チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

文字の大きさ
120 / 123
第6章過去転移

119竜王の声

しおりを挟む
 

 ――――――――――――――――――――――――――
 ・名称『竜王の大剣』
 ・条件『【奴隷スレイヴ】に装備可能』
 ・条件『レベル100以上に装備可能』
 ・効果『不明』

 ・説明『人間達によって狩られた悲しき竜王の骨剣。
     竜王は人間達の非道な罠によって葬られた。
     皮肉にもこの大剣を操れるのは、竜王討伐の犠牲
     になった民の末裔のみだ。』
 ――――――――――――――――――――――――――



 効果が不明って……。
 そんなこといいのかよ。こんなバカでかい大剣だから攻撃値や防御値が跳ね上がってもいいと思うけど。
 この武具を装備したら何か変わるのか?


 蓮は驚きを隠せない。
 目を大きく開いてケースにしっかりと収まった竜王の大剣を見つめている。
 骨で出来た刀身は、長い年月に晒されてきたのだろう。真っ黒な色をしており見ている者がのみこまれそうになる。


「どうした少年よ? この竜王の大剣はワシが若かった頃に手に入れたモノじゃ。効果も分からんし、何より奴隷スレイヴしか装備できん」
「効果が不明ってことあるんですね」
「いや、ワシも他には見たことがない。もともと奴隷スレイヴ用の武具は特殊なモノが多いのじゃがな」
「なるほど……。少し、触ってみてもいいですか?」
「ええぞ」


 老人は腰に手を当てて、ニヤリとした顔つきで蓮を見る。
 恐らく、この武具を装備しているところを見た事がないのだろう。
 もともと奴隷には、武具の購入は断っているみたいだし、そもそもレベル100の奴隷などいないはずである。
 目はまるで少年のように輝いていた。


 その瞳にうつる蓮の手がつかに届きそうな時、動きが止まった。


「ん?」


 蓮が竜王の大剣をつかもうと手を伸ばした時だ。
 懐かしい機会音声が聞こえた。
 あの、淡々とした口調で話す。嫌な声。


【『竜王の大剣』を装備しますか?……】


 突然聞こえた音声に最初は驚いた顔を見せた蓮であったが、すぐに大剣のつか部分を握った。
 もちろん答えは『はい』だ。


【『竜王の大剣』を装備しました。】


 武具を初めて装備した蓮は、どこか嬉しそうだった。
 大剣を握る力も強くなる。
 ギュッと両手でを握りしめて恐る恐る持ち上げた。


「軽い……」


 びっくりした。
 まさか、こんなに軽いなんて。
 重厚な形状からは想像もつかないほど軽い。片手でも持ち上げられてしまいそうだ。
 正直、スキルで攻撃値を10万まで高めているせいもあるかもしれないけど。


 蓮は笑顔を見せた後に、ゆっくりと剣道のような構えをとった。
 そして刀身をじっくりと見つめる。
 刀身は輝き、刃に少し触れただけでも切断されてしまいそうだ。
 骨で出来ている大剣といっていいのか分からないほど鋭い。


 その素晴らしさに蓮が見惚れていると、嬉しそうな声で老人が話しかける。


「ほう。無事に装備できたようじゃな」


 老人は顎に手を当ててじっくりと見つめた。すると蓮は、大剣の軽さを伝えるために、2回ほど大剣をゆっくり振った。
 そして、驚きを隠せないといった明るい口調で老人を見つめる。


「思ってたより軽いんですね」
「そうか? ケースを動かす時は、いつも腰が抜けそうになるわい。ははは!」


 腹を抱えて笑う老人。


「これっていくらですか?」
「ん?……」


 自然と声に出てしまっていた。
 奴隷用の武具は貴重だと言っていたし、効果は不明といえども手に入れたいシロモノだ。


 蓮はすぐにでもこの大剣について、話を進めたそうな表情をしているが老人は不思議そうな顔をしている。
 まだ、開けてすらいない小さなケースを指して尋ねた。


「まだ、鎖の方が残っておるがいいのか?」
「はい!」


 蓮の声に迷いはなかった。
 正直、あの小さいケースから出ている禍々しいオーラはこの大剣の比ではないのだ。
 老人には見えていないのかもしれないが、ケースの蓋を開けたくないほど黒い雰囲気が漂っている。
 こっちの武具も禍々しいオーラを纏ってはいるが、武具を掴んで見て分かった。
 この武具は俺でも扱える。


 蓮の迷いのない表情を見て、老人は喜んでいる様子だった。
 腕を組んでニヤついている。


「相当気に入ったようじゃなあ」
「なぜか分からないですけど、しっくりくるんですよね」
「ええじゃろう。と言いたいところじゃが、金は持っとるんか?」
「あ……」


 そうだ。
 俺はまだこの世界に来たばかり、ダンジョンでモンスターを倒したらすれば金を手に入れられるかもしれないが、手元には一銭もないのだ。


「……ツケ払いってできますか?」
「ははは! できるわけないじゃろ」


 呆れたようにして頭を横に振る老人。
 それを見て蓮は、苦笑いしながらどうにか出来ないかを考えていた。


 同行している勇者に払ってもらおうかな。


 そう思って後ろを振り向いても、そこにはこちらの意に気づいて睨み付けている勇者しかいなかった。
 あの目は、金は出さないという目だ。


 途方に暮れた蓮だが、なんとかこの武具を買えるように老人を説得しようとしている。


「ダンジョンに入って、不死の薬草と言われている、永龍草を取ってくるので、なんとかこの武器をくれませんか?」
「何をいっとるんじゃ。ダメじゃダメ! 後で払うと言ってそのまま消えた奴は数えきれんほどおる。残念じゃが、今回は諦めてくれ」


 老人はそう言って竜王の大剣に手を伸ばした。
 実はこの老人、スキルとして相手の装備を強制的に解除させる【強制解除リリース】を持っているのだ。
 老人が武具に手をかざすと青い光がそれを包み込む。


 ふん。骨のある奴とは思ったが、さすがに金の無い奴に売るものはない。


「最近の旅人はまったく……。ん?……」


 しかし、突然青い光は消えてしまった。
 いつものように武器を解除させようとしたその時だ。
 武具であるはずの竜王の大剣から声が聞こえた。


 重く低く野太い声。
 獣とも人間とも言えないような渋い声で。


 ――やめろ。われは、此奴についていく。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

処理中です...