと乾かさないと、風邪ひく」
言いながら、拓実は立ち上がり、タオルを持ってきてくれた。
柔らかい布が髪に触れるたび、彼の指先がすぐ近くを通り抜けていく。
「……自分でできるって」
「いいんだ。俺がしたいから」
低い声。思わず目を逸らすと、拓実が小さく笑った。
「照れてる?」
「別に……」
「そう?」
わざとらしく肩をすくめる仕草。
でも、笑ってる顔が優しくて、怒る気なんてすぐに消える。
「なぁ、遥」
「ん?」
「お前が環くんの話をしてるとき、すごく楽しそうだった」
「えっ、そうかな」
「うん。人の努力とか、優しさをまっすぐ見てる目をしてた。……そういうところ、俺は好きだよ」
ふいに、言葉が止まった。一瞬、心臓が跳ねる。
それを悟られたくなくて、カップを手に取って誤魔化す。
「そんな急に言わないでよ」
「急じゃない。いつも思ってることだから」
拓実の声は穏やかで、まるで冬の夜のランプみたいにあたたかい。
その灯りに包まれると、寒さも疲れも、全部どこかに溶けていく。
「……そろそろ、休もうか」
「うん」
リビングから寝室へ向かう廊下で、拓実が自然に俺の手を取った。
寝室のドアを閉めると、窓の外の雨音がわずかに聞こえた。
「今日もよく頑張ったね、遥」
「……そんな、大したことしてないよ」
「いや。遥が頑張ってるのは、見てればわかる」
ゆっくりと肩を抱かれ、背中に手が回る。
そのまま胸に顔を埋めると、柔らかく髪を撫でられた。
「ほら、もう寝よう。今夜はゆっくり休んで」
「……うん。でも、少しだけ」
そう言って、俺は自分から拓実の首に腕を回した。
軽く触れるだけのキス――
それでも、熱が胸の奥まで広がっていく。
拓実は驚いて目を瞬かせたあと、少し照れたように笑った。
天井まで続く窓の外には、雨に濡れた都会の街の光。
リビングに入ると、ソファに座る拓実が顔を上げた。
「おかえり、遥」
「ただいま。少し遅くなった」
「今日は取材だったんだろ?」
「うん。環くんに会って、久しぶりに話した。……それで、これ」
紙袋から、小さな箱を取り出す。
落ち着いた色のリボンで包まれたその箱には、環の手書きで《merci》とだけ書かれていた。
リボンをほどくと、中には可愛らしい焼き菓子の詰め合わせが入っている。
ラズベリーのタルト、シトロンのフィナンシェ、そして小さなサブレ。
包みからふわりと、バターと果実の香りが広がった。
「すごい……美味しそう」
隣で拓実が目を細める。
その表情だけで、少し疲れが溶けていく気がした。
「実は、クリスマス特集のスイーツ企画、環くんにお願いしてみたくて」
「いいね。それは正解だと思う」
「それで……聞いたんだけど、環くん、神崎さんと一緒に暮らしてるって」
拓実は少しだけ眉を上げたが、すぐに穏やかに頷いた。
「知ってるよ。神崎さんから連絡があった。これから、西条に対して二人で動くらしい」
「やっぱり……そうなんだ」
「神崎さんなら大丈夫だよ。あの人は、どんな手を使ってでも“正義の形”を通す。環くんも、それをわかってついていってるんだろう」
「……うん。環くん、もう前を向いてた。ちゃんと闘う人の目だったよ」
拓実が静かに微笑む。
テーブルの上、並んだ二つのカップから、湯気が静かに揺れている。
「俺たちも祈ろうか。彼らの“決着”が、無事に終わるように」
「……ああ」
俺はフィナンシェをひと口かじる。
ほろりと崩れて、レモンの香りが広がった。
優しくて、どこか切ない味――まるで、環そのものだ。
「ねぇ、拓実。クリスマス特集、絶対いい号にしたいんだ。“誰かを想って作るスイーツ”ってテーマ、環くんにぴったりだと思う」
「きっとそうなるよ。だって、君が“想い”を信じて選んだ人だから」
その言葉に、胸の奥がじんと温かくなった。
カップを置く音が静かに響いたあと、拓実がこちらに手を伸ばしてきた。
指先が、俺の髪の端をそっとすくう。
「少し濡れてる。外、まだ降ってたんだな」
「ああ、取材の帰りにちょっとだけ」
「ちゃんと乾かさないと、風邪ひく」
言いながら、拓実は立ち上がり、タオルを持ってきてくれた。
柔らかい布が髪に触れるたび、彼の指先がすぐ近くを通り抜けていく。
「……自分でできるって」
「いいんだ。俺がしたいから」
低い声。思わず目を逸らすと、拓実が小さく笑った。
「照れてる?」
「別に……」
「そう?」
わざとらしく肩をすくめる仕草。
でも、笑ってる顔が優しくて、怒る気なんてすぐに消える。
「なぁ、遥」
「ん?」
「お前が環くんの話をしてるとき、すごく楽しそうだった」
「えっ、そうかな」
「うん。人の努力とか、優しさをまっすぐ見てる目をしてた。……そういうところ、俺は好きだよ」
ふいに、言葉が止まった。一瞬、心臓が跳ねる。
それを悟られたくなくて、カップを手に取って誤魔化す。
「そんな急に言わないでよ」
「急じゃない。いつも思ってることだから」
拓実の声は穏やかで、まるで冬の夜のランプみたいにあたたかい。
その灯りに包まれると、寒さも疲れも、全部どこかに溶けていく。
「……そろそろ、休もうか」
「うん」
リビングから寝室へ向かう廊下で、拓実が自然に俺の手を取った。
寝室のドアを閉めると、窓の外の雨音がわずかに聞こえた。
「今日もよく頑張ったね、遥」
「……そんな、大したことしてないよ」
「いや。遥が頑張ってるのは、見てればわかる」
ゆっくりと肩を抱かれ、背中に手が回る。
そのまま胸に顔を埋めると、柔らかく髪を撫でられた。
「ほら、もう寝よう。今夜はゆっくり休んで」
「……うん。でも、少しだけ」
そう言って、俺は自分から拓実の首に腕を回した。
軽く触れるだけのキス――
それでも、熱が胸の奥まで広がっていく。
拓実は驚いて目を瞬かせたあと、少し照れたように笑った。
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