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第4章過去との決別
41王の秘策
しおりを挟む〈プレイヤー『鮫島』のターンを開始いたします〉
機械音が戦いの火蓋を落とした。
分かっているさ。どうせ攻撃してくるんだろ?鮫島は本気で俺を殺しにくると思うよ。
その後は火憐も狙ってくるかもしれない。ダンジョンから逃げ出した事を隠す為にな。
どのみち奴隷である俺や、魔道士の火憐の言葉を聞いたって誰も信用なんかしないのに……。
鮫島は俺達を消せば過去を無かった事にできると思っているんじゃないのかな。
全く。哀れな王様だ。過去を無かった事になんか出来ないのにさ。
そう。俺は鮫島に勝ったとしても虐められた過去が無くなるなんて思わない。
無くなるんじゃないんだ。乗り越えるんだよ!
そう強く思って俺は手を強く握りしめ、目を閉じた。
(スキル発動……)
心の中でそう願うとまたあの画面が眼に浮かぶ。
【ALL CHANGE……】
【……発動します】
【HP値を物理・魔法防御値にそれぞれ1000万ずつ移動させます……】
初めから全力なのは念のためだ。
いつもなら100万を移動させるだけだが、鮫島の悪魔のような表情を見るとそれだけでは不安になるのだ。
実際に今も鮫島は俺の顔を見てニヤついている。
「奴隷。お前はなんで装備を持ってこなかったんだ?」
「装備は無い。ダンジョン内で探索をしなかったからな」
「ははは。探索しなかったか。無駄足にならずに良かったなぁ」
「無駄足?」
鮫島は得意げな顔をして見つめてくるが、知らないものは知らない。
俺は顔をしかめた見つめ返した。
「本当に知らないみたいだな」
「……」
「ダンジョンの横穴を探っていくとなぁ。色々な装備を見つけるんだけどよ。奴隷が装備できる武具は一個もなかったんだよ」
「何が言いたい?」
俺がそう聞き返すと鮫島はニヤッと口をこちらに見せて、俺を馬鹿にしてきたんだ。
そもそも奴隷に装備出来るものなんて無い。ってさ。
「要するにだ! 奴隷には装備できる武具は殆ど存在しないって事だよぉ」
「え、単純にあのダンジョン内に無かっただけじゃ」
「他の職業が装備できる武具は大量に見つけたのにか?」
「……」
「可哀想になぁ。奴隷は能力だけじゃなくて装備にも嫌われてるんだ!」
鮫島は自身の装備を俺に見せつけるように両手を前に出した。性格の悪い野郎だ。
これでもかと言うほど見せてくる。
でもな。
装備なんか無くても、俺にはスキルや無限HPがあるんだよ。
覚悟を決めた俺に対して機械音が攻撃を告げた。
〈プレイヤー『鮫島』の攻撃『王の裁定』が発動されます〉
(ん? どんな技だ?)
初めて聞く技だ。
俺が鮫島の方を見つめると、彼は右手の掌を前に突き出して詠唱していた。
どうやら魔法の一種らしい。目を閉じてこの時だけは真面目に詠唱している。
「我は王なり。万物の運命を決め、命すらも自由に操る神である。よって我は今。プレイヤー『蓮』の運命を決定した……」
鮫島が詠唱を始めると手の周りが青く輝き出し【ゴゴゴ】という地響きが聞こえ始めた。
俺の後方から聞こえるその音は、さらに大きくなって遂には【ギシギシ】といった木の軋む音が混ざるようになった。
(なんだこの音は?)
俺は急いで振り向いたさ。何が出てきたんだろうって。
最初はどデカイ大砲やバリスタが出てきてると思ったんだ。でも違った。
鮫島は元々、俺に対してダメージを与えるつもりなんかなかったみたいだ。だって、俺の視線の先にあった物は。
巨大な首吊り台だったんだから――。
「な、なんだよこれ?……」
禍々しいオーラを放つ腐った木で出来た首吊り台。それは教室の天井を壊してさらに上にあった。
巨大な建造物の登場。それに動揺する俺は、目を大きく開けてただ見つめる事しかできなかったんだ。
そうしていると鮫島が笑いかけてきたよ。
「ははは! 驚いているようだなぁ。これから何が起こるんだろって。どうせそんな事を考えてるんだろぉ?」
「……」
「だんまりかよ。まぁいいさ、すぐに分かるからなぁ。機械音が説明をしてくれるだろ」
驚きのあまり声が出なかった俺は顔だけでも鮫島の方へと移した。
ちょうどその時だ、鮫島の言葉通り機械音が説明をしてくれたのはな。その説明にはさらに驚かされたよ。
鮫島が余裕な原因はこれか。ってさ。
〈『王の裁定』が発動されましたので、『蓮』は『3ターン目』終了時にHPが0になります〉
「なんだと?」
ようやく出た声は情けない困惑の声であった。
なんだよそれ?そんなのアリかよ。ってさ。
俺は一方的に鮫島を倒せると思ったんだ。けど王、である鮫島を少し見くびっていたのかもしれない。
苦い顔をして鮫島を睨み付けると、彼は無邪気にほくそ笑んでいた。
絶望している顔をもっと見せてくれと訴えるように。
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