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第4章過去との決別
50殺意と覚悟
しおりを挟む鮫島は『拒絶』を選んだ――。
つまりあいつはゲームの続行を望んだんだ。
土下座のような事までして俺に許しを請うたのに。反省などしていなかった。
俺はダンジョンの時と同じく裏切られたのだ。
この鮫島のターンが終われば『王の裁定』が発動されて俺のHPは0になるらしい。
鮫島は時間稼ぎの為だけに。
俺が『攻撃する』を選択しないように。
土下座までして反省するフリをしていたのだ。
呆れたよ。
俺を虐めていた事も謝ってくれたけど。あれは全部嘘だったんだ。
それに人を信じる事が虐められる理由なんだよってバカにされた。学習能力がないってね。
目の前にいる鮫島は爽やかな笑顔で語りかけてきた。罪悪感のカケラもない軽い口調で。
「蓮! お前は本当にお人好しだな」
「……」
「無視か? ははは。お人好しらしく、そこは笑って返してくれよ。そんな中途半端だから虐められるんだぞ?」
「……」
「おいおい。まだ無視かよ。いいのか? 後ろにいる松尾に別れの言葉を言わないと。最期の挨拶だぞ? ごめんなぁ松尾! 王子様を殺しちまうわ!!」
鮫島が会話に火憐の名前を絡めた時、俺はようやく声を発する事ができた。
「鮫島。あれは嘘だったの?」
「やっと喋ったか。嘘って何の事だ?」
「さっき虐められている者の気持ちが分かったって……」
「あぁ。あれ? 嘘だよぉ! 分かるわけねぇだろ! 虫ケラの気持ちなんてよお!! お前何考えてんだ。俺は王でお前は奴隷!!! 気持ちなんか分かり合えるわけねぇだろ!」
「そっか」
「なんだよその返事。まぁ、いい。そう落ち込むな、王の施しを与えよう。この60秒間はお前にくれてやる。コマンドを選択せずに待ってやるよ。感謝しろ」
「……」
あいつのペラペラとした言葉が終わると俺は深呼吸をした。
鮫島は本当に変わらないな。そう思いながら俺は後ろを振り向いて歩いたんだ。
さっきから聞こえている。すすり泣く声の元に近づいために。
勿論。すすり泣く声の持ち主は火憐だ。
鮫島と俺の雰囲気や、3ターンが経っている事から俺が死ぬと思い込んでいるんだろう。
最初のターンで彼女に説明したからな。
『王の裁定』について少しだけ。
俺は机にうつ伏せになって泣いている火憐に話しかけた。ゆっくりと優しい口調で。
「火憐大丈夫だよ。俺は死なないから」
「何が大丈夫なのよ」
「信じてくれ。後で詳しく説明するからさ」
「いつもよ。後で、後でって」
「ごめん。でも信じてくれ」
「……」
俺が声をかけても、火憐は最後まで顔を机に伏せたままだった。
泣いている所を見られたくないのだろうか。
仕方ない。そう思いながら火憐に背を向けて歩き始めたその時だった。
「蓮! 絶対に後で説明しなさいよ」
火憐が大きな声で俺に向かって声を発したのだ。それに対する俺の答えはシンプルだった。
「うん」
ただ、火憐の言葉に対して俺は振り向かなかった。
俺は鮫島をじっと見つめたまま心を落ち着かせていたんだ。
ダンフォールさんが大丈夫って言っても、HPが0になるって聞かされると怖いからね。
そのまま目を瞑って深呼吸をしていると鮫島の方から声をかけてきたよ。もう時間だぞって。
けど、彼の挑発に疲れていたから無視した。
ここまで来るとただ鬱陶しいだけだ。
「蓮。最期のお別れは済んだか? お姫様とのよぉ!」
「……」
それにダンフォールさんに全てを任せるつもりだったからね。
(ダンフォールさん)
(もう、時間か少年よ。意識を代わろう)
(お願いします。あと、聞きたいことがあるんですが)
(何じゃ?)
(『王の裁定』を防ぎきった後に、あいつを消す事は出来ませんか?……)
(ふむ。少年も思い切った事を言うのう。まぁ任せておけ、儂も思っていたのじゃ。鮫島という人物には地獄を見てもらおうとな)
(え?……それはどういう)
(安心するのじゃ。跡形もなくあやつを消してやろう)
そう言うとダンフォールさんは俺の体を操ってスキルを発動させたんだ。
【……ALL CHANGE】
【発動します】
【HPの値からMPに1000移動します】
(え?……)
それを聞いて俺は疑問に思った。
奴隷は魔法を使えないのに、なんでMPを増やしたのかって。
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