チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

文字の大きさ
50 / 123
第4章過去との決別

49命乞い

しおりを挟む
 

 鮫島は俺の強さを受け入れられなかった――。
 強大な力を目の当たりにしてもイカサマだと馬鹿にして愚かにも攻撃をしてきたんだ。
 勿論。俺には全く効かなかったけどね。


 俺が『鉄の棺桶アイアン・メイデン』を壊して外に出た後、目の前にいたのはいつもと違う鮫島だった。
 声を震わせてこう言っている。


「もう戦いをやめないか?」ってさ。


 最初は顔をクシャクシャにしながら俺を見ているだけだった。
 しかし、俺が無視していると地面に手をつけて頭まで擦り付け始めた。まるで土下座のような格好だ。


「この通りだ。頼む!」
「えっ」


 当然かもしれないが土下座を目にするのは初めてだ。
 ましてやあの鮫島が土下座するなんて全く信じられない。
 俺は驚いたよ。思わず体を前に出して声を出すほどに。


「鮫島君。そこまでしなくていいよ」
「すまない。俺が馬鹿だった。お前がこんなに強かったなんて……」
「謝らなくてもいいよ。もともと鮫島君との戦闘はお互いに無傷のまま終わらせようと思ってたからさ」
「蓮……」


 鮫島はそう言うと頭を上げて俺を見つめた。
 その瞳はまるで、無垢な少年のように透き通っている。
 更生したのかと思わせるようなそんな瞳だ。
 鮫島の反応に、俺は嬉しくなって顔をほころばせながら会話を続けた。


「反省してる?」
「えっ……」
「俺を虐めてた事だよ。今、鮫島君が大きな力を前に恐れているようにさ。俺も怖かったんだ」


 俺の言葉に言葉を詰まらせる鮫島。彼は自らの目を手で覆って反省しているようだ。
 肩を震わせながら会話を続けた。


「……そうだったのか。うん。その気持ちはこっち側になって初めて分かったよ」
「じゃあ………」
「すまなかった。蓮の事を虐めてたこと謝るよ。この通りだ」
「……」


 鮫島は謝罪した後も、再び床に頭をこすりつけて俺に許しを請うた。
 その光景は異常だ。クラスメイト達も口に手を当てて驚いている。
 あのプライドの高い鮫島が土下座をして自らの非を認めているなんて信じられないだろう。
 正直、俺も信じられなかったくらいだ。
 しばらく沈黙が続くと鮫島の方から口を開いた。


「蓮。さっき無傷のまま戦いを終わらせたいって言ったよな?」
「うん。そうだけど」
「俺はその方法を知っているんだ。それぞれが『逃げる』のコマンドを選べば、戦闘が終了するはず」
「……」
「だからこのターン。蓮は『逃げる』を選択してくれ。俺は蓮を信じてるから」
「……あぁ」


 鮫島の目を見ると嘘をついているようには見えなかったんだ。
 表情も悪魔のような笑顔から真剣なモノへと変わっている。
 そんな彼を見ていると無条件に信じてあげたくなるものだ。しかし、無闇に信じる事は出来ない。
 俺は目を瞑ってダンフォールさんに語りかけた。


(ダンフォールさんに聞きたい事があるんですが)
(なんじゃ少年よ)
(プレイヤー同士の戦闘って互いに『逃げる』を選択すれば強制終了されるんですか?)
(そのはずじゃ。少なくとも儂のいた世界ではそうじゃった)
(そうなんですか! ありがとうございます!!)


 俺が明るい調子でダンフォールさんに返すと、彼は不機嫌そうな口調で話を続けた。


(嬉しそうじゃな)
(はい! 鮫島君が更生してくれたみたいなので)
(更生か。あっ。そう言えばいい忘れとった事がある)
(何ですか?)
(『王の裁定ジャッジメント』が発動しておるじゃろ? あれはが3ターン過ぎれば発動するで気をつけてくれ)
(って事は、つまり、このターンが俺の実質的な最後のターンというわけですか)


 俺が心配そうに尋ねるとダンフォールは笑いながら答えてくれた。


(ははは。いやそう言うわけではないがな。もし王の裁定ジャッジメントが発動されたなら儂に代わればいい)
(ん? はい)


 彼との会話が終了した後に俺は後ろにある大きな首吊り台を眺めた。
 もしこの魔法が発動すれば俺のHPが0になる。
 でも、ダンフォールさんの言葉を聞くとそうなっても問題ないらしいが。
 だったら俺は迷う事なく『逃げる』を選択した。


 ありえない事だが鮫島が裏切ったとしても、俺の命は保証されるわけだからな。
 俺が選択を終わらせると機械音が響き出だした。


〈プレイヤー『蓮』は『逃げる』を選択しました。プレイヤー『鮫島』は『同意』か『拒絶』のどちらかを選んでください〉


 それを聞いている鮫島の顔は実に笑顔だったよ。
 悪魔のような笑顔ではなく、無垢な少年のような笑顔で思わず俺も微笑んでしまうような笑顔だった。
 この機械音を聞いた鮫島は言葉を続けた。


「ありがとう蓮。俺の事を信じてくれて!」
「いや、いいよ。これまでの事を反省してくれるって言うんだから」


 でも、この後違和感を感じたんだ。
   俺が精一杯の笑顔でそう答えると、鮫島は急に口に手を抑えて笑い出したからね。
 何がおかしいのか分からないが、腹を抱えて笑っている。という表現が相応しい程に。


「ふふ。くはははははは!!!」
「どうしたの。鮫島君?」
「ほんとお前は優しいなぁ。だからいつまでも虐められるんだよぉ」
「え?……」


 鮫島の表情は無垢な笑顔のままだった。
 恐らく彼は本心から言っているのであろう。悪意を一切感じない。
 だからこそ、始めはあいつの言っている事が理解できなかったんだ。


 そんな鮫島を見ている俺の表情はどんなものだったのだろうか?
 正直よく分からない。
 ただ怒っていない事は確かなんだ、単にじっと鮫島を見つめていたよ。声も出さずにね。
 もうそんな次元じゃ無いんだ。


 そしてトドメは機械音だ。俺は思い知らされたよ。また鮫島は俺の事を裏切ったんだって。
   そう。機械音は俺にこう告げたんだ。


〈プレイヤー『鮫島』は『拒絶』を選択しました。ゲームを続行してください〉


   ってさ。
 機械音の知らせる無情の現実。それを聞いて俺の何かが崩れた。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...