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第6章過去転移
119竜王の声
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・名称『竜王の大剣』
・条件『【奴隷】に装備可能』
・条件『レベル100以上に装備可能』
・効果『不明』
・説明『人間達によって狩られた悲しき竜王の骨剣。
竜王は人間達の非道な罠によって葬られた。
皮肉にもこの大剣を操れるのは、竜王討伐の犠牲
になった民の末裔のみだ。』
――――――――――――――――――――――――――
効果が不明って……。
そんなこといいのかよ。こんなバカでかい大剣だから攻撃値や防御値が跳ね上がってもいいと思うけど。
この武具を装備したら何か変わるのか?
蓮は驚きを隠せない。
目を大きく開いてケースにしっかりと収まった竜王の大剣を見つめている。
骨で出来た刀身は、長い年月に晒されてきたのだろう。真っ黒な色をしており見ている者がのみこまれそうになる。
「どうした少年よ? この竜王の大剣はワシが若かった頃に手に入れたモノじゃ。効果も分からんし、何より奴隷しか装備できん」
「効果が不明ってことあるんですね」
「いや、ワシも他には見たことがない。もともと奴隷用の武具は特殊なモノが多いのじゃがな」
「なるほど……。少し、触ってみてもいいですか?」
「ええぞ」
老人は腰に手を当てて、ニヤリとした顔つきで蓮を見る。
恐らく、この武具を装備しているところを見た事がないのだろう。
もともと奴隷には、武具の購入は断っているみたいだし、そもそもレベル100の奴隷などいないはずである。
目はまるで少年のように輝いていた。
その瞳にうつる蓮の手がつかに届きそうな時、動きが止まった。
「ん?」
蓮が竜王の大剣をつかもうと手を伸ばした時だ。
懐かしい機会音声が聞こえた。
あの、淡々とした口調で話す。嫌な声。
【『竜王の大剣』を装備しますか?……】
突然聞こえた音声に最初は驚いた顔を見せた蓮であったが、すぐに大剣のつか部分を握った。
もちろん答えは『はい』だ。
【『竜王の大剣』を装備しました。】
武具を初めて装備した蓮は、どこか嬉しそうだった。
大剣を握る力も強くなる。
ギュッと両手でを握りしめて恐る恐る持ち上げた。
「軽い……」
びっくりした。
まさか、こんなに軽いなんて。
重厚な形状からは想像もつかないほど軽い。片手でも持ち上げられてしまいそうだ。
正直、スキルで攻撃値を10万まで高めているせいもあるかもしれないけど。
蓮は笑顔を見せた後に、ゆっくりと剣道のような構えをとった。
そして刀身をじっくりと見つめる。
刀身は輝き、刃に少し触れただけでも切断されてしまいそうだ。
骨で出来ている大剣といっていいのか分からないほど鋭い。
その素晴らしさに蓮が見惚れていると、嬉しそうな声で老人が話しかける。
「ほう。無事に装備できたようじゃな」
老人は顎に手を当ててじっくりと見つめた。すると蓮は、大剣の軽さを伝えるために、2回ほど大剣をゆっくり振った。
そして、驚きを隠せないといった明るい口調で老人を見つめる。
「思ってたより軽いんですね」
「そうか? ケースを動かす時は、いつも腰が抜けそうになるわい。ははは!」
腹を抱えて笑う老人。
「これっていくらですか?」
「ん?……」
自然と声に出てしまっていた。
奴隷用の武具は貴重だと言っていたし、効果は不明といえども手に入れたいシロモノだ。
蓮はすぐにでもこの大剣について、話を進めたそうな表情をしているが老人は不思議そうな顔をしている。
まだ、開けてすらいない小さなケースを指して尋ねた。
「まだ、鎖の方が残っておるがいいのか?」
「はい!」
蓮の声に迷いはなかった。
正直、あの小さいケースから出ている禍々しいオーラはこの大剣の比ではないのだ。
老人には見えていないのかもしれないが、ケースの蓋を開けたくないほど黒い雰囲気が漂っている。
こっちの武具も禍々しいオーラを纏ってはいるが、武具を掴んで見て分かった。
この武具は俺でも扱える。
蓮の迷いのない表情を見て、老人は喜んでいる様子だった。
腕を組んでニヤついている。
「相当気に入ったようじゃなあ」
「なぜか分からないですけど、しっくりくるんですよね」
「ええじゃろう。と言いたいところじゃが、金は持っとるんか?」
「あ……」
そうだ。
俺はまだこの世界に来たばかり、ダンジョンでモンスターを倒したらすれば金を手に入れられるかもしれないが、手元には一銭もないのだ。
「……ツケ払いってできますか?」
「ははは! できるわけないじゃろ」
呆れたようにして頭を横に振る老人。
それを見て蓮は、苦笑いしながらどうにか出来ないかを考えていた。
同行している勇者に払ってもらおうかな。
そう思って後ろを振り向いても、そこにはこちらの意に気づいて睨み付けている勇者しかいなかった。
あの目は、金は出さないという目だ。
途方に暮れた蓮だが、なんとかこの武具を買えるように老人を説得しようとしている。
「ダンジョンに入って、不死の薬草と言われている、永龍草を取ってくるので、なんとかこの武器をくれませんか?」
「何をいっとるんじゃ。ダメじゃダメ! 後で払うと言ってそのまま消えた奴は数えきれんほどおる。残念じゃが、今回は諦めてくれ」
老人はそう言って竜王の大剣に手を伸ばした。
実はこの老人、スキルとして相手の装備を強制的に解除させる【強制解除】を持っているのだ。
老人が武具に手をかざすと青い光がそれを包み込む。
ふん。骨のある奴とは思ったが、さすがに金の無い奴に売るものはない。
「最近の旅人はまったく……。ん?……」
しかし、突然青い光は消えてしまった。
いつものように武器を解除させようとしたその時だ。
武具であるはずの竜王の大剣から声が聞こえた。
重く低く野太い声。
獣とも人間とも言えないような渋い声で。
――やめろ。われは、此奴についていく。
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