上 下
34 / 75
本編・アリスティアの学園生活

アリスティアと幸せな年越し

しおりを挟む
イスト王国を真っ白な雪が多い尽くし
見慣れた景色も別の様相に変えていた

あれからすぐにアリスティアは
ジークハルトとアナスタシアを誘って
多少歪ではあったが、それは大きな
雪だるまと多量の雪を固めて大きな
小屋の様なモノを作った。
最初にアリスティアとジークハルト
そしてアナスタシアの三人がそれぞれで集めたていた雪を一箇所に固めて
一人ぐらいが入れる小さな穴を掘り
丸いドームの様なモノが出来上がった
それを近くで見ていたライザやフィルが
何やら面白そうだと参加して
その後に、アルクスとミーティリアが
やって来てそして、お茶の準備が出来、 
アリスティアとジークハルトを呼びに来た
マリエルまでもがしっかりと参加すると
数十人程度が悠々と入れる
とても広い空間が出来上がっていた

それは小屋と言うには余りにも大きく
大雑把ではあったが、まさしく雪で出来た庶民の民家であった。
ライザがそこら周辺の雪を一気にかき集め
アルクスとフィルが魔法で氷の柱を建てる
ミーティリアとマリエルが区画を見積もり
色々な物の配置を決めて
アルクスとフィルにそれらを配置する指示を出す
とても段取りの良い、それはまるで建築である
ジークハルトとアリスティアは彼等の
スムーズな連携行動に唖然としていた。

「…ほう…なかなか立派な家が出来たな」

「素晴らしいじゃないの、完成度の高い…雪の家ね」

何やらワイワイと楽しそうに組み立てていた
アルクス達に気がついたレオルス
そしてルビアーナも雪の建造物を眺めてい
た。

「ジーク、ロゼやレオン様達もお誘いしない?」

「それは良い考えだね。…アルクス、フィル、遣いに出てくれるか?」

「ええ、すぐに行って参ります。」

アルクスはフィルを引き連れて
アルクスがフィルに何やら唱えると
なんと二人は空に飛び立ち、その姿はすぐに何処かへと、見えなくなってしまった

「…魔導師の全盛期、古の魔導師達は皆
空を自由自在に飛んでいたんだ。
今現在、空を飛べる魔導師は
魔導王国グラティナ出身の七賢人と
極一部の魔導師だけだ、浮くぐらいなら
他の国の例えば魔法王国フェイラルとかの優秀な魔導師ならば、あるいは出来るかもしれない、しかし、空を飛ぶには魔力の絶妙なコントロールが必要で
それだけに空を自由に飛ぶ魔法は難しい」

淡々とミーティリアが説明すると
アリスティアは彼女に問う

「ミーティリアも飛べるの?」

「勿論だ姫様」

彼女は微笑みアリスティアにはっきりと伝えた。

そうこうしているうちに一台の通常よりも
少し大型の魔導馬車がイスト王国の王城に
ゆっくりとやってきた
魔導馬車の扉にルプスハート家の家紋が
入っていた。

アルクスが扉を開けて、まず降りる
次にフィルが外に出て、地面の具合を確かめる。アルクスはアトラをエスコートし
ゆっくりと石畳の道路へと降ろす
アトラが降り立ったのを確認したレオンが
降りると、彼は魔導馬車の入り口から
顔を出したローゼリアの手を取り
転ばない様、優しく抱きかかえた。
そして、最後にシリウスがゆっくりと降りた

「ジークハルト王子、アリスティア姫、お招きいただきありがとうございます」

シリウスが笑顔で微笑む

「皆様、寒い中ご足労いただき、本当に感謝致します」

「雪のお家でお茶会と聞いたので、わたくしもアトラも楽しみでしたのよ」

ローゼリアは扇子を口に当てて穏やかに微笑む

「アトラ!本当に元気になったんだね!」

「ええ、アナスタシア、これで私も一緒に学園に通えるわ!」

「うふふ、楽しみね!」

アナスタシアとアトラは互いの手を合わせて
喜び合っていた。
アリスティアとジークハルトは雪の家の中へと来てくれた皆を招待する。
防寒着も着込んでいる分家の中は外とは違い
空気の流れが完全に遮断された為か
雪の家の中はかなり暖かかく感じられた
中ではマリエルがテーブルと椅子を準備して待っていた。それも雪と氷で出来ている様だった。

「皆様!暖かいお茶やココア、あと軽食も用意しました、どうぞお召し上がりください」

マリエルがアリスティアとジークハルトをはじめ来客達一人一人に暖かい飲み物を置いていく。
レオルスとルビアーナはシリウス達と
軽く挨拶だけ済ますと

「後は若者同士でゆっくり楽しむと良い」

とだけレオルスは言ってルビアーナと
共に静かに王城へと入った
アルクスとミーティリアはそれに付いて行く

アリスティアとローゼリアはお茶や軽食を楽しみながら談笑し、ジークハルトとレオン
シリウスの三人はチェスに興じていた。
アナスタシアとアトラはマリエルを伴って
雪の家の外で雪だるまや雪兎等を作って
無邪気に遊んでいた。
澄んだ空に輝く太陽も、そろそろ傾き始め
空からは大粒の雪が舞い降りて来た。
レオンとシリウスはそろそろ帰宅しようか、と相談をはじめると、そこにジークハルトが
割って入る。

「…今日は皆、イスト王城で泊まって行ったらどうだろう?…悪天候の中で馬車が横転でもしたら大変だし…」

「なあ…ジークハルト…、お前はそう言ってるけど、シリウス兄貴に負け続けてるのが悔しいんだろ?…素直にそう言えよ。」

「うぐ…そりゃ…全戦全敗だから…悔しいよ…。」

「ふふ…王子、僕達は構いませんよ。」

どうやらレオンに言われた通の
ジークハルトは図星の様だった。
シリウスは笑顔で了承し
一旦はチェス盤と駒をまとめて
雪の家から片付け始めた。

「…それではロゼ達もお泊まりしますか?」

「ええ、…お言葉に甘えさせて頂きましょう
…そう言えばわたくしの愛読書を、何冊か持って来ましたので、皆でお茶でも飲みながらゆっくり読書でもしますか」

各々立ち上がると、皆座っていた椅子をそれぞれで片付け始めた。マリエル一人では
マリエルは食器を片付け、ライザとフィルは
テーブルをそれぞれ運んで言った。
片付けるのが大変だと思ったからだ。
アリスティア達がマリエルの手伝いをすると「皆様…大変恐縮です…」
と申し訳なさそうにマリエルは言ったが
それに対してアリスティアが
「何時もありがとう、マリエル」
と微笑みながら穏やかに答えていた。

一通り片付けが終わると、皆は王城の中へと
入って行った、体が冷え切っていた為
夕食前に、皆、湯浴みを行い、身体を温めた
応接客間で暖炉を焚いて談笑をしていると
部屋にイスト王城の厨房で働いている
料理人が、マリエルに耳打ちした。
少し、罰の悪い表情でマリエルが言う

「…本日は料理長の筆頭シェフが体調不良で…当家の厨房が混乱してるようです…食事はどうしましょうかと、相談を受けました」

マリエルの言葉を聞いてアリスティアは
フンスと意気揚々と袖をまくる
ジークハルトはアリスティアの
その姿を微笑み眺めていた

「…でしたら、今日は私が皆さんの夕食を作ります!」

「では、私がアリスのサポートをしましょう…私たち二人で皆に料理を振る舞いましょう。」

「ええ、ジーク…よろしくお願いね、二人で頑張りましょうね!」

「はい、アリス、頑張りましょう!」

アリスティアは自信満々にジークハルトと
共にイスト王城の厨房へと入っていく。
厨房の中は何やら活気がなかった
病欠で休んだ料理長が居ない所為だろうか?
アリスティアとジークハルトは厨房の
奥へと進み、元気のない料理人達に尋ねた

「…あの?ここの厨房と道具を使わせていただいても宜しいでしょうか?私達、料理がしたいのです」

「…えっ!?アリスティア姫様にジークハルト王子!?なんでこんな所に!?」

王城の姫の発言に料理人達は驚いていた
一国の王妃になる方が料理をすると
そう言っているからこそ
王城の料理人達は驚いていた。

「しかし…アリスティア姫様に料理をさせるなど…そのような事をしたら…」

「…うーん…でしたら……これから私が皆様にやって頂きたい事を、全てお願い致しますので、皆様、私の指示に従っていただけますか?」

ジークハルトはアリスティアに感心した
己の立場を生かしつつ…現場の人間の
立場を蔑ろにしない発言だったからだ。

「現状でお出ししようとしていたレシピはなんですか?」

「はい、姫様…こちらです」

アリスティアは料理人から出されたお品書きに目を通す。あらかじめアラカルトは決まっていたようだったが、調理の難しいものを省いて簡単な物だけを抜粋して指示を出す

「では…こちらのタウスのステーキを男性の分だけ、タウスの薄切りローストを添えた朝取り野菜のサラダを女性の分だけ提供してください。」

「かしこまりました」

支持された料理人はすぐに作業に入った。
指示を受けた料理人達は手際良く調理を開始する。

「それでは、今からニンジン角切り、ジャガイモ角切り、タマネギくし切り、ラパクス肉のササミをそこの貴方達でやって下さるかしら?」

「お任せください。」

二人の料理人はすぐに食材を切り出した。
それぞれ分担して必要分の材料を切り分け
下拵えをする。

「私とジークはホワイトソースを作りましょうか」

「火加減は私に任せて下さい、アリス」

「とっても頼りにしてるわ、ジーク」

二人は仲睦まじくホワイトソースを準備する。
食材とソースが出揃い、アリスティアは
ソースと共に具材を煮込み始める
その後は鍋の番をジークハルトに任せて
アリスティアは次の準備を始めた。

「…一斤の食パンを六つ、反斤の食パンを七つ。こうやって四角く繰り抜いて下さい、繰り抜いたパンの一部は賽の目に、一部はそのまま棒状に切って下さい。どちらもオーブンできつね色になるまで。軽く焼いて下さい」
「かしこまりました。」

料理人達は手際良く食パンをくり抜き始めた。賽の目のパンと棒状のパンをオーブン
に入れ、短い時間焼いていく。

「繰り抜いたパンに、煮込んだシチューを入れます。半分ほど入れたら先程焼いた賽の目のパンを入れて、ギリギリの所までシチューをかけて、その上に再度パンをまぶして刻んだチーズを満遍なく乗せます」

振りかけた少し多めのチーズはシチューの熱でジワリと溶け出していた。
ジークハルトはこれだけでも美味しそうに見えた。

「…そして、これを魔力オーブンの中に入れて、表面が少しカリッとなるまで軽く焼きます、ジーク、火加減は少し強火でお願いします」

「…ええ、任せて下さい。」

魔力オーブンの中で程よく焼かれその後
取り出されたパンの塊のそれは、香ばしく
焼けた小麦とチーズの香りを漂わせて食指を誘う。

「さあ、出来ました、シチューパングラタンです、熱々のうちに食べれば、冷えた身体をすぐに温めてくれるので、とっても良いですよ♪」

一国の姫君が、とても庶民的な料理をしていて、イスト王城の料理人達は少し驚いていた。

程なくして全員に料理が行き届いた。
中でもアリスティアの提供した
シチューパングラタンは皆に
とても大好評のようであった。

「…アリスは相変わらず料理が上手ですわ」

「…ロゼ…そう言いますが私はいまだに魔力コンロすら使えませんよ?」

「…アリス、貴女のその感性とセンスは
道具に左右されません…そこは誇るべきですわ」

ローゼリアは満面の笑顔でそう言った。
アリスティアはローゼリアに褒められた事が
嬉しくなって、頬を赤く染めていた。

表面に乗せられたチーズは香ばしく焼けて
シチューの中に熱々でサクサクなパンと
しっかりとシチューを吸い込んだふわふわなパンがいて、食べる者を飽きさせなかった
器としたパンにもシチューがしっかりと
染み込んでいて表面もサクサクに焼かれていた
温かい料理が喉を通ると活気が湧き出てくる。
皆、アリスティアが振舞う料理に舌鼓を打っていた。

一通り食事を終えると、しばしの間
食休みのティータイムを行って、それから
皆は自分の寝室へと向かって行った。

アリスティアとジークハルトは二人とも
久しぶりにジークハルトの寝室へと向かい
共に過ごす事になった。
ベッドの上で二人寄り添った。
ただ何もする事なくるジークハルトと
一緒に居るだけでアリスティアは思う

(…ジークとの、この幸せな時間が何時迄も変わらずに続きます様に…)

ゴーン、ゴーンと外からイスト王国中に鳴り響く
年越しと、新しい年明けを告げる鐘の音に
アリスティアは願いを込めながら祈りを捧げる

「…アリス…不束者ですが…今年もよろしくお願いします」

「ジーク…これからもずっと…一緒に居てくださいね…」

言い終える前にジークハルトは
アリスティアに優しくキスをする
アリスティアの唇にジークハルトの
温もりがゆっくりと伝わった。

雪がまるで花びらの様に静かに舞い降りる
イストの城下街を、見慣れた景色を真っ白に染め上げて
イスト王城の少し肌寒いジークハルトの寝室で
アリスティアとジークハルトは
二人で一つの毛布に包まって
支え合う様に寄り添って窓の外を見ていた

鐘の音は鳴り響く、新年の到来を祝福する様に。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

拝啓、殿下♡私を追い出して頂いて感謝致します

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,267pt お気に入り:145

似て非なる双子の結婚

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:70,853pt お気に入り:4,348

『私に嫌われて見せてよ』~もしかして私、悪役令嬢?! ~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:142pt お気に入り:46

婚約者が相手をしてくれないのでハーレムを作ってみた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,321pt お気に入り:30

処理中です...