異世界の南国リゾートでバカンスを楽しむつもりがいつの間にかハードモードに?でもモフモフたち力を借りて乗り切ります!

めっちゃ犬

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第3章 城下町のモフモフの宿

名物女将登場

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女将は濃い青と白のコントラストが涼しげな、ゆったりしたワンピースを着ていた。化粧は薄くアクセサリーも控えめで、全体的に清潔感のある上品な装いだ。

が。

そのヘアスタイルがすごい。女将はその艶のある黒髪を頭の上に高く高く結い上げているのだ。

グルグルとソフトクリームのように巻き上げられたそれは、たぶん1メートルくらいの高さがあるだろう。渦巻のところどころに小さな鈴が飾られていて、まるでクリスマスツリーのようだ。あの頭のてっぺんにお星さまをつけてみたい。

「2名で予約をしたサヨ・ゴンダーラです」

「はい、承っております」

ルリが前に進み出て予約に使ったらしい仮名を告げた。女将がテキパキとチェックインの手続きをすすめていく。

ゴンダーラって誰だよ、私は権田だよ。いや、今はそれよりも女将の髪型が気になってしょうがない。

ルリは何とも思ってないみたいだけど、これ普通なの?ティーダルの伝統的な髪型とかなの?だけど南部でも、ワゴンの窓から見た町の人も、こんな髪型をしている人はひとりも見なかったんだけど。

「ではお部屋にご案内しますね」

女将はそう言ってニッコリ笑うと、私たちの小さな旅行カバンを持ってくれる。本当はルリの何でも入るポシェットだけでこと足りるのだけれど、それだと怪しまれるのでわざわざ用意したのだ。

「お客さまには最上階の一番良いお部屋をご用意してあります」

女将は私たちを先導するようにロビーから廊下へと出るドアに向かう。

この宿は天井は高いが、ドアの上部には当然壁がある。「あそこに引っかかっちゃうじゃん」と思って目を離せずにいたら、女将は絶妙なタイミングで膝を曲げ、ひょいと首を傾けてギリギリのところでドアをすり抜けた。髪に下がった鈴がチリリと小さな音をたてる。

せまい廊下の天井から下がる照明も、女将は同じ要領で避けて進んだ。本人は意識せずにやっているらしく、上をチラリとも見ずに、感覚だけで避けているらしいのがすごい。もはや名人芸だ。

あんまり見たら失礼だと思いつつ、どうしても目が離せないまま私は女将のあとに続いた。3階へつづく階段を登って、ようやく部屋の前へとたどり着く。女将がターコイズブルーのドアを開けて私たちを先に部屋に通してくれた。部屋のなかも白と青を基調としていてとても素敵だ。

「今日はお天気が良いので夕日が綺麗に見えますわ。ぜひバルコニーの噴水からご覧になってください」

それは素晴らしい。私は女将に尋ねた。

「日没は何時くらいでしょう?」

「この頃は6時半くらいですね。お飲み物を召し上がりながらゆっくりしていただいて、そのあとお夕食でちょうどいいと思いますわ」

夕食と聞いてルリが食いつく。

「夕食はレストランですよね?名物のコルーのピリ辛焼きは出ますか?」

「もちろんです。ではごゆっくり」

女将が頭を下げると、鈴がまたチリンと鳴った。髪型は奇抜だけど感じの良い女性だ。

「ねえ、あの髪型ってティーダルにはよくあるの?」

女将が去っていくとすぐに私は聞いた。ルリは首をかしげる。

「髪型ですか?そう言えば、珍しい形に結っていましたね。伝統的な髪型ではないので、単にああいうのが好きなんでしょう」

「え~」

納得がいかないけど、ルリは食べ物以外には興味がないから、アレを見ても何とも思わないらしい。人間じゃないから仕方ないのか。私はあきらめて部屋のなかを探索することにした。

部屋は寝室とリビングが分かれたスイートルームで、廊下のドアを入ってすぐのこの部屋はリビングだ。白い床の中央には青を基調とした絨毯が敷いてあり、白で統一された応接セットが置かれている。もちろんオーシャンフロントで、広めのバルコニーにはデイベッドがおかれていた。

「夜にはきっと星がきれいに見えますよ」

デイベッドを見たルリがそんなことを言う。彼女自身は星空を見ても感動したりはしないらしいが、私が綺麗な景色や夜空を見るのが好きなのは覚えてくれたようだ。

「部屋のなかにも星がたくさんあるね」

私は天井を見上げる。そこにはいくつものお星さまがあった。大小さまざまな大きさのガラスでできた星が、ランダムに高さを変えてぶら下がっているのだ。よく見れば壁際の床にもいくつかの星が転がっていた。

「これはガス灯ですね」

ルリが壁際のスイッチを入れると、星たちに灯りが灯った。まだ明るいからよく分からないけど、暗くなったらきっと綺麗だろう。ここは昼間は海、夕方は夕日、夜は星を楽しめる部屋なのだ。

「寝室はどんなかな?」

私は寝室へと続くドアを開く。そこはベッドが2台おかれた、こじんまりと落ち着いた空間だ。ここにも星のガス灯がいくつかぶら下がっている。青い鎧戸が開いた窓からは、やはり青い海が見える。

そして奥には水洗トイレと海が見えるお風呂があった。時計を見ると日没まではまだ1時間以上あるので、私はお風呂に入ってさっぱりすることにする。

お風呂あがりにはチビルリちゃんたちが髪を整え、青いテュラ玉のついた髪飾りを飾ってくれる。城下町に来るにあたって、私はパンツとチュニックという庶民の服装から、「ちょっと良いところのお嬢さん風ワンピース」へとチェンジしていた。その方が周囲から丁寧に扱ってもらえるというルリの判断だ。

「このワンピも動きやすくて素敵だね」

ゆったりとしたハイウエストのワンピはシルクのような光沢のある素材でできていて、チビルリちゃんたちが施した美しい刺繍が入っていた。これが「城下町によくいる富裕層」の服装らしい。

「いつも素敵な服を作ってくれてありがとう」

私がお礼を言うと、チビルリちゃんたちが「わーい!」というように、空中をクルクルと舞う。食事もいらない彼女たちには、言葉で感謝を伝えるよりお礼のしようがないのだ。飴玉でもいいから食べられればいいのに、そうはいかないらしい。

「さあ、そろそろロビーに行きましょう」

「うん!」

ルリの声に私は上機嫌で返事をする。窓の外ではお日さまが海に傾きかけていた。せっかくの夕日を見逃さないようにしようと急いで廊下に出る。だが、私は目の前の光景を見てそこに立ち尽くしてしまった。

「な、なにこれぇえええええ!?」

一拍おいたあと、私の口から悲鳴が漏れた。こんなの信じられない。

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