46 / 46
リスタート・ショコラ―甘く溶かして、もう一度―
3.酔って、甘えて、年の瀬
しおりを挟む
side 神谷 拓実
数日前のこと。
アメリカでは、年に一度のクリスマスがいちばん大きなイベントだ。
俺はアメリカ国籍だから、その時期になると毎年ニューヨークに戻る。
今年は、遥も一緒だった。
街はどこもかしこも浮かれていて、歩いているだけで楽しかった。
イルミネーションは派手だし、音楽もうるさいくらい流れているのに、不思議と嫌じゃない。
久しぶりの家族や親戚とのクリスマスパーティーは、正直ちょっと照れくさかったけど、遥が隣にいるだけで気が楽だった。
最初は少し緊張していた遥も、すぐに打ち解けて笑っていて。
色んな人に話しかけられて、少し困ったように、それでもちゃんと答えている姿を見て、胸の奥がくすぐったくなる。
……ああ、連れてきてよかったな。
何度もそう思った。
日本に戻って、少し落ち着いた昨夜。
俺と遥、神崎さんと環の四人で忘年会をした。
海外の話をしたり、仕事の愚痴をこぼしたり、くだらないことで笑ったり。
気づけば全員、いい感じに酔っていた。
中でも遥は完全に出来上がっていた。
やたら距離が近いし、気づくと俺の腕を掴んでいる。
「たくみー……」
名前を呼ぶ声も、いつもより甘ったるい。
酔った遥はニコニコしていて、よく喋って、素直で……可愛い。
このままにしておいたら、誰にでも絡みそうで。
……それは正直、嫌だった。
「ほら、遥。帰るよ」
「えー? まだ……」
「ダメ」
半ば強引に連れ出した。
家に着いてからは……まあ、そのままいちゃいちゃして。
思い返すとちょっとやばいから、詳しくは考えないことにする。
――朝。時計を見ると、8時少し前。
喉が渇いて目を覚ました俺は、隣で眠る遥を見て、思わず口元が緩んだ。
めちゃくちゃ無防備すぎる。
そっと布団をかけ直す。
キッチンで冷蔵庫を開けると、中身はほぼ空。
……あとで買い出しだな。
どうせ起きたら、遥は「お腹すいた」って言う。
窓の外は雨。
正直、今日は外に出たくないんだけど。
……でも、遥に言われたら断れないんだろうな。
洗濯物を置いて、もう一度寝室へ戻る。
「おはよう、遥」
「……ん。おはよ……」
「起きてるなら、こっち向けよ」
「今から二度寝するところ……」
「またそれ?」
苦笑すると、遥は不満そうに眉を寄せた。
「だって、今俺がバテてるの、拓実のせいじゃん……」
「よく言うよ。『拓実だいすきー』っつって抱きついてきたの誰だよ」
「……え。俺?」
「酔っ払って抱きついて、自分からキスして誘ったくせに?」
「……嘘、記憶にないよそんなの」
「自覚なしか。とにかく起きろよ」
「いや、めちゃくちゃ眠気に負けそうなんだけど」
「じゃあ起こしてやるよ」
布団をめくると、遥が小さく声を上げる。
「ん、ちょ、なに……」
「起こしてやるって言ったよ」
遥が被っていた掛け布団を勢いよく剥がし、両手首を押さえつけて強引にキスをした。
遥の口の中は、やけに熱い。
「んんッ?! ……ぷはっ、ちょっと待って! 何して……あっ……」
「パンツ履いてないのが悪い。このまま入れるよ」
「だめだめ、退いて! 俺、まだ寝るの!」
「遥、うるさい……」
「んっ……ん……」
遥の反応も構わず、キスを続ける。
「こんな顔してるの、他の誰かに見せたことある?」
「……っ、ばか、あるわけないだろ!」
「へぇ……俺だけってこと? 最高だな」
「……むっ……」
「はは。分かった、悪かった。ほら、起きろ」
しばらく睨み合って、先に笑ったのは遥だった。
「……もう起きる」
「最初からそうしろよ」
手を差し出すと、遥は素直に掴んできて、「許す」なんて言う。
ほんと、可愛い。
「遥、大好き」
「……俺も。拓実が大好き」
不意打ちすぎて、一瞬言葉が出ない。
「……そういうの、反則」
「今さら?」
結局、二人で笑った。
洗面所で顔を洗っていると、遥が俺の首元をじっと見る。
「……拓実の首筋、赤い」
「あぁ、キスマだろ」
「え、まさか俺がつけた?」
「他に誰がいるんだよ」
少し考えてから、遥が顔を覆った。
「……思い出した……」
「だろ」
「ごめん……」
「別にいいよ。環には絶対いじられるけどな」
「それが一番きつい……」
遥が自己嫌悪になりかけたので、それは違うと抱き寄せる。
「いいじゃん。俺たち結婚してるんだし。何言われても気にならない」
「はぁ……拓実、かっこいいよ……」
「……惚れ直した?」
「うん、した」
腕の中で笑う遥が近くて、甘い匂いがして、頭がぼんやりする。
「いい匂い。洗剤かシャンプー……」
「拓実と同じだよ」
「そっか」
「うん。お揃いだろ?」
笑う顔が愛おしい。
「拓実、お腹すいた」
「俺も」
「近くに美味しいカフェあるんだ。一緒に行こ」
「ええ……雨の中出かけるの?」
「雨でもいいじゃん、行こうよ」
結局、絆されて着替える俺。
なんだかんだ言って、遥には甘い。
傘の下、肩が触れる距離。
雨音が静かで、悪くない。
店に入ると、遥は楽しそうにメニューを見る。
サンドイッチもコーヒーも、確かに美味かった。
「拓実、付き合ってくれてありがとう」
「俺のほうこそ」
朝食を終えて店の外に出ると、雨はだいぶ弱まっていた。
「帰ったら大掃除だな」
「はーい……」
「頑張ったら、たっぷり可愛がってやるから」
「……ふふ、なにそれ……」
騒いだあとにふと訪れる沈黙。
平和な時間。
「……あ、雨やんだっぽいな」
「あ、待って。虹だ! 拓実、ほら見て綺麗だよ」
「ほんとだ」
虹もきれいだけど、俺は隣のキラキラした表情を眺めて笑った。
「なに?」
「……可愛いなって思って」
「ばか」
照れた顔でそう言う遥が、やっぱり一番だった。
数日前のこと。
アメリカでは、年に一度のクリスマスがいちばん大きなイベントだ。
俺はアメリカ国籍だから、その時期になると毎年ニューヨークに戻る。
今年は、遥も一緒だった。
街はどこもかしこも浮かれていて、歩いているだけで楽しかった。
イルミネーションは派手だし、音楽もうるさいくらい流れているのに、不思議と嫌じゃない。
久しぶりの家族や親戚とのクリスマスパーティーは、正直ちょっと照れくさかったけど、遥が隣にいるだけで気が楽だった。
最初は少し緊張していた遥も、すぐに打ち解けて笑っていて。
色んな人に話しかけられて、少し困ったように、それでもちゃんと答えている姿を見て、胸の奥がくすぐったくなる。
……ああ、連れてきてよかったな。
何度もそう思った。
日本に戻って、少し落ち着いた昨夜。
俺と遥、神崎さんと環の四人で忘年会をした。
海外の話をしたり、仕事の愚痴をこぼしたり、くだらないことで笑ったり。
気づけば全員、いい感じに酔っていた。
中でも遥は完全に出来上がっていた。
やたら距離が近いし、気づくと俺の腕を掴んでいる。
「たくみー……」
名前を呼ぶ声も、いつもより甘ったるい。
酔った遥はニコニコしていて、よく喋って、素直で……可愛い。
このままにしておいたら、誰にでも絡みそうで。
……それは正直、嫌だった。
「ほら、遥。帰るよ」
「えー? まだ……」
「ダメ」
半ば強引に連れ出した。
家に着いてからは……まあ、そのままいちゃいちゃして。
思い返すとちょっとやばいから、詳しくは考えないことにする。
――朝。時計を見ると、8時少し前。
喉が渇いて目を覚ました俺は、隣で眠る遥を見て、思わず口元が緩んだ。
めちゃくちゃ無防備すぎる。
そっと布団をかけ直す。
キッチンで冷蔵庫を開けると、中身はほぼ空。
……あとで買い出しだな。
どうせ起きたら、遥は「お腹すいた」って言う。
窓の外は雨。
正直、今日は外に出たくないんだけど。
……でも、遥に言われたら断れないんだろうな。
洗濯物を置いて、もう一度寝室へ戻る。
「おはよう、遥」
「……ん。おはよ……」
「起きてるなら、こっち向けよ」
「今から二度寝するところ……」
「またそれ?」
苦笑すると、遥は不満そうに眉を寄せた。
「だって、今俺がバテてるの、拓実のせいじゃん……」
「よく言うよ。『拓実だいすきー』っつって抱きついてきたの誰だよ」
「……え。俺?」
「酔っ払って抱きついて、自分からキスして誘ったくせに?」
「……嘘、記憶にないよそんなの」
「自覚なしか。とにかく起きろよ」
「いや、めちゃくちゃ眠気に負けそうなんだけど」
「じゃあ起こしてやるよ」
布団をめくると、遥が小さく声を上げる。
「ん、ちょ、なに……」
「起こしてやるって言ったよ」
遥が被っていた掛け布団を勢いよく剥がし、両手首を押さえつけて強引にキスをした。
遥の口の中は、やけに熱い。
「んんッ?! ……ぷはっ、ちょっと待って! 何して……あっ……」
「パンツ履いてないのが悪い。このまま入れるよ」
「だめだめ、退いて! 俺、まだ寝るの!」
「遥、うるさい……」
「んっ……ん……」
遥の反応も構わず、キスを続ける。
「こんな顔してるの、他の誰かに見せたことある?」
「……っ、ばか、あるわけないだろ!」
「へぇ……俺だけってこと? 最高だな」
「……むっ……」
「はは。分かった、悪かった。ほら、起きろ」
しばらく睨み合って、先に笑ったのは遥だった。
「……もう起きる」
「最初からそうしろよ」
手を差し出すと、遥は素直に掴んできて、「許す」なんて言う。
ほんと、可愛い。
「遥、大好き」
「……俺も。拓実が大好き」
不意打ちすぎて、一瞬言葉が出ない。
「……そういうの、反則」
「今さら?」
結局、二人で笑った。
洗面所で顔を洗っていると、遥が俺の首元をじっと見る。
「……拓実の首筋、赤い」
「あぁ、キスマだろ」
「え、まさか俺がつけた?」
「他に誰がいるんだよ」
少し考えてから、遥が顔を覆った。
「……思い出した……」
「だろ」
「ごめん……」
「別にいいよ。環には絶対いじられるけどな」
「それが一番きつい……」
遥が自己嫌悪になりかけたので、それは違うと抱き寄せる。
「いいじゃん。俺たち結婚してるんだし。何言われても気にならない」
「はぁ……拓実、かっこいいよ……」
「……惚れ直した?」
「うん、した」
腕の中で笑う遥が近くて、甘い匂いがして、頭がぼんやりする。
「いい匂い。洗剤かシャンプー……」
「拓実と同じだよ」
「そっか」
「うん。お揃いだろ?」
笑う顔が愛おしい。
「拓実、お腹すいた」
「俺も」
「近くに美味しいカフェあるんだ。一緒に行こ」
「ええ……雨の中出かけるの?」
「雨でもいいじゃん、行こうよ」
結局、絆されて着替える俺。
なんだかんだ言って、遥には甘い。
傘の下、肩が触れる距離。
雨音が静かで、悪くない。
店に入ると、遥は楽しそうにメニューを見る。
サンドイッチもコーヒーも、確かに美味かった。
「拓実、付き合ってくれてありがとう」
「俺のほうこそ」
朝食を終えて店の外に出ると、雨はだいぶ弱まっていた。
「帰ったら大掃除だな」
「はーい……」
「頑張ったら、たっぷり可愛がってやるから」
「……ふふ、なにそれ……」
騒いだあとにふと訪れる沈黙。
平和な時間。
「……あ、雨やんだっぽいな」
「あ、待って。虹だ! 拓実、ほら見て綺麗だよ」
「ほんとだ」
虹もきれいだけど、俺は隣のキラキラした表情を眺めて笑った。
「なに?」
「……可愛いなって思って」
「ばか」
照れた顔でそう言う遥が、やっぱり一番だった。
39
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや
静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。
朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。
「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。
この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか?
甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる