迷信聖女は不要らしいので、私は騎士と幸せを探しに行きます。

銀杏鹿

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45 パターンズ/オーバーズ◇-3

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 そこは、本当に真っ暗だった。

 人の姿は無くて、昔使っていたらしい街の残骸がどこまで続いていた。

 天井には、僅かにイムラーナの光が灯っていて、これまでいた場所がまだ浮島だったのだと分かる。

 不気味なくらい静かな瓦礫の道を、オルキヌスが私達を乗せて歩く。

 オードは持って来た発炎筒を外へ投げ、暗闇を赤く照らす。

「マナ様、ここが帝国最下層……地上だ」

「もう……空の上じゃない?」

「ああ、ここは大昔の首都だ。魔術が使えた頃よりずっと前の」

「使えた頃?」

「ああ、言い方が悪かった。殆どの人達は、使えなくなったと思ってるんだ。……魔術が消滅したお陰でこの国は戦争に勝ってるんだがな……」

「戦争…勝った…?止める為…じゃない?」

「言い方を変えればそうかもな。陛下は勝利する為に大魔術を行い、魔術を封印した。帝国は覇権を握ったが、その代償……魔術を失ったことの方が民にとっては大きかったんだ」

「私…いたから?私、魔術止めてた…から、皆困った?」

「そんなことないさ、マナ様が封印し続けてなかったら、帝国は戦争に負けて今生きてる連中も、碌な目に合ってない。誰が何と言おうと、マナ様の功績は覆らないさ」

「……そっか」

 やっと分かった、ハインリヒやアンナ達が迷信扱いして、白痴呼ばわりしていたのはそう言う理由だったんだ。

 多分、宮殿から下に住んでた人達にとっては、そう言う認識でしか無かったんだろう。

「オード、ここ…何も…いない?」

「……出て来なければいいんだが……こう言う事を言うとな……」

「◾︎◾︎◾︎──」

 ギィギィと鳴きながら、目の前に降りて来たのは、人と同じくらいの大きな蜘蛛だった。

「……出てくるんだよなっ!」

 オードはオルキヌスを操って蜘蛛を殴り飛ばした。

「◾︎──」

 転がっていった巨大な蜘蛛は、一撃で沈黙した。

「えっ」

「ここは、暫く前から"獣"共が湧いて来て、それ以降こんな感じだ、冥界ってのがあったらきっとここの事を言うんだろう!」

 オルキヌスは走り始める。

 上の方に赤い光……多分蜘蛛の目が灯って一斉にこっちを向く。

「ど、どうする……?」

「マナ様は運転しててくれ!道は俺が指示する!」

「オード…どうするの?」

「俺は発炎筒を投げる!少しは撹乱になるだろう!」

「分かった……!」

 そこからは延々と蜘蛛との戦いだった。

 どれだけ蹴散らしても襲ってくる彼らを何とか退け、ようやく目的地に着いた頃には私達は疲れ切っていた。

「……何とか、なったか……」

 途中から、オルキヌスの上で剣を振っていたオードは息も絶え絶えだった。

「…でも…ついた…ここでしょ?」

「ああ、これが魔導列車だ」

 殆ど崩れた建物の中に、錆びた鉄の塊のような巨大な機械があった。
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