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第4章過去との決別
46奴隷王の狙い
しおりを挟むまるで時が止まったみたいだ――。
ダンフォールさんが鮫島に100万のダメージを与えた時に一瞬だけ沈黙がおとずれた。
鮫島の驚く表情と周囲を囲むクラスメイトの視線、全てが永遠に感じられる。
ダンフォールさんはどんな表情をしていふんだろうな。
俺には自分の姿を見る事が出来ないから余計に気になる。
そう思っているとダンフォールさんが鮫島に向かって話し出したんだ。ゆっくりと冷静に。
「鮫島殿よ。期待されて無い者の一撃は重いか?」
「お前本当に蓮かよ……」
「答えになっておらんぞ」
「うるせぇ! 重いとか軽いとかじゃねぇ!! なんで、なんでお前の攻撃で100万もダメージを受けるんだよぉ!」
冷静なダンフォールさんとは対照的に鮫島の声は動揺していた。いや、声だけではない。
鮫島は怒りと驚きでダンフォールさんに近づいて胸ぐらを掴んできた。
しかしその手は震えている。恐ろしいのだろう?HPが0になった場合どうなるのかってさ。
まぁ、死ぬって事は薄々感じているはずだけど。
自分は俺を殺すつもりだった癖にさ。鮫島には殺される覚悟がないみたいだ。
鮫島は恐怖に怯える表情をしていたよ。
鮫島もこんな表情するんだな。いつもの自信に満ちた表情からは考えられない程崩れている。
クラスメイト達も驚いているんじゃないかな。ほら、今だってザワザワと教室がうるさくなっている。
「ねぇ。今の聞いた? 鮫島君が100万のダメージを受けたって」
「嘘でしょ~。私達を楽しませる為の演技なんじゃ」
「でもさ鮫島君の表情見て。あれが演技に見える?」
「確かに。蓮の胸ぐらまで掴んじゃって。必死だね」
耳を澄ましているとどうやらクラスメイト達は、ダンフォールさんと鮫島の会話をしっかり聞いていたみたいだ。
鮫島が100万のダメージを受けた事を知っている。
「本当に100万のダメージを受けたのかな」
「HPが0になったらどうなるんだろう?」
「知らない。死ぬんじゃない?」
「へぇそうなんだ。ま、いいか。私達には関係ないし」
何処からともなく聞こえるクラスメイト達の声。
どうやら彼らは、戦闘には興味はあるが俺と鮫島には興味が無いらしい。
ただの暇潰し感覚で群がっているようだ。
俺が虐められている時の反応と全く同じ。自分達には関係無いと思って呑気にお喋りしてる。
まぁ、俺もそっち側だったら同じ様にしてたかもしれないけどさ。
俺はそう思いながら鮫島に視線を移した。するとダンフォールさんが再び鮫島に語りかけていた。
「儂は少年であって少年ではないのだよ。落ち着け鮫島よ」
「何言ってんだよ」
「全く。王ともあろう者が情けない。これからどうやって化物達と戦うつもりだ?」
「これからどうやって……? ふざけるな!! HPを0にしやがって。俺に未来なんか残されてねぇじゃねぇか!」
「何を言っとる。お主はまだ死んでおらぬぞ」
「は? お前の方が何言って」
「……」
「おい! まだ話はおわってねぇぞ!……」
ダンフォールさんはそう言って鮫島の手を払い除けて元いた場所に歩き出した。鮫島の問いに答えずに。
でも大丈夫。代わりに機械音がダンフォールさんの言葉の意味を伝えてくれたから。
〈『奴隷の邪気』により100万のダメージを『鮫島の防具』へ移動。『胴の装備』を破壊します〉
【パリィン!】
ガラスが砕ける様な音。
それが鳴ると、鮫島の装備していたマントは粉々に砕けて消えた。
それを見るクラスメイト達や鮫島の表情は笑えたよ。
目と口を大きく開けて固まっている。
まぁ、俺もそれくらいびっくりしたけどさ。
でもこれで分かった。
ダンフォールさんは、最初から鮫島を殺す気なんか無かったんだ。
鮫島に力の差を見せつけて勝負を辞めさせるつもりなんだと思う。
そして、それは実際に上手くいったかな。
鮫島は力なく崩れ落ちて、クラスメイトがざわつき出したんだ。
皆んなが驚きの表情で俺を見てる。改めて感じたよ。
俺は期待されてなかったんだなぁって。
火憐だけは笑顔で俺の事を見つめてくれたけどね。
その後にダンフォールさんが頭の中にある意識。俺に話しかけてきた。自信に満ちた声で。
でも、最初から説明してくれよって思ったよ。口には出さなかったけど。
そう。ダンフォールさんは優しい声でこう言ったんだ。
(どうじゃ少年よ。殺さなかったぞ)
って。
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