43 / 123
第4章過去との決別
42令嬢との約束
しおりを挟む鮫島の攻撃。それは単純にダメージを与える技じゃない。時間差で必ず殺せる一撃必殺の技だったんだ。
「そんなに睨んでどうした?」
「……」
鮫島は笑顔で俺に質問する。なんで睨んでるのか分かってるだろうに性格の悪い奴だ。
そう。あと3ターン後に俺は死ぬ。こんな技ってありなのか?俺が言えた立場じゃない事は分かるけどさ。
周りにいるクラスメイトもそう思うだろ。って周りを見てみたんだ。皆んなは静かに首吊り台を見ていただけだ。
俺は忘れていたよ。機械音が聞こえるのは戦闘に参加しているプレイヤーだけだってな。
〈『鮫島』のターンが終了いたしました〉
〈コマンドを選択してください〉
おっと。俺のターンが来たようだ。
でも、自分のコマンドを選択する前にしなきゃならない事がある。
さっきから火憐が声をあげているんだ。何が起こっているの?ってさ。
「蓮! 今、どうなってるの? あの首吊り台は何なのよ?」
「大丈夫だよ」
俺が笑顔で答えても火憐はもう納得してくれないようだ。彼女は机に身を乗り出し、今にも泣きそうな顔で訴えてきた。。
「大丈夫って……いつもそうじゃん……ごまかしてさ……」
「ごまかしてる訳じゃないよ。本当に大丈夫だから」
「じゃあ、今の状況を説明してよ」
「……」
俺は彼女の質問に応えられなかった。
火憐を心配させたくなかったんだ。3ターン後に必ず死ぬ。なんて知ったら彼女になんて言われるか。
そうして俺と火憐が下を向いてが黙り込んでいると、鮫島が会話に割り込んできた。
嫌味な口調で。
「おいおい。王子様がだんまりかよぉ」
「鮫島は黙ってて!」
火憐が鮫島に向かって叫んだ。先程の挑発からイライラしているのだろう。
鮫島を睨みつける目は憎悪に満ちていた。
しかし、鮫島は軽い調子で言葉を返すだけだ。彼は良心など持ち合わせていないのだろう。
「松尾も怖くなったな。俺とつるんでいた時なんかいつもクールだったのによぉ」
「あの時は人生に冷めてたのよ」
「へぇ~。そんな中で王子様に出会ったってわけか。うんうん、感動的だね」
「うるさいわね!」
火憐が机をドンッ、と叩くと鮫島はニヤついた表情のまま、話し相手を俺に変えてきた。
今度は俺の事を奴隷ではなく王子様に呼び代えている。火憐を相当怒らせたいようだ。
「なぁ王子様。お前は松尾の事どう思ってんだ? あいつはいつも虐める側だったんだぜ」
「……それは、分かってる」
「ははは。松尾聞いたか? 王子様はお前の事嫌いだってよ!」
「……」
鮫島は再び火憐の方を見て悪魔のような笑みを浮かべている。
そして、本当の悪魔に魅入られているように火憐は下を向いて黙り込んでしまった。俺に対して罪悪感が残っていたんだろう。
でも、もう俺にとってはそんな事どうでもいいんだ。
鮫島がチャチャを入れてきても俺は火憐に向かって話し続けた。
「違うよ」
「はぁ? 何言ってんだ。お前はMか?」
「それも違う。火憐は確かに俺を虐めてた。けど、ダンジョン内で俺に魔法をかけなかった」
「ほぉ! それで虐められた事をチャラにしたって事か!」
「いや、チャラにしたわけじゃない。乗り越えたんだ。俺と火憐は虐めっ子と虐められっ子の関係から、友達の関係になったんだ」
「意味わかんね~。松尾は分かるのか?」
鮫島は白けた顔をして俺と火憐の顔を交互に見ている。
俺たちが思ったよりも信頼し合っている事に気付いたんだろう。
実際に火憐は再び元気を取り戻して話し始めた。
「私も蓮の言ってる意味はよく分からない……。けど、私の事を嫌ってないって事は分かったわ」
「目がウルウルしてんじゃねぇか。全く! 興醒めだぁ。ちっ。最後にいい事教えてやるぜ松尾。俺が王子様に掛けたのは呪いだ。3ターン後に死ぬぞ!」
「蓮! 本当なの?」
「……」
「答えてよ!」
「……大丈夫……俺は絶対に死なない……約束だ」
俺は火憐に向かって微笑んだ。
出来るだけ安心して欲しい。そういう願いを込めて。
その願いが叶ったか、その時はよくわからなかった。
火憐は心配そうな顔はしているがその後話しかける事はなくなったんだ。
鮫島のお喋りは止まらないようだけどね。
「どうよ。3ターンの間、死を待つ感覚は」
「最悪だね」
俺はわざと苦悩の表情を浮かべた。鮫島の絡みがいい加減鬱陶しくなってきたのだ。
そして俺はゆっくりと自身のコマンドに目を移した。
――――――――――――――――――――――――――
選択時間:20秒
→ ●物理攻撃
●呪怨(じゅおん) ※MPが0のため使用不可
●身を守る
●アイテム ――――――――――――――――――――――――――
喋りすぎた。残り時間が全然ないじゃないか。
俺は悩みに悩んだ。力加減が難しいのだ。
もし、スキルで数万単位の数値を攻撃値に移したら、鮫島が即死してしまうだろう。
正直、鮫島を消したい憎んでいる。だがそうすれば俺は殺人犯で逮捕されてしまうのだ。
だから、時間をかけて鮫島に一矢報いる方法を考えようとしていた。
でも、3ターンという制限がついてしまったのだ。
困り果てた俺は頭の中にいるあの人に相談した。
(ダンフォールさん聞こえる?)
(何の用じゃ少年、儂は眠いんじゃけどな)
(ごめん。でも、相談したい事があるんだ)
(まぁええよ。言ってみるのじゃ)
(実は今、プレイヤーと戦闘してるんだけど、力加減が分からなくて……)
(なるほどな。確かに今の少年が、攻撃したら下手すると相手を殺しかねんな。ははは)
(笑い事じゃないですよ……)
(すまんすまん、じゃあ代わるか?)
(何を代わるんですか……)
(意識をじゃよ!)
俺はまだこの時知らなかった。
頭の中の老人に体を託す事が出来るなんて。
0
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~
軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。
そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。
クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。
一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる