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第2章 南部のビーチリゾート
頭からバリバリと
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「この指輪には、つけた人がパーティーなどで『壁の花になる』呪いがかけられています」
ルリが言うには、どんな華やかな美人でもその指輪をつけると目立たなくなると言うか、誰にも見向きされなくなるらしい。
「「なんじゃそりゃ」」
またアキノとふたりでハモってしまった。たいした呪いでなくて安心したのか、彼女は私の隣に戻って来た。そして興味深そうにルリの手元をのぞき込む。
「この指輪をはめた人のことを周囲は一応認識はするのですが、興味を持たなくなるのです。まさに壁に飾られた花を景色の一部としてスルーするように」
「うーん」
私は唸る。なんだか地味に嫌な呪いだな。恋のライバルに同性が贈ったのだろうか?それとも、美しい恋人をほかの男に取られたくなくて、とか?
「ずいぶんと古いもののようですので、きっと海の底に落ちていたのをあの主が拾ったのでしょう。こんなものを持っていても役に立たないので海に戻します」
ルリが指ではじくと、指輪は弧を描くようにして庭の垣根の向こうへと飛んで行った。私はホッとする。広い海の底に沈んだのなら、誰もあの指輪を手にすることができないから安心だ。
「さて、メイパルが手に入ったので、お昼ご飯にさっそくいただきましょう」
そう言ったルリの口の端はわずかに上がっていた。分かりにくいけど、たぶん喜んでいるのだろう。ぴちぴちと活きのいい魚の尻尾を持って、チビルリちゃんたちがキッチンへと飛んでいく。
「メイパルは高級魚だからめったに食べられないんだよ、良かったね」
食べられないアキノまでなぜか嬉しそうなので、あのタコパーマから噴出されたものだということは忘れることにした。せっかくの食べ物を無駄にしてはいけないしね。
私はリビングに戻って昼食ができるのを待つことにする。アキノにこれから行くテュルリ村のことを聞いたりしているうちに、キッチンからとてつもなくいい香りが漂ってきた。これはニンニクとバターだろうか?
「いい匂い!」
鼻をヒクつかせてつぶやいた私に、アキノがうなずく。
「うん、メイパルはバター焼きにするのが一番美味しいからね」
ほどなくチビルリちゃんたちが、魚を盛りつけた大きな皿を運んできてくれた。ルリもいそいそと席について箸を握る。
「わあ、本当に美味しそう」
私とルリの前にそれぞれ置かれた皿には、まるまる一匹の大きなメイパルが乗っていた。はらわたとウロコは処理してあるが、頭と尻尾はついたままだ。魚はバターをふんだんに使ったソースに浸っていて、上にたっぷりの刻んだニンニクと緑のハーブがかかっている。
「いっただきまーす」
皿から立ちのぼる香りに我慢ができず、私は急いで箸をとった。身をほぐして口に入れると、パンチのあるニンニクの香りがいっぱいに広がった。メイパルは脂がのっているが、口のなかでスーッと消えてなくなるような上品な脂で、臭みもない。さすが高級魚と言われるだけのことはある。
ルリが食べたがったワケだわ~。
そう思って隣に目をやった私は、もう少しで口のなかのものを吹きだすところだった。ルリが大きなメイパルを箸でまるごとつかみ上げ、目刺しを食べるみたいに頭からバリバリかじっていたのだ。食べ方はあくまで綺麗なのがすごい。
「る、ルリ、そんな食べ方で骨とか刺さらないの?」
「へいきれふ」
せわし気に口をモグモグしながら答える。たぶん「平気です」と言ったのだろう。まあ、彼女は人間じゃないから平気なのかもしれないが、良い子は絶対にマネしちゃいけないヤツだ。
ルリは尻尾の先まできれいに口のなかに収めると、空になった皿をチビルリちゃんに差し出した。
「おかわり!」
まだまだたくさん用意されているらしい。ルリは無表情ながらも頬が少し赤くなっていて、高級魚を食べられることに満足しているようだ。
うん、とりあえず釣りの成果があってよかった。
あのタコパーマを釣りあげたのは私なのだから、このメイパルも私の手柄にしていいだろう。私はメイパルの身をご飯にのせて口に入れた。バターソースはご飯ともよく合って食がすすむ。大盛りのご飯があっと言う間になくなっていく。
「おかわり!」
ルリに張り合うわけじゃないけど、私は空の茶碗をチビルリちゃんに差し出した。
午後はまた露天風呂でのんびりしたり、「生け簀で泳ぎたい」とか言い出したアキノを止めたりしているうちに、あっと言う間に過ぎた。そして予定よりも早く、私たちはテュルリ村の近くにまでたどり着いた。村から少し離れた浜にワゴンを上陸させる。
「今日は朝早くからご苦労さま」
ワゴンから降りた私は、頑張ってくれたアヒルンゴたちをねぎらう。心配したけど、頭頂部の毛を跳ねらかした隊長をはじめ、皆元気なようで安心した。テュルリ村は果物をたくさん栽培しているそうだから、またご褒美に買ってきてあげよう。
「もう夕方に近い時間ですし、村を訪問するのは明日にしましょう」
ルリの提案に私はうなずく。ワゴンを停めた小さなビーチは、陸側にジャングルと言いたくなるほど木々が生い茂っていた。アキノが私をその森のなかへと誘う。
「この辺りは自生してる果物の木が多いの。食べられる実がないか探してみようよ」
さすがに地元なだけあって、アキノは詳しいようだ。そう言えば、最初の朝にチビルリちゃんたちが採ってきてくれた果物は美味しかったっけ。野生の果物を採って食べる経験なんてそうそうできないから、私は一も二もなく賛同した。
ルリが言うには、どんな華やかな美人でもその指輪をつけると目立たなくなると言うか、誰にも見向きされなくなるらしい。
「「なんじゃそりゃ」」
またアキノとふたりでハモってしまった。たいした呪いでなくて安心したのか、彼女は私の隣に戻って来た。そして興味深そうにルリの手元をのぞき込む。
「この指輪をはめた人のことを周囲は一応認識はするのですが、興味を持たなくなるのです。まさに壁に飾られた花を景色の一部としてスルーするように」
「うーん」
私は唸る。なんだか地味に嫌な呪いだな。恋のライバルに同性が贈ったのだろうか?それとも、美しい恋人をほかの男に取られたくなくて、とか?
「ずいぶんと古いもののようですので、きっと海の底に落ちていたのをあの主が拾ったのでしょう。こんなものを持っていても役に立たないので海に戻します」
ルリが指ではじくと、指輪は弧を描くようにして庭の垣根の向こうへと飛んで行った。私はホッとする。広い海の底に沈んだのなら、誰もあの指輪を手にすることができないから安心だ。
「さて、メイパルが手に入ったので、お昼ご飯にさっそくいただきましょう」
そう言ったルリの口の端はわずかに上がっていた。分かりにくいけど、たぶん喜んでいるのだろう。ぴちぴちと活きのいい魚の尻尾を持って、チビルリちゃんたちがキッチンへと飛んでいく。
「メイパルは高級魚だからめったに食べられないんだよ、良かったね」
食べられないアキノまでなぜか嬉しそうなので、あのタコパーマから噴出されたものだということは忘れることにした。せっかくの食べ物を無駄にしてはいけないしね。
私はリビングに戻って昼食ができるのを待つことにする。アキノにこれから行くテュルリ村のことを聞いたりしているうちに、キッチンからとてつもなくいい香りが漂ってきた。これはニンニクとバターだろうか?
「いい匂い!」
鼻をヒクつかせてつぶやいた私に、アキノがうなずく。
「うん、メイパルはバター焼きにするのが一番美味しいからね」
ほどなくチビルリちゃんたちが、魚を盛りつけた大きな皿を運んできてくれた。ルリもいそいそと席について箸を握る。
「わあ、本当に美味しそう」
私とルリの前にそれぞれ置かれた皿には、まるまる一匹の大きなメイパルが乗っていた。はらわたとウロコは処理してあるが、頭と尻尾はついたままだ。魚はバターをふんだんに使ったソースに浸っていて、上にたっぷりの刻んだニンニクと緑のハーブがかかっている。
「いっただきまーす」
皿から立ちのぼる香りに我慢ができず、私は急いで箸をとった。身をほぐして口に入れると、パンチのあるニンニクの香りがいっぱいに広がった。メイパルは脂がのっているが、口のなかでスーッと消えてなくなるような上品な脂で、臭みもない。さすが高級魚と言われるだけのことはある。
ルリが食べたがったワケだわ~。
そう思って隣に目をやった私は、もう少しで口のなかのものを吹きだすところだった。ルリが大きなメイパルを箸でまるごとつかみ上げ、目刺しを食べるみたいに頭からバリバリかじっていたのだ。食べ方はあくまで綺麗なのがすごい。
「る、ルリ、そんな食べ方で骨とか刺さらないの?」
「へいきれふ」
せわし気に口をモグモグしながら答える。たぶん「平気です」と言ったのだろう。まあ、彼女は人間じゃないから平気なのかもしれないが、良い子は絶対にマネしちゃいけないヤツだ。
ルリは尻尾の先まできれいに口のなかに収めると、空になった皿をチビルリちゃんに差し出した。
「おかわり!」
まだまだたくさん用意されているらしい。ルリは無表情ながらも頬が少し赤くなっていて、高級魚を食べられることに満足しているようだ。
うん、とりあえず釣りの成果があってよかった。
あのタコパーマを釣りあげたのは私なのだから、このメイパルも私の手柄にしていいだろう。私はメイパルの身をご飯にのせて口に入れた。バターソースはご飯ともよく合って食がすすむ。大盛りのご飯があっと言う間になくなっていく。
「おかわり!」
ルリに張り合うわけじゃないけど、私は空の茶碗をチビルリちゃんに差し出した。
午後はまた露天風呂でのんびりしたり、「生け簀で泳ぎたい」とか言い出したアキノを止めたりしているうちに、あっと言う間に過ぎた。そして予定よりも早く、私たちはテュルリ村の近くにまでたどり着いた。村から少し離れた浜にワゴンを上陸させる。
「今日は朝早くからご苦労さま」
ワゴンから降りた私は、頑張ってくれたアヒルンゴたちをねぎらう。心配したけど、頭頂部の毛を跳ねらかした隊長をはじめ、皆元気なようで安心した。テュルリ村は果物をたくさん栽培しているそうだから、またご褒美に買ってきてあげよう。
「もう夕方に近い時間ですし、村を訪問するのは明日にしましょう」
ルリの提案に私はうなずく。ワゴンを停めた小さなビーチは、陸側にジャングルと言いたくなるほど木々が生い茂っていた。アキノが私をその森のなかへと誘う。
「この辺りは自生してる果物の木が多いの。食べられる実がないか探してみようよ」
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