チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

文字の大きさ
52 / 123
第4章過去との決別

51最期のあがき

しおりを挟む
 

   目の前には。
 満面の笑みを浮かべる鮫島がいる――。
 俺を殺せると確信しているのだろう。笑顔のまま話しかけてきた。
 でも残念。目の前にいるのは俺じゃない。俺の体を操るダンフォールさんなのだから。


「奴隷、最期に言い残すことは無いかぁ?」
「それは、儂のセリフじゃよ」
「あぁ? お前また喋り方おかしくなってんなぁ」
「元からこの喋り方じゃ」


 鮫島は少し苦い顔をした後にまた大きな声で会話を続けた。


「まぁいいや! どうせお前はすぐに死ぬんだからな!! ははははははは」
「哀れな王だな」
「はぁ! 負け惜しみのつもりか? お前は今から死ぬんだよぉ! その首吊り台でな!!」
「……」


 鮫島が笑いながら指さした先には首吊り台があった。
 木で作られた首吊り台。
 ギィギィとした不愉快な音をたてているは教室を突き抜ける程大きいが、作りは簡素であり、てっぺんには輪っか状のロープが括(くく)り付けられている。
 そう。俺の首を縛るためのモノだ。


 視界に首吊り台が入るとやはり弱気になってしまう。


 で首を吊られるのか。そう思いながら何度も何度も死ぬところを想像してしまうんだ。


 でもそうこう考えているうちに機械音が聞こえた。
 どうやら鮫島の3ターン目が終わったらしい。
 いよいよだ。機械音が『王の裁定ジャッジメント』の発動を告げる。


〈『鮫島』のターンが3回終了しましたので『王の裁定ジャッジメント』を発動いたします〉


【ギィィィ……】


 機械音の後はすぐだった。
 首吊り台の上部がゆっくりと折れ曲り俺の首にロープをかける。
 魔力のせいなのか?ダンフォールさんは動けないまま身を任せた。
 正直、意識だけの俺にとってロープの感触は感じない。
 ただ自分の首にロープがかかっている光景を見ているだけだ。


 一方、そんな俺とは違ってダンフォールさんは鮫島に声をかけていた。
 まるで『王の裁定ジャッジメント』など取るに足らない。そう言わんばかりの態度だ。


「鮫島よ。後悔はないのじゃな?」
「何を今更後悔なんてした事ねぇよ!!」
「そうか。分かった」
「気持ち悪いな! 変な質問しやがって! お前は、今から死ぬの!! そんな事聞いてどうするのだよ。ははははは」
「……」


 教室内に響き渡る鮫島の笑い声と首吊り台のしなる音。
 まるで中世の処刑シーンのようだ。
 いや、観客役のクラスメイト達は歓喜の声などあげていないから中世の処刑シーンと多少は異なるか。


 後ろにいる火憐に至っては心配そうな顔をしながらこっちを見ている、今にも泣きそうな顔で。
 各々(おのおの)が様々な感情で首吊り台を見つめる中で遂に刑が執行された。
 あれは本当に一瞬だった。って思うよ。


【ギィィィィィィィィ……ガッ!!!!】


 首吊り台の上部が勢いよく上がって固定される。
 そう。気づいたら俺の体は宙に浮いていた。
 それに、勢いよく上がったせいで俺の体はまるで振り子のようにブラブラと左右に揺れていた。


 しかし――。


 それでもなお俺の意識はしっかりとあった。
 火憐の鳴き声とクラスメイト達の悲鳴、鮫島の笑い声がちゃんと聞こえたんだ。
 鮫島に至っては俺を指差しながら火憐に向かってこう言ってたよ。


「お前の王子様をてるてる坊主にしてやったぞ!!」って。

 それを聞いた火憐は大声をあげて泣き出していたね。机に顔を伏せて。
 そんな姿を見るとすぐにでも大丈夫。って叫びたくなるんだけど、ダンフォールさんは体をロープに任せて本当に死んだような事するんだから。全く………。


 でもしょうがないんだけどね。
 きっと力が出ないんだよ。俺にも見えたんだ。首吊り台が動く前にダンフォールさんがスキルを発動していた所が。
 『HP』を全て、『知力』に移していた瞬間がね。


 要するにダンフォールさんは自分から仮死状態を作り出して、『王の裁定ジャッジメント』が終わったらすぐにHPを戻すつもりだったんだ。
 実際、機械音が話し終わった瞬間にダンフォールさんはスキルを発動していたよ。


〈『王の裁定ジャッジメント』の効果により、『蓮』のHPを0にしました〉


 そう。本当に同時だったんだ。


ALL CHANGEオール・チェンジ発動いたします】
【『知力』を全て『HP』に移動させます】


 機械音が終わると同時に首吊り台が消えた。
 本来ならそのまま俺は力なく床に叩きつけられるはずなんだけど、死んでないからね。


【シュタッ】


 ダンフォールさんはしっかりと着地したんだ。鮫島を睨みながらね。


「やっと終わったかな? 鮫島殿」
「お、お前……何で生きてんだよ」


 驚く鮫島。ざわつくクラスメイト達、火憐は机に顔を伏せたまま泣いていた。
 一言で言うとみんな驚いていたよ。
 鮫島に至っては俺の事を幽霊を見ているみたいに怖がっていたんだ。
 後ずさりしながらね。


 そんな中でダンフォールさんは話しかけてきた。
 最終確認ってやつかな?鮫島を地獄に落とす為の。


(少年よいいな?)
(はい。鮫島君には地獄へ落ちてもらいます)
(なるほど。少年は恐ろしいな……『呪怨』を昇華させて、あいつの存在ごと消してやろう)
(……お願いします)
(ふっ。分かった)


 ダンフォールさんの微(かす)かな笑い声の後、いつものあの画面が俺の目の前に現れた。


〈コマンドを選択してください〉
――――――――――――――――――――――――――
   選択時間:1分
→ ●戦う
  ●逃げる ――――――――――――――――――――――――――
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...