25 / 75
本編・アリスティアの学園生活
公爵令嬢の挑戦状
しおりを挟む
遂にアリスティアとジークハルトの初登園の日が来た。
大きな講義室の中で、二人は大多数の生徒の目の前に立ち、それぞれが軽く紹介されて挨拶をした。
そもそも編入で入学する生徒は珍しく、また、出戻りのイスト王国の王子と、その婚約者が同時に入学したのが理由で、同学年どころか学園全体での目玉イベントとなっていた。
あまり予想していなかった出来事に、アリスティアは少々困惑していたが、ジークハルトが常に傍に居てくれた為、冷静さを保つことが出来ていた様だ。
大講義室には同学年である中級生の他、学園の教師並びに生徒会の面々が参列していた。
鮮やかな薄紫の腰まで伸びた長い髪。それは長命種の特徴だろうか、頭髪からのぞかせる少しとがった耳と、表情穏やかな女性がジークハルトとアリスティアに一礼し、挨拶を始める。
「私は学園長のマナフロア、お久しぶりですジークハルト王子…そして初めまして、アリスティア姫…学園はお二人を歓迎いたします」
「出戻りにも関わらず暖かく迎えて頂きありがとうございます」
「運命の女性が無事見つかった様で何よりです」
満面の笑顔でマナフロアがそう言うと。ジークハルトは照れくさそうに赤面したが、アリスティアは何のことだろうかよく分からず、首を傾げていた。
「ああ、それと…彼ら生徒会の子達なのですけど…どうやら今日は全員居ないみたいね?」
「ええ、レオンとかは少し席を外しております。
…初めまして、僕は最上級生の生徒会長、シリウス・ルプスハート、二人ともよろしく」
白色の制服を見に纏い
白いシャツの中央で紺色のネクタイを
覗かせる栗毛の青年が笑顔で
ジークハルトとアリスティアに話しかけた。
更に背後から白制服を見に纏った
黒髪のウルフヘアで鋭い目付きをした男性と、プラチナブロンドの少しウェーブのかかったショートボブの頭髪で、ニコニコとした、黄金の瞳を輝かせる笑顔の美しい女性、男性のネクタイはシリウスと同じ紺色、女性のリボンは薄紫色であった。
二人とも左手の薬指にプラティウム鋼で
薔薇の細工がされた指輪を付けている
「初めまして、私はステラ・ローゼンスフィア…お二人ともよろしくね」
「……俺の名はバーンだ」
「ちょっと…バーン…もっと愛想良くしないと…可愛い後輩よ?」
「…。」
アリスティアとジークハルトの二人をサファイアの様な紫色の瞳で、何かを見透かす様にじっと見ている様だが、どこか遠くを見ている様な…そんな寡黙で無愛想な表情のバーンを見ていると、アリスティアとジークハルトは、以前何処かで彼を見たことある様な…そんな気分になった。
「…あの?…バーン様…私達…どこかでお会いしませんでしたか?」
「…アリスと同じく、私もそう思いました」
「……この国の人間には、良く言われるが……俺と君達は、紛れもなく初対面だ」
「無愛想な亭主で、本当…ごめんなさいね…」
ステラはバーンを肘で小突きながら苦笑いで謝罪する。アリスティアは笑顔で「大丈夫ですよ」とだけ言い、ジークハルトはバーンの顔がとても気になった。
(…似ている…アルクスに、良く似ている…)
バーン達との会話が終わるや否や
横から一人の女性が割って入る
「…貴女が…ジークハルトの…なるほど」
女性はポツリと呟く
紺色の制服に身を包みピンク色のリボンを飾ったアリスティアとジークハルトと
同学年になるのだろうか
シルバーブロンドの縦ロールの頭髪が輝く
やたらと存在感のある女性が
アリスティアの目の前までゆっくりと歩いてきて、二人の前に仁王立ちで立った。
右手には煌びやかな扇子を持っていた。
「私の名はローゼリア・オラシオン…
貴女がアリスティア・クゥエルレウス公爵令嬢ね?噂は予々聴いていてよ!」
「え、ええ…そうです、よろしくお願い致します、ローゼリア様」
丁寧に一礼するアリスティアをローゼリアは
まじまじと見ていた。不敵な笑みがローゼリアに浮かぶ。
「アリスティア・クゥエルレウス公爵令嬢。貴女がジークハルト王子に相応しい人物かどうか、私が試して差し上げますわ!」
「ちょっと待て、ローゼリア!?」
ローゼリアは扇子でアリスティアを指し
高らかに宣言をしたのだった。
驚くジークハルトの事など眼中になかった。
「…アリスティア様、わたくしの挑戦、是非受けて下さいまし…よろしくて?」
「…あ…はい」
「え、アリス!?」
周囲の空気などお構い無しに
圧倒的な存在感を放つ公爵令嬢ローゼリア
彼女に終始圧倒されたアリスティアは
彼女の挑戦を流れるまま二つ返事で
受けてしまっていたのだった。
ジークハルトは困惑していた
ローゼリアに圧倒される空気の中で
厳かにマナフロアが口を開く
「オラシオン公爵令嬢、いささか強引では有りませんか?」
「あら、わたくしとした事が…少し興奮してしまいまして…ごめんあそばせ」
ローゼリアは扇子で口元を隠して小さく笑う。
「アリスティア・クゥエルレウス公爵令嬢、勝負の内容と日時は追ってご連絡差し上げますわ、噂通りの貴女ならきっと来て下さると信じています…それでは皆様ごきげんよう」
そう言って嵐は去って行った。
「…相変わらずだなぁ、オラシオン公爵令嬢…」
頭をかきながら苦笑いのシリウス
「あらまあ、若いって凄いわね…」
頬に手を当てて、ローゼリア達を微笑みながら眺めるステラ
相変わらずバーンは腕を組んで黙りこくっている。
「…アリス…ローゼリアと、勝負と言っていましたが…大丈夫ですか?」
「…大丈夫…だと思います…多分」
ローゼリアの圧力に終始圧倒された
アリスティアの頭の中はほとんど真っ白だった、講義室のテーブルで状況を見ていた
他の学生たちもざわざわと騒めいている
編入生紹介のはずが飛んだトラブルに見舞われて、学園長のマナフロアも両手で顔面を
押さえて悩んでいた。
「とにかく、ローゼリア様の指示があるまで…とりあえず授業を受けましょう、ジーク」
「…ええ、まあ…そうですね」
悩んでいてても仕方が無いとアリスティアは
一旦はローゼリアの事を置いといて
ジークハルトと共に学園での授業を受ける事にした。
それから数日後、アリスティアとジークハルトが談笑していると、二人の元へと一通の手紙が手渡された。表面には「果し状」と書いてある。
ローゼリアは決闘でもするつもりなのだろうか?二人の頭の中には微かな不安が過ぎる
─拝啓、親愛なるアリスティア・クゥエルレウス公爵令嬢、この度は
(長文の挨拶と世間話と世界情勢が
二~三枚ぐらいあった為以下略)
…今回の勝負内容についてですが
下記の通りとします
1.座学のテストの点数
2.魔法の威力
3.魔力のコントロール
4.料理
日程については今日より一週間後の
昼食一時間後とします
護衛や従者の参加は掃除や食材調達等
サポートに限り可能とします
なお、勝負項目4番目の料理については
審査員をジークハルト王子とします
奮ってご参加くださいませ
─ローゼリア・オラシオン
手紙を読んでいてアリスティアはこの手紙が
果し状と言うよりも何か遠足とかそう言った
企画表や計画表を思わせる何かその様なものに見えてしまっていた。
「何故か、私も巻き込まれてるな…」
ジークハルトはアリスティアの後ろからローゼリアの手紙を覗き込む
「ごめんなさいジーク…私が勝負を受けたばかりに…」
「気にしないでいいよ、アリス…しかし、料理が項目に入ってるとなると中々厳しいのではないのかい?」
アリスティアは多少は魔力のコントロールが出来る様になって来たとはいえ
まだ0か100の調整が1か100になった程度なので、魔力鉱石のコンロでは未だまともな火が付くレベルではなかった。
「しかし…私はアリス側の人間だと言うのに料理の審査員が私で良いのだろうか…?」
「…私もあの時、圧倒はされたのですが…ローゼリア様に悪意や敵意を感じませんでした…むしろ何か、こう…何でしょうか、よくわかりませんが、とにかく悪い気はしなかったのです。」
「アリスが言うなら、多分そうだと思うよ」
アリスティアに微笑むジークハルト
しかし、アリスティアの中では
表現できない感情でモヤついていた
「勝負の日は一週間後…私全力で頑張ります!」
「応援していますよ、アリス」
アリスティアは微笑むジークハルトを
安心させる為、意気込んでいた。
大きな講義室の中で、二人は大多数の生徒の目の前に立ち、それぞれが軽く紹介されて挨拶をした。
そもそも編入で入学する生徒は珍しく、また、出戻りのイスト王国の王子と、その婚約者が同時に入学したのが理由で、同学年どころか学園全体での目玉イベントとなっていた。
あまり予想していなかった出来事に、アリスティアは少々困惑していたが、ジークハルトが常に傍に居てくれた為、冷静さを保つことが出来ていた様だ。
大講義室には同学年である中級生の他、学園の教師並びに生徒会の面々が参列していた。
鮮やかな薄紫の腰まで伸びた長い髪。それは長命種の特徴だろうか、頭髪からのぞかせる少しとがった耳と、表情穏やかな女性がジークハルトとアリスティアに一礼し、挨拶を始める。
「私は学園長のマナフロア、お久しぶりですジークハルト王子…そして初めまして、アリスティア姫…学園はお二人を歓迎いたします」
「出戻りにも関わらず暖かく迎えて頂きありがとうございます」
「運命の女性が無事見つかった様で何よりです」
満面の笑顔でマナフロアがそう言うと。ジークハルトは照れくさそうに赤面したが、アリスティアは何のことだろうかよく分からず、首を傾げていた。
「ああ、それと…彼ら生徒会の子達なのですけど…どうやら今日は全員居ないみたいね?」
「ええ、レオンとかは少し席を外しております。
…初めまして、僕は最上級生の生徒会長、シリウス・ルプスハート、二人ともよろしく」
白色の制服を見に纏い
白いシャツの中央で紺色のネクタイを
覗かせる栗毛の青年が笑顔で
ジークハルトとアリスティアに話しかけた。
更に背後から白制服を見に纏った
黒髪のウルフヘアで鋭い目付きをした男性と、プラチナブロンドの少しウェーブのかかったショートボブの頭髪で、ニコニコとした、黄金の瞳を輝かせる笑顔の美しい女性、男性のネクタイはシリウスと同じ紺色、女性のリボンは薄紫色であった。
二人とも左手の薬指にプラティウム鋼で
薔薇の細工がされた指輪を付けている
「初めまして、私はステラ・ローゼンスフィア…お二人ともよろしくね」
「……俺の名はバーンだ」
「ちょっと…バーン…もっと愛想良くしないと…可愛い後輩よ?」
「…。」
アリスティアとジークハルトの二人をサファイアの様な紫色の瞳で、何かを見透かす様にじっと見ている様だが、どこか遠くを見ている様な…そんな寡黙で無愛想な表情のバーンを見ていると、アリスティアとジークハルトは、以前何処かで彼を見たことある様な…そんな気分になった。
「…あの?…バーン様…私達…どこかでお会いしませんでしたか?」
「…アリスと同じく、私もそう思いました」
「……この国の人間には、良く言われるが……俺と君達は、紛れもなく初対面だ」
「無愛想な亭主で、本当…ごめんなさいね…」
ステラはバーンを肘で小突きながら苦笑いで謝罪する。アリスティアは笑顔で「大丈夫ですよ」とだけ言い、ジークハルトはバーンの顔がとても気になった。
(…似ている…アルクスに、良く似ている…)
バーン達との会話が終わるや否や
横から一人の女性が割って入る
「…貴女が…ジークハルトの…なるほど」
女性はポツリと呟く
紺色の制服に身を包みピンク色のリボンを飾ったアリスティアとジークハルトと
同学年になるのだろうか
シルバーブロンドの縦ロールの頭髪が輝く
やたらと存在感のある女性が
アリスティアの目の前までゆっくりと歩いてきて、二人の前に仁王立ちで立った。
右手には煌びやかな扇子を持っていた。
「私の名はローゼリア・オラシオン…
貴女がアリスティア・クゥエルレウス公爵令嬢ね?噂は予々聴いていてよ!」
「え、ええ…そうです、よろしくお願い致します、ローゼリア様」
丁寧に一礼するアリスティアをローゼリアは
まじまじと見ていた。不敵な笑みがローゼリアに浮かぶ。
「アリスティア・クゥエルレウス公爵令嬢。貴女がジークハルト王子に相応しい人物かどうか、私が試して差し上げますわ!」
「ちょっと待て、ローゼリア!?」
ローゼリアは扇子でアリスティアを指し
高らかに宣言をしたのだった。
驚くジークハルトの事など眼中になかった。
「…アリスティア様、わたくしの挑戦、是非受けて下さいまし…よろしくて?」
「…あ…はい」
「え、アリス!?」
周囲の空気などお構い無しに
圧倒的な存在感を放つ公爵令嬢ローゼリア
彼女に終始圧倒されたアリスティアは
彼女の挑戦を流れるまま二つ返事で
受けてしまっていたのだった。
ジークハルトは困惑していた
ローゼリアに圧倒される空気の中で
厳かにマナフロアが口を開く
「オラシオン公爵令嬢、いささか強引では有りませんか?」
「あら、わたくしとした事が…少し興奮してしまいまして…ごめんあそばせ」
ローゼリアは扇子で口元を隠して小さく笑う。
「アリスティア・クゥエルレウス公爵令嬢、勝負の内容と日時は追ってご連絡差し上げますわ、噂通りの貴女ならきっと来て下さると信じています…それでは皆様ごきげんよう」
そう言って嵐は去って行った。
「…相変わらずだなぁ、オラシオン公爵令嬢…」
頭をかきながら苦笑いのシリウス
「あらまあ、若いって凄いわね…」
頬に手を当てて、ローゼリア達を微笑みながら眺めるステラ
相変わらずバーンは腕を組んで黙りこくっている。
「…アリス…ローゼリアと、勝負と言っていましたが…大丈夫ですか?」
「…大丈夫…だと思います…多分」
ローゼリアの圧力に終始圧倒された
アリスティアの頭の中はほとんど真っ白だった、講義室のテーブルで状況を見ていた
他の学生たちもざわざわと騒めいている
編入生紹介のはずが飛んだトラブルに見舞われて、学園長のマナフロアも両手で顔面を
押さえて悩んでいた。
「とにかく、ローゼリア様の指示があるまで…とりあえず授業を受けましょう、ジーク」
「…ええ、まあ…そうですね」
悩んでいてても仕方が無いとアリスティアは
一旦はローゼリアの事を置いといて
ジークハルトと共に学園での授業を受ける事にした。
それから数日後、アリスティアとジークハルトが談笑していると、二人の元へと一通の手紙が手渡された。表面には「果し状」と書いてある。
ローゼリアは決闘でもするつもりなのだろうか?二人の頭の中には微かな不安が過ぎる
─拝啓、親愛なるアリスティア・クゥエルレウス公爵令嬢、この度は
(長文の挨拶と世間話と世界情勢が
二~三枚ぐらいあった為以下略)
…今回の勝負内容についてですが
下記の通りとします
1.座学のテストの点数
2.魔法の威力
3.魔力のコントロール
4.料理
日程については今日より一週間後の
昼食一時間後とします
護衛や従者の参加は掃除や食材調達等
サポートに限り可能とします
なお、勝負項目4番目の料理については
審査員をジークハルト王子とします
奮ってご参加くださいませ
─ローゼリア・オラシオン
手紙を読んでいてアリスティアはこの手紙が
果し状と言うよりも何か遠足とかそう言った
企画表や計画表を思わせる何かその様なものに見えてしまっていた。
「何故か、私も巻き込まれてるな…」
ジークハルトはアリスティアの後ろからローゼリアの手紙を覗き込む
「ごめんなさいジーク…私が勝負を受けたばかりに…」
「気にしないでいいよ、アリス…しかし、料理が項目に入ってるとなると中々厳しいのではないのかい?」
アリスティアは多少は魔力のコントロールが出来る様になって来たとはいえ
まだ0か100の調整が1か100になった程度なので、魔力鉱石のコンロでは未だまともな火が付くレベルではなかった。
「しかし…私はアリス側の人間だと言うのに料理の審査員が私で良いのだろうか…?」
「…私もあの時、圧倒はされたのですが…ローゼリア様に悪意や敵意を感じませんでした…むしろ何か、こう…何でしょうか、よくわかりませんが、とにかく悪い気はしなかったのです。」
「アリスが言うなら、多分そうだと思うよ」
アリスティアに微笑むジークハルト
しかし、アリスティアの中では
表現できない感情でモヤついていた
「勝負の日は一週間後…私全力で頑張ります!」
「応援していますよ、アリス」
アリスティアは微笑むジークハルトを
安心させる為、意気込んでいた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
101
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる