チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

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第5章崩れゆく世界

60 サムライ

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 俺は自衛官に怪訝(けげん)な顔をされながらも、何とかダンジョン攻略部隊に参加する事が出来た。
 キングを付けるという条件付きで。


 そして、そのキングとはやはりそうだった。
 俺と火憐が振り分けられた第1班にはキングである氷華がいたのだ。
 彼女はダンジョンの時と同じく、その小柄な体を全身鎧に身を包んで大剣を地面に突き刺している。
 自身の胸元まで届く大剣を。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 氷華の鎧姿を興奮した眼(まな)差(ざ)しで見つめるグリーシャさん。
 その強い眼差しは氷華を気づかせたんだ。
 氷華はこちらに向かって振り向くと手を振って声をかけてきた。



「蓮じゃん。ダンジョン攻略部隊に参加するの?」
「うん。ちょっと待ってて! そっちに近づくから!」


 俺が大声をあげると不機嫌そうな火憐と違って、グリーシャさんはウキウキな様子で声をかけてきた。
 彼女の目はまるで少年のようだった。


「市谷(いちがや)。あの人と知り合いデスカ?」
「あいつとは、幼馴染なんですよ」
「オサナナジミ?」
「小さい頃から仲が良いって事です。多分」


 俺の答えにグリーシャさんは少し戸惑った顔をしていたが、苦笑いをして答えてくれた。


「Oh! なんとなく分かりマシタ!」
「ははは。じゃあ、近くまで行きましょう。二人とも付いてきてください」
「ハーイ! 付いていきマース!」
「もう、しょうがないわね」


 俺と火憐とグリーシャさんは駆け足で氷華の元へ向かった。
 といっても離れているわけでもないし、他の班も番号順に横一列に並べられているので、氷華の元へはすぐに辿り着くんだけどね。


「おーい氷華。今日もその鎧をつけてきたんだな。ははは」


【ガシャッ】


「もう~からかわないでよ~」


 氷華は頭に装備されている兜(かぶと)を脇に抱(かか)えるとはにかんで応えた。
 突然、姿を見せた鎧の中身。


 まさか、女子高生が全身鎧に身を包んでいるとは思えないだろう。
 他の参加者達から、お~、という響(どよ)めきが聞こえる。


 いや、驚いているのは後ろに付いてきたグリーシャさんも同じようだ。
 俺を押しのけて氷華の前まで出てきた。


「アメージング! 騎士の中身は可愛い女の子だったんデスネ~」
「あはは……ちょっと蓮。この人、誰なのよ?」
「さっき会ったんだ。彼女はグリーシャさん、2班に振り分けられた商人《マーシャント》なんだ」
「そうデース! グリーシャと言いマース!」 

「よ……よろしくお願いします。って……蓮は何班になったの?」
「俺は一班だよ。よろしくね」
「なんか照れるわね」


 三人で話していると少し後ろの方から火憐の視線を感じた。
 俺に、火憐の事を氷華に伝えんと言わんばかりの殺気だ。


「あ、あのさ氷華。実は一班にはもう一人仲間がいるんだ」
「もしかして、火憐ちゃんのこと?」


 氷華はもう既に火憐の存在に気づいていたようだ。
 火憐は不機嫌そうな顔のまま会釈するとこちらに近づいてきた。


「あなた。蓮の幼馴染だからって調子に乗らないでよね?」
「え、なんでそんなに機嫌わるいのよ」


 詰め寄る火憐にグリーシャさんは何か勘違いをしたらしい。


「私も混ぜてくだサーイ!」


 バチバチしている火憐と氷華、それにはしゃぐグリーシャさん。
 そんな微笑(ほほえ)ましい光景を俺は笑いながら見ていた。


 平和だな。
 このままダンジョンなんかに入らずに、グリーシャさんに日本の観光案内したい。って思うくらいほのぼのとしたよ。


 でも、外からの一言が現実を突きつけるんだ。この場にいるのは俺達4人だけじゃないって。
 同じ高校生くらいの男の声が、俺のすぐ後ろから近づいてきたんだ。
 怒りに震えた声が。


「お前の制服、この馬鹿高校の生徒だな」
「なんだと?」


 男の挑発するような言動に俺は急いで振り返ったよ。文句を言おうと思ってね。
 でも、文句を言う余裕なんかなかった。俺は刀を突きつけられていたんだ。


【カチャッ】

「うっ……」


「おっと……動くなよ。首を落とすぞ」


 俺の首元までつきつけられた日本刀。
 その刀の主は武家の着物のような装備を身に纏(まと)い、俺を睨(にら)みつけていた。
 そして、声を荒げながら俺に向かって怒りをぶつけてきたんだ。刀を持つ手を震わせてね。


「なぜ貴様が氷華様の班に。僕がそこにいるべきなんだぁ!」
「ん? 氷華様……。お前氷華の知り合いか」


 俺は意味が分からなかった。
 氷華の知り合いに刀を突きつけられる程の理由なんて無いはずだからだ。
 しかも、そいつは氷華の名前を口にすると大声を出す。


「氷華様を呼び捨てにするなぁ!! 氷華様は、我が超進学校のアイドルにあらせられるのだぞぉ!」
「アイドル?」


 俺は訳が分からず、後ろにいる氷華の方を向いた。
 恐らくこの男の発言からして、氷華と同じ高校なんだと思うけど。


 俺の聞き間違いかな?
 本当に氷華がアイドルをやっているとは思わないけど面白そうだしからかってみるか。
 そう思って俺は少しニヤけながら氷華に質問した。


「氷華。お前学校でアイドルやってるの?」
「ちがうわよ」


 表情を隠す為に地面を向いている氷華。
 だがその頰(ほお)は赤く火照(ほて)っていて、照れてる様子は隠せていない。
 地面を向いたまま彼女はこう言ったんだ。


「もう、やめてって言ったでしょ西園寺さいおんじ君! 私のファンクラブは作らないでって!!」
「「え?……」」


 氷華の発言に静まりかえるグラウンド。その中で唯一、声を出してはしゃいでいたのはグリーシャさんだった。
 西園寺という男を見ながら――。


「Oh! サムライじゃないデスカ!」


 と目を輝かせていた。
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