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無意識の欲の露出
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仄暗い自室でいつものように部屋着に着替える途中、ふと寝具の横にある姿見に下着姿を映す。日に焼けて淡褐色に染まった女として魅力の欠片も無い顔と四肢、起伏が乏しい胸部には、薄衣を突き、下品な主張をする桃色の突起が二つ、括れの緩やかな腰部が形作る幼稚な形象、繊細な秘部を覆う白布には一筋、発情の証が滲んでいる。
私は、情欲の栓が緩々になった情けない肉体を純白の衣で包み隠す。もう一度姿見の前に立ち、最低限の身嗜みを整えてから、黄昏の粒子漂う部屋を後にした。
空気が凍った廊下を歩き、お姉様の部屋へ向かう。足から床に、床から壁に、壁から天井に私の熱い心拍音が伝う。足取りは先走る気持ちと並行するように軽快だった。お姉様の部屋まではさほど距離があるわけではないので、少し歩くと、視界には扉が入り込んできた。
粛々とした印象の扉が目の前に現れる。私の部屋の扉と全く同価値の物であるが、私のお姉様に対する深い畏敬の念が視覚に作用し、七色の光輪を扉に映し出す。聖領域に欲望に塗れた足を踏み入れる前に、深呼吸を一回し、溜まった毒素を少しでも外に吐出する。そして、小さく震える手で軽く拳を作り扉を三回叩く。
「入っていいよ。」
扉の向こうから、お姉様が穏やかな声色で入室を促す。私は取手に手をかけ、扉を開けた。
「し、失礼します。」
入室した瞬間、甘美な香りが鼻腔を支配する。これが、お姉様の香り。現在、私はお姉様の香りに包み込まれている。お姉様に対して背徳的な思いを寄せている私にとっては、猛毒にもなりうる危険な刺激であり、その場で失神を起こしてしまいそうであった。
「雪?何やってるんだ、扉の前で突っ立ってないでこっちに来い。」
呆然としていた私に対して、寝具に腰を掛けたお姉様はある場所を指し示す。そこは、お姉様の隣に空いた空間だった。
「え?そんな、お姉様の隣に座るなんて資格、私には…」
遠慮気味に答える私に、お姉様は立ち上がり、こちらへ歩いてくる。お姉様の、全ての芸術家の理想である完全美の形を成した顔が迫り来る。私の瞳に感涙が滲む。
「何言ってるんだ、ほら、早く来い。」
お姉様が私の手を引いて、寝具の方へ誘導しようとする。
「ひゃっ!」
予期せぬ展開に思わずお姉様の手を振り解いてしまった。
「あ、ごめん、嫌だったか?」
私に拒絶されたと思ったのだろう。お姉様が悲哀を帯びた声色で謝罪の言葉を口にする。
「いえ、違います!その、突然大好きなお姉様の手に触れられたのでびっくりしただけで、決してお姉様に触れられることに嫌悪を覚えている訳ではありません!寧ろ、もっと、手だけじゃなく色々な所に触れて欲しい…あっ…」
慌てて誤解を解こうとしていた為に、無意識にお姉様に寄せる禁断の思いを零してしまった。思わぬ失態に顔から血の気が引いていく。お姉様は驚愕を瞳に宿しながら私を凝視して
「そうか…雪は私のことをそんな風に…」
と、小さく呟く。お姉様は失望しただろう。今まで姉妹として同じ屋根の下に住んでいた妹に、性愛を抱かれていたのだ。当然だ。これ以上、お姉様の顔を見られなくなった私は視線を深く落とし、冷徹な床を見つめる。胸が苦しい。まるで、原始より不変の光も不達である深淵の中で窒息しながら不安定に浮遊しているような感覚だった。
私は、情欲の栓が緩々になった情けない肉体を純白の衣で包み隠す。もう一度姿見の前に立ち、最低限の身嗜みを整えてから、黄昏の粒子漂う部屋を後にした。
空気が凍った廊下を歩き、お姉様の部屋へ向かう。足から床に、床から壁に、壁から天井に私の熱い心拍音が伝う。足取りは先走る気持ちと並行するように軽快だった。お姉様の部屋まではさほど距離があるわけではないので、少し歩くと、視界には扉が入り込んできた。
粛々とした印象の扉が目の前に現れる。私の部屋の扉と全く同価値の物であるが、私のお姉様に対する深い畏敬の念が視覚に作用し、七色の光輪を扉に映し出す。聖領域に欲望に塗れた足を踏み入れる前に、深呼吸を一回し、溜まった毒素を少しでも外に吐出する。そして、小さく震える手で軽く拳を作り扉を三回叩く。
「入っていいよ。」
扉の向こうから、お姉様が穏やかな声色で入室を促す。私は取手に手をかけ、扉を開けた。
「し、失礼します。」
入室した瞬間、甘美な香りが鼻腔を支配する。これが、お姉様の香り。現在、私はお姉様の香りに包み込まれている。お姉様に対して背徳的な思いを寄せている私にとっては、猛毒にもなりうる危険な刺激であり、その場で失神を起こしてしまいそうであった。
「雪?何やってるんだ、扉の前で突っ立ってないでこっちに来い。」
呆然としていた私に対して、寝具に腰を掛けたお姉様はある場所を指し示す。そこは、お姉様の隣に空いた空間だった。
「え?そんな、お姉様の隣に座るなんて資格、私には…」
遠慮気味に答える私に、お姉様は立ち上がり、こちらへ歩いてくる。お姉様の、全ての芸術家の理想である完全美の形を成した顔が迫り来る。私の瞳に感涙が滲む。
「何言ってるんだ、ほら、早く来い。」
お姉様が私の手を引いて、寝具の方へ誘導しようとする。
「ひゃっ!」
予期せぬ展開に思わずお姉様の手を振り解いてしまった。
「あ、ごめん、嫌だったか?」
私に拒絶されたと思ったのだろう。お姉様が悲哀を帯びた声色で謝罪の言葉を口にする。
「いえ、違います!その、突然大好きなお姉様の手に触れられたのでびっくりしただけで、決してお姉様に触れられることに嫌悪を覚えている訳ではありません!寧ろ、もっと、手だけじゃなく色々な所に触れて欲しい…あっ…」
慌てて誤解を解こうとしていた為に、無意識にお姉様に寄せる禁断の思いを零してしまった。思わぬ失態に顔から血の気が引いていく。お姉様は驚愕を瞳に宿しながら私を凝視して
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と、小さく呟く。お姉様は失望しただろう。今まで姉妹として同じ屋根の下に住んでいた妹に、性愛を抱かれていたのだ。当然だ。これ以上、お姉様の顔を見られなくなった私は視線を深く落とし、冷徹な床を見つめる。胸が苦しい。まるで、原始より不変の光も不達である深淵の中で窒息しながら不安定に浮遊しているような感覚だった。
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