チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

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第6章過去転移

120ドラゴンキング

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 その声は重く暗かったが、禍々しいものではなかった。
 蓮と老人は目を見合わせて止まった後、一斉に竜王の大剣へと目線を移した。


 ――(武具が喋ってる?!!)


 恐らく心の中の叫びは2人とも同じだったであろう。
 蓮と老人は額から冷や汗を流しながら会話を進めた。
 まず、動いたのは蓮の方だった。
 大剣を横に寝かせたまま老人の方へと押し出して言う。


「やっぱ。お金払えないので、この武具は返しますよ!」


 先程までゴネていた人間とは思えないほど武具を渡そうとしている。
 しかし、あの声は老人も聞こえてしまっているのだ。


「いやぁ……。どうしようかのぅ」


 老人は目を伏せ、頭をポリポリとかいて困ったような仕草を見せる。
 老人は考えていた。
 元々、この武具を買う人物はそうそう現れるものでもない。
 商人として、無料で武具を渡すことは出来れば避けたい気持ちもわかるが、気味の悪いものなど近くに置きたくないのだ。
 しばらく腕を組んでいると、突然ニカッとした表情を蓮に見せる。


「やはり。わしはお主を応援することに決めた!」
「は?」


 老人が蓮の目を見つめてそういうと、蓮はびっくりしたような、嫌なような、表情で老人の顔を見つめ返した。
 気味の悪い武具ということは蓮にとっても同じだ。
 蓮の顔が引きつる。


 なんだよ。
 さっきまで、金の無い奴に売るもんはなねぇ!とか言ってたじゃないか。
 さっさと引き取ってくれよ。


 そして、老人の方も引き立った笑顔で応える。


 ふっ。
 金にならない商売などあり得ないが、元々曰く付きの武具だ。
 声まで聞こえたし、ずっと置いておくとワシが呪われてしまいそうじゃ。


 しばし沈黙が続く。


「……」
「……」


 蓮と老人。
 彼らはお互いに同じことを思っていた。


 ――この不気味な武具から早く離れたい!


 と。


 お互いに見つめ合う気まずい雰囲気の中で、最初に声を出したのは老人の方だった。
 彼は、蓮の肩にゆっくりと手を乗せると勢いよく頭を下げた。


「頼む! 引き取ってくれ! ワシが馬鹿じゃった。こんな気味の悪い武具はもう近くに置きたくない」
「??!」
「お主も先程の声が聞こえたじゃろう。実は、前々から変な音が聞こえると思っておったんじゃ。気のせいだと紛らわせてきたが、さっきのハッキリとした声で分かった。この大剣は呪われとる」


 蓮の肩を掴む老人の手はプルプルと震えていた。
 どうやら最初からこの武具のことを老人はよく思っていなかったみたいである。
 よく見ると額からはうっすらと冷や汗が垂れている。


 得体の知れない現象を目の当たりにして恐ろしいのだろう。
 だが、それは蓮も同じである。
 蓮は老人の手を肩から外して声を出した。


「ちょっと待ってくださいよ! 呪われてる武器なんて客に装備させないでください!」
「もう手遅れじゃよ……。それにワシも半信半疑じゃったんじゃ。武器から声が聞こえるなど。意思を持つなど聞いたことがないわい」
「……」
「まぁ落ち込むな。その武具はレア度もだいぶ高い。普通じゃタダでなんてとても無理じゃ」
「え。ちょっと……」


 老人はそういうと、開けたケースや小さいケースを片付けていった。
 蓋を閉めて2つのケースを店の奥にしまっていく。
 蓮はその光景を黙って見ているだけである。


 強引すぎでしょ。
 結局、これでこの武具の所有者は俺ってことか?
 でも……。


 もしかしたらさっきの声は単なる気のせいだったかもしれない。
 なんだ。心配する必要なんかないじゃないか。
 武具が声を出すなんてあり得ないんだから。


 そう思いながら蓮は大剣を見つめた。


「そうだよな。さっきの声も俺の気のせ……」


 蓮は、独り言を言って自分を安心させようとしたのだ。
 だがしかし、信じ難いことに先程の声は現実であった。
 言葉を言い終わる前に大剣からまた声が聞こえた。


 ――よろしくな。新たな主人よ


「……!?」


 この声には蓮はもちろん。
 老人も驚いた。腰を抜かして地べたに尻をつけている。
 一方、蓮は目を大きく開けて固まっているだけだ。


 喋った?
 今、確実に喋ったよな。俺はただ武具ってどんなものかを知りたくて立ち寄っただけなのに。
 いきなり変な武具に出会うなんて……。


 蓮と老人がしばらく動けずにいると、また武具の方から話し出した。
 どうやら武具が喋っているせいど、2人が驚いているということは武具自身も気づいていたようだ。
 武具は突然、小刻みに揺れだすと白い光に包まれた。


 ――この姿の方がよいかな?


 優しい光だ。
 大剣全体が光に包み込まれると、徐々に小さくなっていく。
 次第に形状そのものも変わっていった。
 長細い形状から丸くて小さいものへとなっていく。
 最終的には、小型犬サイズになって光が収まっていった。


 そして、光が徐々に薄くなっていって声の正体が姿を現す。
 真っ赤な鱗を持ち鋭い金色の眼光を持つ、爬虫類、いや、ドラゴンの姿をした動物が現れたのだ。
 小型犬サイズであるが堂々とした威厳を持っている。


 呆気に取られている蓮と老人を、その声の持ち主は見て、少し笑った。
 その後に短い首をペコリと折って会釈する。



「我が名は竜王ドラゴンキング。天空を統べる者だ」
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