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1話〜10話

じゃんけん

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エル「アルス君!じゃんけんしよ!」

休み時間、図書室から借りてきた本を読むアルスの元に、エルがやってきた。

アルス「またいきなりだな。」

しおりを挟み、本を閉じる。

アルス「ん?なんかやけに嬉しそうだな。」
エル「えぇ~?そお~?」

と、ニヤついた表情を浮かべているエル。

アルス「まあいいか。んじゃ、やるか?」

と、前の席に座ったエルに拳を差し出すアルス。

エル「うん!じゃあ私はグーを出すからね!」

ああ、そういうことか。
エルはひっかけをしようとしているらしい。
おそらくこの表情から読み取るに、他の人に仕掛けたところ、全員引っかかってしまったのだろう。

アルス「おう、分かった。」

表では特に触れずに流す。

エル「じゃ、いくよ!最初はグー、じゃんけんぽん!」

エルが出したのは、グーではなくパーだった。
勝ちを確信していたエルだったが、あの自信に満ちていた表情がわずかに歪む。

エル「...え?嘘?」

アルスはチョキを出していた。

アルス「残念だったな、エル。」

アルスはエルの肩に手を添えた。

エル「なんで私がパーを出すって分かったの!?」

と、尋ねるエル。それにアルスは、次のように答えた。

アルス「お前は最初"グー"を出すと言った。普通ならその相手は勝つために"パー"を出すだろう。だが、果たしてお前は正直にグーを出すか?いや、それで相手を釣っておいて"チョキ"を出すだろう。しかし相手はその裏をかいで"グー"を繰り出すだろう。それを予測してお前は最終的に"パー"を出すに至ったんだろうな。」

そこまで話すと、座っていたアルスが席を立ち、

アルス「だが、俺はその更に裏に回り、チョキを出したってわけだ。」

と、結論を出した。

エル「言葉にするとややこしいね...」
アルス「まあ要するに裏の裏の裏の裏を突いたってわけだ。」
エル「う~ん、わからん!」
アルス「なんでだよ!」
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