迷信聖女は不要らしいので、私は騎士と幸せを探しに行きます。

銀杏鹿

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19 ウェイク・アップ・リトル・マナ◇-3

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「……お気に召したようで良かった」

「落ちる…危ない」

「気が付いてないのか?俺たちが何に乗ってるのか」

「……?え?」

 言われて漸く気がついた。

 私達は黒い何かの上に立っていた事に。

 って、さっきの白黒の怪物……!?

 白銀の粒子のような物を散らしながら、空を泳ぐように飛んでいる。

 装甲こそ纏っているけれど、今の姿は私が知っているシャチのような姿をしていた。

「と、飛ぶ?!なんで!?」

「乗り物だって言ったぞ」

「ここ…海…違う?なんで…空…飛ぶ?」

 海の生き物なのになんで、空を飛んでるんだろう。私が知らないだけで空も飛べる?

「機海獣は、空を漂う"イムラーナ"の流れに乗ってるらしい。飛んでるんじゃなくて、その中を泳いでいるそうだ」

「イムラーナ?何?」

「俺達に分かるのは、それが確実に存在して、何処かへ流れているらしいという事だけだ。さあ、中に入るぞ」

 オードが足元に触れると、怪物の背中の装甲が開く。

「中……?」

 オードに手を引かれ、その中へ入ると座席のような物が、少し離れて二つ並んでいた。

 中からは、外の様子が透明に透けて見えていた。

 風を切り、白銀の飛沫上げているヒレの装甲が見えた。

「座ってちゃんと掴まっててくれ、少し飛ばす」

「う、うん」

 オードが取手のような物を握って、引くと怪物は進路を変え、上を向いた。

「行くぞ」

 そして加速する。

 見えていた風景が遥か足元へ去って行く。

 空に浮かぶ宮殿を通り越して、さらに上へ。

 空を覆っていた雲が正面に近付き、その中へ突入する。

 少しの間、真っ白になった視界から抜けると、そこには。

「これが、本物の空だ」

 そこには、本当に何も無かった。

 何も無いがあった。

 遮るモノの何一つ無い世界。

 どこまでも続いている蒼空。

 ステンドグラス越しじゃない、本物の空。

 そしてその下には。

「……雲、海」

 白い雲の海が何処までも続いていた。

「……今はこれしか見せられないが」

「ううん…ありがとう」

 私は多分、この景色を忘れないだろう。
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