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綺麗は汚い、汚いは綺麗の国
しおりを挟む私が学園を言われのない罪(同級生を虐めていたとか)で追放された当日、私は王城の一室へ呼び出され、意味不明な言葉を聞いた。
「というわけでミザリー、子供ができたんだ、祝ってくれるよな」
若干ベタついた髪の毛で、頭頂部が少し薄くなっている上に、お腹の出た老け顔のエネオットはそう言った。
この国では、だらしないお腹と薄毛は男らしさの象徴だ。
「え、またですか、何人目でしたっけ……?」
「ミザリーさん!男の子ですよ!貴女が産むことができない男の子を!私が産みます!私が!」
大きく膨らんだ腹を撫でながらそう言う彼の幼馴染でピンク髪のプラム。
「えー、あー、おめでとうございます?で、何番目の王妃になるんですか?」
「勿論、第一ですよ!男の子ですから!」
元々同じくらい太っていたので区別がつかない。
この国の女のふくよかさは豊かさの象徴、球体、あるいは真円に近づくほど持て囃される。
彼女も当然、丸い。
「……まあ、その、なんか、色々と祝うとか、それ以前の問題だと思うんですよ、貴方は私の婚約者ですよね?それで、また他の女性と子供を作ってきたと」
実はこれで十三人目、毎月一人は浮気相手とか子供が増える。
「ああ、婚約者だろ、あくまで婚約。解消されることもある、婚約あるあるだ」
「あの、公爵家との関係はどうお考えですか?」
「君のお父様、お母様、姉、妹からは君は僕には勿体無いと御言葉を貰っている!安心してくれ!むしろそちらの家の総意に添えることを喜ぶべきだよ!」
ニタニタとしながら唾を飛ばして早口で一気に喋るエネオット。
「はぁ……?」
というか総意の中に私が入ってないの。そうなの。
「私もそう思います」
突然横から現れて発言したのは女王のミル。
丸々としていて垂れ下がった皮膚と悪い顔色から、なんとなく象を想像させる。
「男の子が産めないような女、お分かりかしらミザリーさん。貴女は出来損ないなの」
そう言う彼女はものすごい異臭を放っていた。女王なのだから最も高貴で芳しい臭いがするのは当然らしい。
その香りは家畜小屋を思わせる。
「…たしかに似合いませんね、私にはミル様やプラムさんのように立派な脂肪はついておりませんから」
「今更媚びても無駄です!」
「あーはい、すいません」
媚びたつもりは全くないし、寧ろ逆になんだけど通じない。
「貴女のような見窄らしい、枝のような体。外に出る恥を知りなさい、その白い髪に赤い目、そんなものは人間の色ではありません。アレです悪魔、悪魔のアレです」
「私もそう思います」
食い気味で便乗してくるプラム。
「僕もそう思ってたんだ。ミザリーは全然食べないからね。全く、お腹いっぱいになるのが嫌なら一度吐けば何度でも食べられると言うのに」
そう言ってゲップをするエネオット。
「……皆様がそうおっしゃるなら仕方ありませんね、家に戻らせて頂きます」
この国の価値観がめちゃくちゃなのは、もう今更考えてもどうしようもないけれど、よくこれで国が維持できるよね。
まあ、もう出て行くから関係ないのだけれど。
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