4 / 31
4 続かない会話
しおりを挟む
遅い夕食を摂ろうとした頃になってようやくローゼリアが食堂に顔を出した。昼間お茶の断りを入れた時の忙しいという理由はどうやら本当だったようだった。
「失礼します」
ローゼリアはそれだけ言うとローゼリアを待っていたヘンリックを見ずに、黙々と食事を始める。
かつて婚約者時代でのお茶会の時は彼女の方から色々な話題を振ってきたのだったが、今朝はそれがなかった。夕食でも彼女から何か話しかけてくれるような様子は見られない。
外見もそうだが、結婚して彼女の態度もこれまでとは違うものになっていた事にヘンリックは気付いてしまった。
「き、今日は執務初日で疲れただろう」
「ええ、お陰さまで今日もぐっすり眠れそうですわ」
「そ、そうか」
「……」
「……」
国王が五十を過ぎた頃に生まれた、たった一人の王子であるヘンリックは常に周りが先を見越して行動をしてきたので、自分から何かをするという事が少なかったせいで、自分から行動を起こそうと言う発想をする機会に恵まれずに生きてきた。
咽がかわいたと思ったら何も言っていないのに飲み物が出てきたし、寒いと思ったら震えるより先にコートを着せてもらえた。
その代わり周りからの指示には素直に従ってきた。侍従から早く寝るように言われたら全く眠気がなくても寝台の中に入ったし、侍女からこちらの色が似合うと言われたら何も考えずに出されたものを着てきたのだった。
夜会で自分の周りに侍ろうとする令嬢や親たちも、あちらから話しかけてくれるのでヘンリックは笑顔を浮かべて頷くだけで良かった。
皆が皆ヘンリックに優しかったから、ヘンリックは好意を素直に受け取っていただけだった。
見方を変えると、ヘンリックはこれまで自分で考えて行動をするという事を周りから阻害されてきており、本人も周囲もその弊害に全く気付いていなかったのだった。
そのヘンリックが初めて自ら欲したのが伯爵令嬢のマリーナだった。彼女は最初、ヘンリックに視線しか送ってこなかった。それが気になって自分から話しかけて少しずつ彼女が自分にとって特別な存在だと思えてきたのだった。しかしその彼女との関係はぎくしゃくしていた。
特に前のシーズンでの夜会でマリーナは貴族たちの前でヘンリックに恥をかかせた。貴族同士であったなら痴話喧嘩として笑い話になったのだろうが、ヘンリックは将来の国王で国の顔となっていくべき存在なのだ。たとえヘンリックが間違っていたとしても、大勢の前でそれも大きな声でヘンリックを罵るような事はあってはならない。
だからなのか、これまで王太子の最愛だからとマナーのなっていないマリーナの態度に甘かった城の者たちの態度が少しずつ変わっていった。
今までは顔パスでマリーナを通していた門番は、許可証が無いと入城は出来ないと言い、こっそりヘンリックの予定を教えていた一部の侍女は離宮へと異動させられていたので、マリーナからヘンリックに会う事ができないように少しずつ外堀を埋められていたのだった。
マリーナは恋愛では駆け引きが大切だと言われ、しばらくヘンリックを避けるようにと言われたので表面上はそうしていた。
しかしマリーナ自身は、今はヘンリックの気持ちをしっかり捕まえておくべきだと思っていたので、独自にヘンリックに会うための行動を起こそうとしていた。しかし見えない誰かによって邪魔をされているかのように、ヘンリックと接触をする事が以前のように上手くいかなくなっていた。
マリーナがヘンリックに送ったあの白い結婚を願う手紙でさえも、顔見知りの文官を使ってやっと送られたものであった。ヘンリックには強気で接した方が思い通りに動いてくれる事が多かったので、あのような文面にしたのだが、内心ではヘンリックの気持ちが離れかけている事にマリーナは焦っていた。
しかしヘンリックはそれらの事を知らず、手紙も文面通りに受け取っていたので、自分がマリーナの機嫌を損ねたから疎遠にされているのだと思い込んでいたのだった。
◆◆◆
【ローゼリアside】
夕食の後自室へと戻ったローゼリアはソファに座ると大きなため息をついた。
「どうして結婚なんてしてしまったのかしら……」
昨日は大聖堂での挙式の後に大々的なパレードを行って王都中に笑顔を振りまき、城のバルコニーの上からも集まった民に向けて笑顔で手を振っていた、あの幸せそうな王太子妃がまさか翌日に自室で大きなため息をついているなんてきっと誰も思ってはいないだろう。
ローゼリアは早くもこの結婚を後悔していた。
半年ほど前に兄であるエーヴェルトから、ヘンリックとの婚約の継続についてローゼリア自身がどのように考えているのかを聞かれたのだった。
エーヴェルトはそんなにもヘンリックとの結婚が嫌ならば、全力を尽くして自分が破談に持っていこうとまで言ってくれた。
そして、今この時が引き返せる最後のチャンスで、ここを過ぎたらもう引き返す事は出来なくなるとも。
その時ローゼリアは兄の気持ちを嬉しく思うと同時に、家や兄の為にヘンリックとの結婚を選んだのだった。
それからほどなくして王妃の生家で当主の交代があった。
王妃は侯爵家出身であったが、生家を継いだ兄の妻つまり義理の姉と王妃は仲があまり良くなかった。これまでは弟が当主としていたので、王妃も実家の力を使う事ができたのだが、弟の子供に代替わりをした事で実家に頼れなくなり、王妃の力がかなり削がれたのだった。
前侯爵は既に六十歳を超えており、息子は四十代になっていた。息子の年齢を考えると遅過ぎるくらいの当主交代ではあったが、生家の当主交代があった後すぐに王宮の敷地内ではあったが、離宮へと引きこもってしまったのだった。
何も知らされなかったが、侯爵家の当主交代にはおそらく自分の生家であるフォレスターがどこかで関わっているのだとローゼリアは直感していた。
ローゼリアに王太子殿下の婚約者らしくと厚化粧を強制させてきたのは王妃の意向だった。結婚後に王妃とどうやり合おうかとローゼリアは考えていたのだが、厚化粧をやめても王妃は何も言ってこなかった。それだけ王妃の発言力が弱くなっているという事だった。
茶会の話題については国王からの意向で固い内容の話題ばかりをローゼリアからしてきたが、結婚をした事でもう必要はないと思っているのか、こちらも結婚してからはぱたりと何も言ってこなくなったので、ローゼリアはヘンリックに自分から話をする事をやめていた。
そしてヘンリックの最愛であるマリーナ、彼女とヘンリックが一緒にいるところをローゼリア自身はそれほど多く見てはいなかったが、王宮内や夜会で一緒にいる姿は度々目撃されていたようで、社交界では彼らが親密な関係だという話は有名だった。しかし結婚を前にした、ここ数カ月は二人が会っているという噂話を全く聞かなくなってしまった。
実はローゼリアは何度か、夜会でマリーナに絡まれた事があった。挨拶も無く彼女から「ヘンリック様を束縛しないでください!」と大声で言われた事もあった。ヘンリックからも何か言われるのではと思っていたのだが、結局その夜会にヘンリックが参加をしていなかった事もあってか、ローゼリアとマリーナの一件はヘンリックの耳にまで届いていないようだった。
王太子妃となって立場を得てから戦うつもりだったいくつもの問題が、僅か数ヶ月の間にことごとく解決していき、気付いたらローゼリアが立ち向かうべき相手はヘンリックだけとなっていた。そしてそのヘンリックも結婚した昨夜からずっと様子がおかしいのだった。
前シーズンの終わり頃にはマリーナに、ヘンリックはローゼリアとの白い結婚を望んでいるのだと言われた。ヘンリックにはフォレスターの力を使って知っていたのだと昨日は言ってみたのだが、あの程度であんなに動揺するとは思わなかった。
そして結婚二日目の今日はヘンリックの方からお茶に誘ってきたのだ。
こんな事は今まで一度もなかった。実は今日の執務はそれほど忙しくはなく、ヘンリックの誘いを受ける事は簡単に出来たのだが、明日の分の仕事も今日の分の仕事だと周りに言い張って断りの手紙をローゼリア付きの侍従に書かせたのだった。
これまで彼には過去に何度も手紙を送ってきたが、彼の自筆で返事をもらった事はなかったし、今日のお茶会の誘いも侍従の口からであったので、これで充分だろうと執務用の便箋を使って代筆をさせたのだった。
それに、彼と過ごすお茶の時間はローゼリアにとって苦痛以外の何ものでもなかった。王妃からは地味な装いを強制され、国王からはヘンリックに教養を付けさせたいからと話題を決められ、肝心の婚約者からは不機嫌な態度を取られ続けてきたのだ。
どうせあちらは自分の事を嫌っているのだから、わざわざ夫婦の交流を持つ必要はないとローゼリアは自分で判断をしていて、お飾りの王妃となる気が満々であった。
「めんどうな事は嫌だからこの際お飾りの王妃でもいいのだけれど、お兄様が納得してくれなさそうなのよね」
結婚をすると決めた以上、エーヴェルトが敷いてくれた盤石な道を進むべきだとは思うのだが、実際には思っていた以上にローゼリアの自身の気持ちがついていけなかったのだ。
「女ひとりでも子供が産めるような魔法があればいいのに……」
そう言いながらローゼリアは『大魔法使いと王妃』とエルランド語でタイトルが書いてある小説を閉じた。
実は彼女の趣味は恋愛小説を読む事なのだが、ランゲル王国には恋愛小説がなかった。ランゲル王国で小説と言えば冒険小説ばかりで、男性が主人公の物語だった。
エルランドに留学した際に、伯母から勧められた事で恋愛小説を読むようになったローゼリアは令嬢達が繰り広げる恋愛劇に夢中になり、留学中は貪るように恋愛小説ばかり読んでいたのだった。
恋愛小説を読んでいる時だけは婚約者に冷遇されているという現実から離れられて自由だった。ローゼリアは小説に出てくるヒロインたちを応援しながら一緒に泣いて笑った。
輿入れの時もエルランドから取り寄せた自分のコレクションを全て持ってきたかったのだが、さすがにそれは駄目だと父親に言われてしまったので、お気に入りの本だけを持って残りは泣く泣く置いていくしかなかったのだった。
「失礼します」
ローゼリアはそれだけ言うとローゼリアを待っていたヘンリックを見ずに、黙々と食事を始める。
かつて婚約者時代でのお茶会の時は彼女の方から色々な話題を振ってきたのだったが、今朝はそれがなかった。夕食でも彼女から何か話しかけてくれるような様子は見られない。
外見もそうだが、結婚して彼女の態度もこれまでとは違うものになっていた事にヘンリックは気付いてしまった。
「き、今日は執務初日で疲れただろう」
「ええ、お陰さまで今日もぐっすり眠れそうですわ」
「そ、そうか」
「……」
「……」
国王が五十を過ぎた頃に生まれた、たった一人の王子であるヘンリックは常に周りが先を見越して行動をしてきたので、自分から何かをするという事が少なかったせいで、自分から行動を起こそうと言う発想をする機会に恵まれずに生きてきた。
咽がかわいたと思ったら何も言っていないのに飲み物が出てきたし、寒いと思ったら震えるより先にコートを着せてもらえた。
その代わり周りからの指示には素直に従ってきた。侍従から早く寝るように言われたら全く眠気がなくても寝台の中に入ったし、侍女からこちらの色が似合うと言われたら何も考えずに出されたものを着てきたのだった。
夜会で自分の周りに侍ろうとする令嬢や親たちも、あちらから話しかけてくれるのでヘンリックは笑顔を浮かべて頷くだけで良かった。
皆が皆ヘンリックに優しかったから、ヘンリックは好意を素直に受け取っていただけだった。
見方を変えると、ヘンリックはこれまで自分で考えて行動をするという事を周りから阻害されてきており、本人も周囲もその弊害に全く気付いていなかったのだった。
そのヘンリックが初めて自ら欲したのが伯爵令嬢のマリーナだった。彼女は最初、ヘンリックに視線しか送ってこなかった。それが気になって自分から話しかけて少しずつ彼女が自分にとって特別な存在だと思えてきたのだった。しかしその彼女との関係はぎくしゃくしていた。
特に前のシーズンでの夜会でマリーナは貴族たちの前でヘンリックに恥をかかせた。貴族同士であったなら痴話喧嘩として笑い話になったのだろうが、ヘンリックは将来の国王で国の顔となっていくべき存在なのだ。たとえヘンリックが間違っていたとしても、大勢の前でそれも大きな声でヘンリックを罵るような事はあってはならない。
だからなのか、これまで王太子の最愛だからとマナーのなっていないマリーナの態度に甘かった城の者たちの態度が少しずつ変わっていった。
今までは顔パスでマリーナを通していた門番は、許可証が無いと入城は出来ないと言い、こっそりヘンリックの予定を教えていた一部の侍女は離宮へと異動させられていたので、マリーナからヘンリックに会う事ができないように少しずつ外堀を埋められていたのだった。
マリーナは恋愛では駆け引きが大切だと言われ、しばらくヘンリックを避けるようにと言われたので表面上はそうしていた。
しかしマリーナ自身は、今はヘンリックの気持ちをしっかり捕まえておくべきだと思っていたので、独自にヘンリックに会うための行動を起こそうとしていた。しかし見えない誰かによって邪魔をされているかのように、ヘンリックと接触をする事が以前のように上手くいかなくなっていた。
マリーナがヘンリックに送ったあの白い結婚を願う手紙でさえも、顔見知りの文官を使ってやっと送られたものであった。ヘンリックには強気で接した方が思い通りに動いてくれる事が多かったので、あのような文面にしたのだが、内心ではヘンリックの気持ちが離れかけている事にマリーナは焦っていた。
しかしヘンリックはそれらの事を知らず、手紙も文面通りに受け取っていたので、自分がマリーナの機嫌を損ねたから疎遠にされているのだと思い込んでいたのだった。
◆◆◆
【ローゼリアside】
夕食の後自室へと戻ったローゼリアはソファに座ると大きなため息をついた。
「どうして結婚なんてしてしまったのかしら……」
昨日は大聖堂での挙式の後に大々的なパレードを行って王都中に笑顔を振りまき、城のバルコニーの上からも集まった民に向けて笑顔で手を振っていた、あの幸せそうな王太子妃がまさか翌日に自室で大きなため息をついているなんてきっと誰も思ってはいないだろう。
ローゼリアは早くもこの結婚を後悔していた。
半年ほど前に兄であるエーヴェルトから、ヘンリックとの婚約の継続についてローゼリア自身がどのように考えているのかを聞かれたのだった。
エーヴェルトはそんなにもヘンリックとの結婚が嫌ならば、全力を尽くして自分が破談に持っていこうとまで言ってくれた。
そして、今この時が引き返せる最後のチャンスで、ここを過ぎたらもう引き返す事は出来なくなるとも。
その時ローゼリアは兄の気持ちを嬉しく思うと同時に、家や兄の為にヘンリックとの結婚を選んだのだった。
それからほどなくして王妃の生家で当主の交代があった。
王妃は侯爵家出身であったが、生家を継いだ兄の妻つまり義理の姉と王妃は仲があまり良くなかった。これまでは弟が当主としていたので、王妃も実家の力を使う事ができたのだが、弟の子供に代替わりをした事で実家に頼れなくなり、王妃の力がかなり削がれたのだった。
前侯爵は既に六十歳を超えており、息子は四十代になっていた。息子の年齢を考えると遅過ぎるくらいの当主交代ではあったが、生家の当主交代があった後すぐに王宮の敷地内ではあったが、離宮へと引きこもってしまったのだった。
何も知らされなかったが、侯爵家の当主交代にはおそらく自分の生家であるフォレスターがどこかで関わっているのだとローゼリアは直感していた。
ローゼリアに王太子殿下の婚約者らしくと厚化粧を強制させてきたのは王妃の意向だった。結婚後に王妃とどうやり合おうかとローゼリアは考えていたのだが、厚化粧をやめても王妃は何も言ってこなかった。それだけ王妃の発言力が弱くなっているという事だった。
茶会の話題については国王からの意向で固い内容の話題ばかりをローゼリアからしてきたが、結婚をした事でもう必要はないと思っているのか、こちらも結婚してからはぱたりと何も言ってこなくなったので、ローゼリアはヘンリックに自分から話をする事をやめていた。
そしてヘンリックの最愛であるマリーナ、彼女とヘンリックが一緒にいるところをローゼリア自身はそれほど多く見てはいなかったが、王宮内や夜会で一緒にいる姿は度々目撃されていたようで、社交界では彼らが親密な関係だという話は有名だった。しかし結婚を前にした、ここ数カ月は二人が会っているという噂話を全く聞かなくなってしまった。
実はローゼリアは何度か、夜会でマリーナに絡まれた事があった。挨拶も無く彼女から「ヘンリック様を束縛しないでください!」と大声で言われた事もあった。ヘンリックからも何か言われるのではと思っていたのだが、結局その夜会にヘンリックが参加をしていなかった事もあってか、ローゼリアとマリーナの一件はヘンリックの耳にまで届いていないようだった。
王太子妃となって立場を得てから戦うつもりだったいくつもの問題が、僅か数ヶ月の間にことごとく解決していき、気付いたらローゼリアが立ち向かうべき相手はヘンリックだけとなっていた。そしてそのヘンリックも結婚した昨夜からずっと様子がおかしいのだった。
前シーズンの終わり頃にはマリーナに、ヘンリックはローゼリアとの白い結婚を望んでいるのだと言われた。ヘンリックにはフォレスターの力を使って知っていたのだと昨日は言ってみたのだが、あの程度であんなに動揺するとは思わなかった。
そして結婚二日目の今日はヘンリックの方からお茶に誘ってきたのだ。
こんな事は今まで一度もなかった。実は今日の執務はそれほど忙しくはなく、ヘンリックの誘いを受ける事は簡単に出来たのだが、明日の分の仕事も今日の分の仕事だと周りに言い張って断りの手紙をローゼリア付きの侍従に書かせたのだった。
これまで彼には過去に何度も手紙を送ってきたが、彼の自筆で返事をもらった事はなかったし、今日のお茶会の誘いも侍従の口からであったので、これで充分だろうと執務用の便箋を使って代筆をさせたのだった。
それに、彼と過ごすお茶の時間はローゼリアにとって苦痛以外の何ものでもなかった。王妃からは地味な装いを強制され、国王からはヘンリックに教養を付けさせたいからと話題を決められ、肝心の婚約者からは不機嫌な態度を取られ続けてきたのだ。
どうせあちらは自分の事を嫌っているのだから、わざわざ夫婦の交流を持つ必要はないとローゼリアは自分で判断をしていて、お飾りの王妃となる気が満々であった。
「めんどうな事は嫌だからこの際お飾りの王妃でもいいのだけれど、お兄様が納得してくれなさそうなのよね」
結婚をすると決めた以上、エーヴェルトが敷いてくれた盤石な道を進むべきだとは思うのだが、実際には思っていた以上にローゼリアの自身の気持ちがついていけなかったのだ。
「女ひとりでも子供が産めるような魔法があればいいのに……」
そう言いながらローゼリアは『大魔法使いと王妃』とエルランド語でタイトルが書いてある小説を閉じた。
実は彼女の趣味は恋愛小説を読む事なのだが、ランゲル王国には恋愛小説がなかった。ランゲル王国で小説と言えば冒険小説ばかりで、男性が主人公の物語だった。
エルランドに留学した際に、伯母から勧められた事で恋愛小説を読むようになったローゼリアは令嬢達が繰り広げる恋愛劇に夢中になり、留学中は貪るように恋愛小説ばかり読んでいたのだった。
恋愛小説を読んでいる時だけは婚約者に冷遇されているという現実から離れられて自由だった。ローゼリアは小説に出てくるヒロインたちを応援しながら一緒に泣いて笑った。
輿入れの時もエルランドから取り寄せた自分のコレクションを全て持ってきたかったのだが、さすがにそれは駄目だと父親に言われてしまったので、お気に入りの本だけを持って残りは泣く泣く置いていくしかなかったのだった。
703
あなたにおすすめの小説
ここだけの話だけど・・・と愚痴ったら、婚約者候補から外れた件
ひとみん
恋愛
国境防衛の最前線でもあるオブライト辺境伯家の令嬢ルミエール。
何故か王太子の妃候補に選ばれてしまう。「選ばれるはずないから、王都観光でもしておいで」という母の言葉に従って王宮へ。
田舎育ちの彼女には、やっぱり普通の貴族令嬢とはあわなかった。香水臭い部屋。マウントの取り合いに忙しい令嬢達。ちやほやされてご満悦の王太子。
庭園に逃げこみ、仕事をしていた庭師のおじさんをつかまえ辺境伯領仕込みの口の悪さで愚痴り始めるルミエール。
「ここだけの話だからね!」と。
不敬をものともしない、言いたい放題のルミエールに顔色を失くす庭師。
その後、不敬罪に問われる事無く、何故か妃選定がおこなわれる前にルミエールは除外。
その真相は?
ルミエールは口が悪いです。言いたい放題。
頭空っぽ推奨!ご都合主義万歳です!
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
【完結】愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
第18回恋愛小説大賞で、『奨励賞』をいただきましたっ!
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
婚約破棄されたけれど、どうぞ勝手に没落してくださいませ。私は辺境で第二の人生を満喫しますわ
鍛高譚
恋愛
「白い結婚でいい。
平凡で、静かな生活が送れれば――それだけで幸せでしたのに。」
婚約破棄され、行き場を失った伯爵令嬢アナスタシア。
彼女を救ったのは“冷徹”と噂される公爵・ルキウスだった。
二人の結婚は、互いに干渉しない 『白い結婚』――ただの契約のはずだった。
……はずなのに。
邸内で起きる不可解な襲撃。
操られた侍女が放つ言葉。
浮かび上がる“白の一族”の血――そしてアナスタシアの身体に眠る 浄化の魔力。
「白の娘よ。いずれ迎えに行く」
影の王から届いた脅迫状が、運命の刻を告げる。
守るために剣を握る公爵。
守られるだけで終わらせないと誓う令嬢。
契約から始まったはずの二人の関係は、
いつしか互いに手放せない 真実の愛 へと変わってゆく。
「君を奪わせはしない」
「わたくしも……あなたを守りたいのです」
これは――
白い結婚から始まり、影の王を巡る大いなる戦いへ踏み出す、
覚醒令嬢と冷徹公爵の“運命の恋と陰謀”の物語。
---
婚約破棄ありがとう!と笑ったら、元婚約者が泣きながら復縁を迫ってきました
ほーみ
恋愛
「――婚約を破棄する!」
大広間に響いたその宣告は、きっと誰もが予想していたことだったのだろう。
けれど、当事者である私――エリス・ローレンツの胸の内には、不思議なほどの安堵しかなかった。
王太子殿下であるレオンハルト様に、婚約を破棄される。
婚約者として彼に尽くした八年間の努力は、彼のたった一言で終わった。
だが、私の唇からこぼれたのは悲鳴でも涙でもなく――。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
もう演じなくて結構です
梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。
愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。
11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
感想などいただけると、嬉しいです。
11/14 完結いたしました。
11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。
【受賞&本編完結】たとえあなたに選ばれなくても【改訂中】
神宮寺 あおい
恋愛
人を踏みつけた者には相応の報いを。
伯爵令嬢のアリシアは半年後に結婚する予定だった。
公爵家次男の婚約者、ルーカスと両思いで一緒になれるのを楽しみにしていたのに。
ルーカスにとって腹違いの兄、ニコラオスの突然の死が全てを狂わせていく。
義母の願う血筋の継承。
ニコラオスの婚約者、フォティアからの横槍。
公爵家を継ぐ義務に縛られるルーカス。
フォティアのお腹にはニコラオスの子供が宿っており、正統なる後継者を望む義母はルーカスとアリシアの婚約を破棄させ、フォティアと婚約させようとする。
そんな中アリシアのお腹にもまた小さな命が。
アリシアとルーカスの思いとは裏腹に2人は周りの思惑に振り回されていく。
何があってもこの子を守らなければ。
大切なあなたとの未来を夢見たいのに許されない。
ならば私は去りましょう。
たとえあなたに選ばれなくても。
私は私の人生を歩んでいく。
これは普通の伯爵令嬢と訳あり公爵令息の、想いが報われるまでの物語。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読む前にご確認いただけると助かります。
1)西洋の貴族社会をベースにした世界観ではあるものの、あくまでファンタジーです
2)作中では第一王位継承者のみ『皇太子』とし、それ以外は『王子』『王女』としています
→ただ今『皇太子』を『王太子』へ、さらに文頭一文字下げなど、表記を改訂中です。
そのため一時的に『皇太子』と『王太子』が混在しております。
よろしくお願いいたします。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誤字を教えてくださる方、ありがとうございます。
読み返してから投稿しているのですが、見落としていることがあるのでとても助かります。
アルファポリス第18回恋愛小説大賞 奨励賞受賞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる