異世界の南国リゾートでバカンスを楽しむつもりがいつの間にかハードモードに?でもモフモフたち力を借りて乗り切ります!

めっちゃ犬

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第2章 南部のビーチリゾート

呪いだと!?

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「これは何です?」

駆けつけたルリは、タコパーマを見て目を丸くした。これまでにないほど驚いた顔をしている。ルリが知らないものを私たちが知っているはずもない。

「ええっと、私が釣り上げたんだけど、しゃべるの」

「これ!わらわを早くここから出すのじゃ!」

説明しているそばからタコパーマが金切り声をあげる。網のなかでシューシュー蒸気を出しているのは、どうやら怒っているかららしい。

「お前はいったい何です?」

ルリは大胆にもタコパーマをむんずと手でつかむと、網から出した。彼女が鋭く睨みつけると、その迫力に怖気づいたのか、タコパーマから出ている蒸気が少し弱くなった。

「わ、わらわは、このあたりの海を支配する、じょ、女王じゃ」

「主ということですか?」

ルリはタコパーマの感触を試すかのように、その丸い体を両手でブニブニと触りながら聞く。あんなもの触って気持ち悪くないのだろうか?隣のアキノも「うへぇ」という顔でタコパーマを触りまくるルリを見ている。

「そうじゃ。主じゃ」

タコパーマは頭の上で丸まっている足の一本をのばし、私を指した。

「その女に呼ばれたから来てやったのじゃ。感謝せよ」

え?呼んでませんけど?あなた私に釣られたんですよね?疑似餌にパックリ食いついてましたよね?

私とアキノの冷ややかな視線に気づいて、自称海の女王は気まずそうに目をそらした。ルリは私を指したままの足をつかんで、ギュウっと引っ張る。

「痛たたたた!やめんか!」

タコパーマはまたシューシューと湯気を出し始めるが、ルリは意に介さずにこんなことを言い出した。

「沙世さま、これはアヒージョにすると美味しいかもしれません」

ルリはずっと、これが食べられるかどうかを考えていたらしい。そして、美味しそうだと判断したようだ。いったいどういう判断基準なのか理解に苦しむ。私は当然反対した。

「え、やめようよ、そんなの絶対に不味いって」

アキノもこわばった顔でうんうんとうなずく。確かにアヒージョは美味しいが、それは絶対にタコじゃない。

「キィー!わらわが不味いとは無礼な!」

「美味しいのですか?」

「もちろんじゃ!」

勢いでそう答えてしまったらしいタコパーマは、ルリの目が輝いたのを見てフルフルと震えだす。心なしか銀色のボディが青みがかってきているように見えた。

「わ、わらわは食用ではないぞ!おい女、その手を離すのじゃー!!」

暴れはじめるタコパーマ。それを逃がすまいとルリが力をこめてつかんだので、タコパーマの顔がブサイクに歪んだ。

ぶっしゅぅううううううううう!!

嫌な音とともに、タコパーマの口から大量の海水が勢いよく吐き出される。小さな体のどこにそんな量の海水が入っていたのかと思うほどの量で、まるで消防車の放水のようだ。海藻やら魚やらが混じった海水が、ルリの顔を直撃する。

「あっ!」

さすがのルリもこれには一瞬ひるんだ。タコパーマはその隙をついて彼女の手から逃れる。ぼたりと地面へ落ちたかと思うと、頭から生えている足をプロペラのように高速回転させはじめた。

ぶぅうううううん!

「さらばじゃぁああああ!」

雄叫びとともにタコパーマは空中へ舞い上がる。そして庭の外へ飛び出すと、見る間に高度をあげて海の彼方へと飛んで行った。私たちは呆然としてそれを見送る。

「行っちゃったねぇ」

そう言ってアキノは庭に視線を巡らせた。タコパーマが去ったあとの庭は海水でびしょ濡れだ。土の上では何十匹もの魚がビチビチと威勢よく跳ねていた。

「沙世さま見てください、メイパルがこんなにたくさん!」

ルリは目を輝かせて叫んだ。どうやら跳ねている魚のほとんどが、彼女が食べたがっていた高級魚のようだ。アヒージョの材料を逃して落ち込んでるかと思いきや、思わぬ豊漁に喜んでいる。変なものを食べさせられる危険を回避できて、私も胸をなでおろした。

「せっかくなので活きのいいまま保存しましょう」

ルリはびしょ濡れの庭を神力でもとの状態に戻すと、さらに庭を広げて大きな池をつくった。そこに海水を入れて生け簀にする。タコパーマが置いて行った魚はそれほど大量だったのだ。

チビルリちゃんたちが落ちている魚や貝をせっせと拾い集め、つぎつぎと生け簀に入れていく。その様子を眺めながら私は聞いた。

「ねえルリ、あれって何だったの?」

「分かりませんが、自分で言っていたように、ここいらあたりの海を支配する主なのでしょう」

「へぇー、海の主って本当にいるんだぁ」

アキノも驚いているようだ。主とは、強くて長生きした生き物が、自然のなかの神力を取り込んで進化したものなのだそうだ。女神さまがつくった島の自然のなかには、わずかながら神力が残っているという。

「あれは元はターコラだったのでしょうが、神力を取り込んで特殊な見た目と能力を身につけたようです」

「ふーん、あんなのがたくさんいるの?」

「いえ、主になるまで長生きできる生き物はほとんどいませんし、人前に姿をあらわすこともめったにないです」

だったら私はある意味貴重な体験をしたと言える。海の主と言ったら龍神とか大きな魚とか、もっと格好いいものを連想していたのだけれど、そうとは限らないようだ。もしかしたら、これも綺麗な金の玉の力なのかもしれない。

ふと、チビルリちゃんのひとりが私の前にスーッと飛んできた。手に持った何かを私に渡してくる。あのタコパーマが落としていったものだろう。

「あら、指輪だわ」

それは銀色の金属でできた土台に、サファイアのような青い石がはまった古い指輪だった。石は小さいし青の色が少し濁っていて、あまり高価なものには見えない。私はそれをルリに見せた。

「これは呪いの指輪ですね」

指輪を手に取って調べていたルリは、何でもないことのように言った。

「「のののの、呪い!?」」

私とアキノはそろって聞き返す。アキノはスススと庭の隅に退散した。物騒なものからできるだけ離れたいのだろう。幽霊のくせに呪いが怖いらしい。
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