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第4章過去との決別
51最期のあがき
しおりを挟む目の前には。
満面の笑みを浮かべる鮫島がいる――。
俺を殺せると確信しているのだろう。笑顔のまま話しかけてきた。
でも残念。目の前にいるのは俺じゃない。俺の体を操るダンフォールさんなのだから。
「奴隷、最期に言い残すことは無いかぁ?」
「それは、儂のセリフじゃよ」
「あぁ? お前また喋り方おかしくなってんなぁ」
「元からこの喋り方じゃ」
鮫島は少し苦い顔をした後にまた大きな声で会話を続けた。
「まぁいいや! どうせお前はすぐに死ぬんだからな!! ははははははは」
「哀れな王だな」
「はぁ! 負け惜しみのつもりか? お前は今から死ぬんだよぉ! その首吊り台でな!!」
「……」
鮫島が笑いながら指さした先には首吊り台があった。
木で作られた首吊り台。
ギィギィとした不愉快な音をたてているそれは教室を突き抜ける程大きいが、作りは簡素であり、てっぺんには輪っか状のロープが括(くく)り付けられている。
そう。俺の首を縛るためのモノだ。
視界に首吊り台が入るとやはり弱気になってしまう。
これで首を吊られるのか。そう思いながら何度も何度も死ぬところを想像してしまうんだ。
でもそうこう考えているうちに機械音が聞こえた。
どうやら鮫島の3ターン目が終わったらしい。
いよいよだ。機械音が『王の裁定』の発動を告げる。
〈『鮫島』のターンが3回終了しましたので『王の裁定』を発動いたします〉
【ギィィィ……】
機械音の後はすぐだった。
首吊り台の上部がゆっくりと折れ曲り俺の首にロープをかける。
魔力のせいなのか?ダンフォールさんは動けないまま身を任せた。
正直、意識だけの俺にとってロープの感触は感じない。
ただ自分の首にロープがかかっている光景を見ているだけだ。
一方、そんな俺とは違ってダンフォールさんは鮫島に声をかけていた。
まるで『王の裁定』など取るに足らない。そう言わんばかりの態度だ。
「鮫島よ。後悔はないのじゃな?」
「何を今更後悔なんてした事ねぇよ!!」
「そうか。分かった」
「気持ち悪いな! 変な質問しやがって! お前は、今から死ぬの!! そんな事聞いてどうするのだよ。ははははは」
「……」
教室内に響き渡る鮫島の笑い声と首吊り台のしなる音。
まるで中世の処刑シーンのようだ。
いや、観客役のクラスメイト達は歓喜の声などあげていないから中世の処刑シーンと多少は異なるか。
後ろにいる火憐に至っては心配そうな顔をしながらこっちを見ている、今にも泣きそうな顔で。
各々(おのおの)が様々な感情で首吊り台を見つめる中で遂に刑が執行された。
あれは本当に一瞬だった。って思うよ。
【ギィィィィィィィィ……ガッ!!!!】
首吊り台の上部が勢いよく上がって固定される。
そう。気づいたら俺の体は宙に浮いていた。
それに、勢いよく上がったせいで俺の体はまるで振り子のようにブラブラと左右に揺れていた。
しかし――。
それでもなお俺の意識はしっかりとあった。
火憐の鳴き声とクラスメイト達の悲鳴、鮫島の笑い声がちゃんと聞こえたんだ。
鮫島に至っては俺を指差しながら火憐に向かってこう言ってたよ。
「お前の王子様をてるてる坊主にしてやったぞ!!」って。
それを聞いた火憐は大声をあげて泣き出していたね。机に顔を伏せて。
そんな姿を見るとすぐにでも大丈夫。って叫びたくなるんだけど、ダンフォールさんは体をロープに任せて本当に死んだような事するんだから。全く………。
でもしょうがないんだけどね。
きっと力が出ないんだよ。俺にも見えたんだ。首吊り台が動く前にダンフォールさんがスキルを発動していた所が。
『HP』を全て、『知力』に移していた瞬間がね。
要するにダンフォールさんは自分から仮死状態を作り出して、『王の裁定』が終わったらすぐにHPを戻すつもりだったんだ。
実際、機械音が話し終わった瞬間にダンフォールさんはスキルを発動していたよ。
〈『王の裁定』の効果により、『蓮』のHPを0にしました〉
そう。本当に同時だったんだ。
【ALL CHANGE発動いたします】
【『知力』を全て『HP』に移動させます】
機械音が終わると同時に首吊り台が消えた。
本来ならそのまま俺は力なく床に叩きつけられるはずなんだけど、死んでないからね。
【シュタッ】
ダンフォールさんはしっかりと着地したんだ。鮫島を睨みながらね。
「やっと終わったかな? 鮫島殿」
「お、お前……何で生きてんだよ」
驚く鮫島。ざわつくクラスメイト達、火憐は机に顔を伏せたまま泣いていた。
一言で言うとみんな驚いていたよ。
鮫島に至っては俺の事を幽霊を見ているみたいに怖がっていたんだ。
後ずさりしながらね。
そんな中でダンフォールさんは話しかけてきた。
最終確認ってやつかな?鮫島を地獄に落とす為の。
(少年よいいな?)
(はい。鮫島君には地獄へ落ちてもらいます)
(なるほど。少年は恐ろしいな……『呪怨』を昇華させて、あいつの存在ごと消してやろう)
(……お願いします)
(ふっ。分かった)
ダンフォールさんの微(かす)かな笑い声の後、いつものあの画面が俺の目の前に現れた。
〈コマンドを選択してください〉
――――――――――――――――――――――――――
選択時間:1分
→ ●戦う
●逃げる ――――――――――――――――――――――――――
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