迷信聖女は不要らしいので、私は騎士と幸せを探しに行きます。

銀杏鹿

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46 パターンズ/オーバーズ◇-4

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 いくつもの車輪が付き、その足元には真っ直ぐに伸びた線路が敷かれている。

「これ…乗り物?」

「そうだ、これでこの先へ向かう」

 オードが剣で指す道は、更に地下へ続いていた。

「まだ下…降りる?」

「先ずは、列車が動くか確かめないとな」

 私達はオルキヌスから降りて、崩れた建物の中へ入り、オードが先行して危険がないか確かめつつ、探索する。

 魔導列車を動かす為の制御室は、簡単に見つかった……というより、オードが場所を知っていたらしい。

「やっぱり動かないな、完全に切れている……まあ、オルキヌスで歩けば──」

 鍵を挿したオードが確かめたけれど──

「◾︎◾︎◾︎◾︎──!!!」

 聞こえたのは呻く金切り声、それはさっき退けた筈の蜘蛛達の鳴き声だった。

「くっ……まだ遠いが流石にあれを相手し続けるのは──」

「……厳しい…ね」

「前はここまで追ってくることは無かったんだが……クソ、魔力さえ有れば──」

 魔力……?だったら。

「ねぇ、魔力…有れば…動く?」

「……マナ様、お願いできるか?」

「やってみる」

 魔術も魔力もよく分からないけれど、一度出来たのだから、二度目だって出来る筈。

 封じれるんだから、解き放つことくらい──!

 握った母の形見が輝いた。

「やった……これで──」

「◾︎◾︎◾︎◾︎──!」

 ドアを破って、蜘蛛は躍り出た。

「っマナ様!魔力を込めていてくれ!こいつらの相手は俺がするっ!」

 蜘蛛を一刀の元に切り捨てたオードは、制御室の外へ駆け出していく。

「う、うん……!」

 と、とにかくやらなきゃ!やり方なんてわからないけど……!

「ぉぉぉおおお!!」

 オードの声、剣が蜘蛛の甲殻を切り裂く音。

「……どうしよう……!全然……上手く入らない……!」

 魔力の光は私から溢れるばかりで、制御室の魔導具にこれっぽっちも入らない。

「どうして……!」

「急いでくれマナ様!ここはあまり持たないぞ!」

「くっ……このっ……どうしたら……」

 迷ってる時間なんて無いのに!

 どうしたらいいの、前は願うだけでオルキヌスは止められた……だったら今は何が違うの……?

 前と同じ……お祈り……?

『るぅなふ…いぶるぐんとむ…ぶくとらぐる……!』

 お願い……!私の願いを叶えて……!

 けれど、光は応えない。

「どうして……!何が足りない…?」

 前に魔術を使えた時は何を考えてた──?

 ──そうだ!

「オード!」

「出来たか!?」

「違う!来て、一緒!」

「よく分からないが了解だ!」

 扉から転がってきたオードの手を引いて重ねる。

「あっ」

 ──瞬間、明滅する光が爆ぜた。

 その光は私に何をするべきなのか、教えてくれた。

 大切な人のことを思う、それが魔術を使うために必要なこと。

「そう、だったんだ」

 さっきまでまるで反応の無かった魔導具が光り輝き、あっという間に力を取り戻した。

「マナ様!魔導列車を作動させるんだ!レバーを──」

「わかっ──オード!後ろ!」

 彼の背後に蜘蛛が迫っていた。

「くっ!捕まれ!」

 オードは私を抱え、レバー踏み下ろして跳躍し、そのまま制御室の窓から外へ飛び出す。

 瞬間、虹のような光が辺りを包み、輝いた。

「動けぇぇぇぇぇぇ!!」

 魔導列車は煙を吐き、少しずつ動き始める。

「動いた……!」

 背後に見えるのは襲いくる蜘蛛の群れ。

 少し高い場所から落ちる私達を、飛び出した黒い影が受け止める。

「オルキヌス……!」

「頼む!このままその列車に!」

「◾︎◾︎◾︎◾︎!」

 声に応えたオルキヌスが列車まで跳ね、大きな音を立てて、一番後ろの足場に降り立つ。

 追いすがる蜘蛛達がどんどん離れていく。

「何とかなったな……」

「う、うん……」

 ベストラさんの言葉が頭をよぎった。

 "大切な人のことを思う"

 それは多分、好きってことなんだ。

 触れた手が、まだ暖かいような、熱いような気がした。
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