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第4章過去との決別
43老練憑依
しおりを挟む俺の中に存在する意識。それはダンフォールと名乗る優しい老人の声だった。
俺より前にこの『奴隷』に選ばれた人物みたいらしい。もちろん異世界でね。
そんなダンフォールが意識を交換できるって言い出すもんだから驚いたよ。
意識を交換。つまり俺の体を貸す事ができるだなんて……。
混乱している俺にダンフォールが話しかけてきた。
(どうした少年よ。何か返事をしておくれ)
(ごめん。でも、意識を交換って交換している間の俺の意識はどうなるの?)
(あぁ、それはな。今の儂みたいに頭の中に移動するだけじゃよ)
(良かった。消えて無くなるわけじゃないんだね)
(ははは。心配しすぎじゃよ)
(で、俺はどうすればいいの?)
(簡単じゃ。目をつぶって意識を頭の中へ集中させるんじゃ)
(分かった……)
俺は彼の指示通りにゆっくりと目をつぶった。頭の中に意識を集中させていくんだ。
すると、どんどん意識がぼやけてくる。
気づくと視界が見えるだけで、他の体の機能が自分の意思で動かせなくなっていた。
(なんか不思議な感覚だな……)
ここにいると景色がいつもより鮮明に見える気がする。
初めての感覚に俺が言葉を失っているとダンフォールの方から声をかけてきた。
(少年よ。目の前の男に殺さない程度のダメージを与えればよいのじゃな)
(うん。そうだよ……本当は殺したいくらい憎いんだ。でも捕まってしまうから……)
俺がまた黙り込んでいるとダンフォールが会話を続けてきた。
(分かった。あと一つ聞きたいのじゃが)
(何ですか? ダンフォールさん)
(目の前の男。もしや『王』か?)
(はい。よく分かりましたね)
(あの装備は『王』にしか扱えんからな)
(ダンフォールさんって、博識なんですね)
(博識というよりも、儂は一度戦った事があるのじゃよ。あの装備を身につけた人物とな)
(……あなたは一体、何者なんですか?)
(ははは。また後で話すさ。今はコマンドを選択する時間が無いからな)
そう言うとダンフォール。いや、俺の体は『戦う』のコマンドを選択した。
そしてそのまま鮫島に向かって語りかけたんだ。
話し方はすっかりダンフォールの口調になっていたよ。鮫島が驚くほどにね。
「お主。名を何という?」
「はぁ? 死ぬのが怖すぎて頭おかしくなったのか。俺は鮫島だよ!」
「鮫島か。では鮫島殿。お主はその力で何がしたいのじゃ」
「おい! 蓮どうしたんだよ。喋り方おかしくなってねぇか?」
俺の異変に気付いた鮫島が突っかかってくると、ダンフォールは軽く笑って話を強引に戻した。
「ははは。この喋り方がおかしいか。そんな事どうでも良いじゃろ。早く質問に答えぬか」
「あ!? 王の力を使って何がしたいか? そんなの決まってるじゃねぇか。全てを俺のモノにするんだ!」
「全てを自分のモノにする? 浅はかな考えの持ち主じゃの」
「うっせえな! 奴隷のくせによ。お前は弱いから妬んでるだけだろぉ」
鮫島がダンフォールを弱い、と侮辱するとダンフォールは一旦言葉を止めてドスの効いた声で鮫島を睨みつけた。
「儂が弱いじゃと?」
「お、おいどうしたんだよ」
「……」
ダンフォールは自分が弱いと馬鹿にされて怒っているのだろうか。
俺が頭の中に語りかけても反応が無いほどだ。
(ダンフォールさんどうしたんですか?)
(……)
(ダンフォールさん!)
(……)
どうしたんだ?俺の呼びかけを一切無視するなんて。これまで一度も無かったのに。
相当怒っているのか?
俺がそう思った瞬間だった。スキルの発動を知らせる画面が出てきたのは。
そしてそれはある事を示していた。
【ALL CHANGE……】
【発動いたします】
【HPの値を、物理・魔法攻撃に……それぞれ100万ずつ移動させます】
そう。攻撃値をスキルで高めていたんだ。
これで分かったよ。ダンフォールが鮫島を殺す気だって。
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