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第4章過去との決別
48理想の限界
しおりを挟む俺は画面に表示される数字を見つめていた。
その数字は俺の余命宣告だ――。
『現在・2ターン目前半、プレイヤー鮫島』
『王の裁定発動まで……後2ターン』
そう。鮫島にかけられた魔法『王の裁定』この魔法のせいで、俺は3ターン目が終わればHPが0になるらしい。
要するに死ぬって事だ。
鮫島は俺の目の前でニヤニヤと顔を歪ませている。
俺の力を本当にイカサマだと信じているようだ。俺を指差して悪魔のように笑う。
「ふはは。攻撃値をイカサマしても、防御値まではイカサマできねぇだろ? 最高の痛みを教えてやるよ」
「……」
「恐怖で言葉も出ねぇか」
「違うよ」
「じゃあ何だよ! またイカサマをしようってのか?」
「それも違う。俺は呆れているんだよ。現実を受け入れられない鮫島君にね」
「また、意味分かんねえ事を言いやがって」
「……」
俺が黙り込んでいる理由はシンプルだ。言い訳ばかり言う鮫島がとても醜かったからさ。
俺、今どんな顔をしてるんだろうな。力の無いダラっとした表情かもしれない。
鮫島の言い訳をする仕草を見て思ったんだ。
こんな奴に虐められてきたのかって。
実際、鮫島と戦ってみて分かった事がある。
鮫島は強くも何ともないんだ。精神が特にね。
彼は自分の理想の中でしか生きられない可哀想な奴なんだって、今初めて気づいたよ。
これまで虐めてきた相手に敗北しそうな現実を受け入れられない鮫島。
俺の事をイカサマ呼ばわりまでしてさ。全く……意味分からない事を言ってるのはどっちだよ。
俺は冷ややかな視線で鮫島を見つめていた。
いや、俺だけじゃない。クラスメイト達もだ。鮫島に対する目つきが変わっている。
これまで雰囲気で鮫島の事を特別扱いしていた彼らだが、今では恐怖の対象でしかないようだ。
鮫島を称える声はもう無い。
教室内の静けさがそれを物語る。
本当に静かな空間。まるで戦闘など起こっていないかの様な静寂。
それを遮(さえぎ)るのは機械音だった。ゲームの進行を続ける為に淡々とターンを進める。
〈プレイヤー鮫島の攻撃『鉄の棺桶』を発動します〉
アイアン・メイデン。聞いた事がある。
確か、中世ヨーロッパにおいて使われた拷問具。
鉄の棺桶の内部に無数の刃が備え付けられている。だっけな。
俺は何となくではあったが、これから何が起こるかを理解することが出来た。
でも自然と冷静さを保てていたんだ。スキルで防御値を100万にしたからな。
その冷静な目で鮫島を見ると、彼は興奮を抑えられない様だ。
そんなに俺を串刺しにしたいんだろうか?悪魔の様な微笑みで語りかけてきた。
「ははははは。お前が悪いんだぞ? 痛みでショック死するなよ?」
鮫島の病気じみた笑顔が俺を捉えている。
でも、もう鮫島に対して何の感情も抱かない俺は、めんどくさそうに手でクイッ、と挑発した。
「早くやれよ」
「チッ! そういう態度が気に入らねぇんだよ。『鉄の棺桶』! その不届き者を串刺しにしろ!!」
鮫島が叫んだその瞬間。
【ガバァッ……】
大きな地響きと共に鉄の棺桶が俺の背後に現れた。
開かれた棺桶の内部には無数の巨大な針が備え付けられている。
ここに閉じ込められれば身体中が穴だらけになる。そんな構造だ。
そう思っていると俺は鉄の棺桶に吸い込まれ、閉じ込められた。
【ガチャッ!!!】
棺桶の閉まる音が教室内に響いた。鮫島の笑い声も響いている。
あと火憐の悲鳴も。
俺は驚いたね。皆、俺が串刺しにされたって思い込んでるんだから。
でもこんなもの俺には効かない。巨大な針も俺に触れれば逆に壊れてしまう。
【バキッバキッ!】
俺は閉じ込められた後、棺桶の隙間を無理矢理こじ開けようとした。勿論、この時点で棺桶内の針は砕けて全て折れている。
今の俺の皮膚は鉄なんかじゃ貫けないから。
【バキンッッ!】
俺が勢いよく棺桶を左右に広げると、鉄製の留め具が外れて完全に棺桶が開いた。
やっぱり力加減が難しい。
壊すつもりは無かったんだけど鉄の棺桶を壊してしまったんだ。
「壊しちゃったか……」
そのままゆっくりと外に出ると、そこには驚きに満ちた鮫島の顔があったよ。
この時には、流石の鮫島も俺には勝てないって気づいたみたいだ。向こうからお願いしてきたよ。
「ごめん蓮くん……」
もう戦いを止めないか?――。
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