異世界の南国リゾートでバカンスを楽しむつもりがいつの間にかハードモードに?でもモフモフたち力を借りて乗り切ります!

めっちゃ犬

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第2章 南部のビーチリゾート

やってみればいいのよ

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私はアキノとチビルリちゃんたちと一緒に森のなかに足を踏み入れた。5分も歩かないうちにアキノが声をあげる。 

「ほら、あそこにポンポンヤラオの実がなってる」

彼女が指さすほうを見る。そこには私の身長よりも少し低いくらいの木があって、横に広がった枝にみかんのような実がたくさん実っていた。実の色は緑、黄色、オレンジとさまざまだ。きっと熟している実とそうでない実があるのだろう。

「あれは甘くて果汁が多いの。しぼってジュースにすると美味しいよ」

なら冷蔵庫で冷やしておいて、明日の朝食にしぼりたてのジュースをいただこう。私は木に近づいて、オレンジに熟した実をひとつもぎ取る。そのとたん、アキノが首を振ってダメ出しをした。

「やだ沙世、それはまだ酸っぱいわよ」

「え?こんなに濃いオレンジになってるのに?」

「だからオレンジは若い実なんだってば。ポンポンヤラオは熟するにしたがって黄色から緑になっていくの」

何、そのひねくれた果物。見た目がみかんに似てるから、緑だと酸っぱいようにしか思えない。試しに緑の実をとって皮をむき、一口食べてみる。香り高い甘い果汁が口のなかにあふれ出した。香りはオレンジで味はミカンに近い感じだ。

「美味しい!」

ミカン大好きな私は緑の実をせっせと集めた。チビルリちゃんがカゴを差し出してくれるのでそこへ入れていく。

「沙世、このパヤパヤも美味しいよ。黄色い実は皮をむいてそのまま食べられるし、熟してない青い実は漬物や炒め物にして食べるの」

この辺りではどちらかというと、青い実を野菜として料理につかうそうだ。日本でも、スイカの皮を漬物にすることがあるけど、そんな感覚だろうか。

「へぇー、じゃあ両方とっていこうかな」

だけどパヤパヤの木は大きく、実もけっこう高いところになっていて、背伸びしても届かない。どうしようかと思っていたら、チビルリちゃんたちがもぎ取って持ってきてくれた。

彼女らは私に確認させるように実を見せたあと、ポンポンヤラオと一緒にカゴに入れる。カゴの大きさと入れた量がどうみても不釣り合いな気がするけど、これもきっとルリのポシェットと同じなのだろう。

短い間に、アキノは次々と果物や木の実を見つけて教えてくれた。私は自分でも見つけられないかと目を皿のようにして探したけど、慣れていないせいかあまり見つけられない。私だってミカン狩りくらいはしたことがあるけど、果樹園とは全然勝手が違うのだ。森のなかで果物を見つけるのは、案外難しいのだと知った。

「ふう~」

私は木の幹に手をついて一息ついた。木々の生い茂るなかを歩くのはけっこう疲れる。そろそろ帰ろうかと思ったとき、手をついた幹に絡むツタに、可愛らしい花が咲いているのに気が付いた。小さくて白いその花は、薄いレースを何枚も重ねてつくったような繊細な姿をしている。

「この可愛い花はなんて言うの?」

私は背後のアキノを振り返る。彼女は私が指した花を見て、ひどく驚いた顔をした。

「すごいわ沙世、これってすごく珍しい果物なのよ」

「え?果物?」

私は愛らしい花のついたツタを上から下まで観察するが、実らしきものは見つからない。するとアキノは、スーッとツタを追って木の上のほうまで飛んでいく。ツタの先は木の幹に空いたウロのなかへと続いてるようだ。彼女はそのなかをのぞき込む。

「やっぱあったわ!ここよ、ここ」

アキノが叫ぶとチビルリちゃんたちがその周囲に集まり、同じようにウロのなかをのぞき込む。

みんな空中を自由に動き回れていいなぁ。

飛べないのが普通のはずなのに、なぜか自分が「できない子」みたいな気がしてきた。

「ねえ、そこに何があるの?」

ひとりで蚊帳の外みたいになった私は、声を張り上げてアキノに聞いた。

「だから、このツタの実があるのよ。これはウロメロメと言って、めったに見られない希少な果物なの。栽培はできないし、市場に出したらすごい高値がつくのよ」

チビルリちゃんのひとりが、ウロのなかにそっと手を入れる。そこから小ぶりのメロンみたいな、楕円形の実を取り出し、私のところへ持ってきてくれた。ウロメロメの皮は黄色くて、全体に青い水玉模様のような丸い斑点が浮き出ている。その不気味な見た目に反して、周囲には桃のような甘い香りが漂っていた。

「確かにいい香りがして美味しそうね」

「どうしたの?あんまり嬉しくなさそう」

私の顔をのぞき込むようにしてアキノが尋ねる。

「ううん、嬉しくないわけじゃないんだけど、せっかくなら自分で採ってみたかったなって」

ウロは地上から3メートルくらいのところにあったから、自分じゃ採れないのは分かってるんだけど。肩を落として答える私に、アキノはそんなことかという顔をする。

「だったら木登りができるようになればいいじゃない!私が教えてあげるわ」

「ええ?私にできるかな」

「木登りなんてコツを覚えれば簡単よ」

アキノが熱心に勧めてくれるので、私は自信がないながらも挑戦してみることにした。彼女は周囲を見回し、登りやすい初心者向けの木を選んでくれる。枝が多くて横に広がっているので、確かにこれなら私でも何とかなりそうだ。

「ほら、まずはここに足をかけて、次にあの枝をつかむといいわ」

アキノが教えてくれたとおり、私は曲がった幹のわずかなでっぱりに足をかけ、片手を幹にまわして抱きつくように木にかじりついた。が、すぐにストンと地面へ落ちてしまう。

「沙世、もっと足を踏んばって!最初の枝に手が届けばあとは楽勝よ」

「う、うん」

アキノの励ましを受けて再度挑戦する。何度かトライしてようやく体が安定するようになった私は、一番低いところにある枝に向かって必死に片手を伸ばした。

「ぬぬぬ・・・」

枝まであと少し。チビルリちゃんたちは何故か日の丸の旗を振って応援してくれていた。いつも思うんだけど、網やらカゴやらいつもどこから出してるんだろう?

「うおりゃぁああ!」

気合をいれて手を伸ばす。ようやく目指す枝に手が届いて、それをつかんだ。

「やった!」

だけど気をゆるめたとたん、足がすべって地面にズルズルと滑り落ちてしまった。チビルリちゃんたちが私を支えるためにいっせいに集まる。ケガするほど高く登れてないから大丈夫なんだけど。

「なかなか難しいなぁ」

「でも枝に届いたじゃない、次はもっと高くまで登れるわよ」

木を見上げて呟く私をアキノが励ましてくれる。ならばともう一度挑戦してみると、目指す最初の枝まで今度は難なく手が届いた。

「ぬぉおおお!」

必死にもがいて、なんとか枝に跨ることに成功。ここからは枝が多いから簡単だ。私は用心しつつ立ち上がり、もうひとつ上の枝によじ登って腰かけた。

「すごいわ沙世、登れたじゃない!」

アキノの声に下を見下ろすと、チビルリちゃんたちが大きな網を持って、私が落ちても大丈夫なようにかまえていてくれた。知らぬ間にサポートしてくれていたらしい。たぶんあれは、ハマクラゲを捕まえたときの網だな。

とは言え、今私が座っている枝は、せいぜい地上から2メートルくらいの高さだろう。周囲には木々が生い茂っているので、特に眺めが良くなったとも言えない。だけど、普段見上げている木々の枝や葉を正面に見るのは面白いし、なにより自分でここまで登れたという充足感があった。

バカンスと言えば海で遊んだり、何もせずにのんびりしたり、美味しいものを食べたりするものだと思っていたけれど、こんな風に未経験のことにチャレンジしてみるのもアリだなと思いなおす。

そうよ、せっかく異世界に来たんだもん、今までできなかったことにも挑戦してみよう。

そう決心したとき、すぃ~っと隣へ飛んできたアキノが私に言った。

「じゃあ次は、もっと難しい木にチャレンジしてみよっか!」

「へ?」

こうして私は、心配したルリが探しにくるまで、彼女に木登りの特訓を受けたのであった。

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