迷信聖女は不要らしいので、私は騎士と幸せを探しに行きます。

銀杏鹿

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24 ロード・ランダル-1

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「く、くくっ!墜落したか!そうか!いい気味だな!」

 跪く6人の騎士を前にハインリヒは高笑いをした。

「……お姉様は?遺体は確認したんですの?」

 アンナは冷静に尋ねる。

「申し訳ありません、下層まで落ちていったので、我々の機海獣では追跡出来ず……さらには一名行方が……」

 騎士の一人で茶髪の青年、ヴァルツァーは顔を上げなかった。

「お前らは命令を全うする気があるのか?」

 一転して不機嫌になったハインリヒ。

「…お兄様、下層はイムラーナの流れが弱いんですの」

「……だから?分かるように話せ」

「流れが弱いと、大きい機海獣は飛べませんの」

「……だからなんだんだ?追跡できない理由なのか……?」

「下に行ったら、中々戻れませんの。武力をこの宮殿から離す余裕は今、ありませんの」

「そうか、流れが弱いと使えんのだな。僕は下層の事なぞ知らん。最初から分かりやすく説明するんだな」

「流石お兄様!また一つ賢くなりましたの!」

「ふん、当然だ。アレが下に落ちたなら、他の兄弟も追う事は出来まい。さて、お前達は次の任務だ……戴冠式を行う、万事任せたぞ」

「御意」

「僕の悲願が漸く叶う時が──」

「──ハインリヒ様!」

「誰がここへ通した?」

「無礼をお許しください!火急の要件でございます!」

「言ってみろ」

「それが……宮殿の者達が突然倒れ始めたのです」

「……で、僕に何の関係がある?」

「以前流行った物と同様でして、その際は……」

「なら前と同じように対処しろ」

「っ……畏まりました」

「……毅然とした態度ですの!流石お兄様ですの!よっ!新皇帝!」

「ふはは!そうだ!僕こそが真の秩序をもたらす!新たな皇帝を世に知らしめるのだ!」

 何も知らず、ハインリヒは高笑いする。

◆◆◆◆◆◆◆◆


「──そして今こそ、我が新たなる法を敷くのだ!」

 集められた聴衆を前に、高い壇上から演説を終えたハインリヒ。

 戴冠式はハインリヒの強行によって皇帝の死去、そして聖女の失踪から時間を置かず、執り行われていた。

「──アルバを統べる王の証たる王冠を、今ここに与える」

 豪奢な白い法衣に身を包んだアンナが、行方の知れない聖女の代理として宣言し、王冠を被せる。

「元老院を代理し、これを授ける」

 ヴァルツァーが宝剣を差し出す。

「うむ」

 それらを受け取ったハインリヒが、鷹揚に手を挙げると、聴衆は沸き立った。

「これより、パレードを行う!」

 ハインリヒは自らの勝利を確信し、絶頂の中にあった。

 彼は父親の言葉を思い出して、それに打ち勝ったつもりでいたからだ。

 どうだ、それ見た事か……と。

 しかし、そのすぐ後、その言葉の意味を身を持って知る事になるとは、彼は夢にも思っていなかった。
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