【リメイク前】聖女は婚約破棄の上に追放されて、自由になりました。〜私は騎士と幸せを探しに行きますね〜

銀杏鹿

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第一幕

11 パート・オブ・ユア・ワールド.2◆

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 植えられた僅かな植物と、床一面の芝生に、何も泳いでいない小さな池しかなかった庭園は、普段のその姿とはまるで違い、青い光に照らされていた。

 どうやったか分からないが、ステンドグラスが青く染められているらしい。

「……これは」

「これ…海…あってる?」

 壁も青く染められ、魚や海獣のような紋様が描かれて、様々な色に彩られていた。

「あれ…いるか…くじら…さめ…それとね…」

 指差して教えてくれる聖女様は、子供のように無邪気な顔をしていた。

 だが、その形はどれも俺の知る姿とは微妙に違う姿をしていて、恐らく誰かに聞いたものを描いているのだと思えた。

「じゃあ、あれはタコか?」

 にょろにょろとした腕のような物を広げた絵を指す。

「え……違う…あれ…いか」

 違ったらしい。

「お、おう……」

 やはり見た事が無いからなのか、どれも絶妙に惜しい造形なのだ。

 まあ、それをいちいち言う気にはならなかった。多分、これが彼女の世界なのだから。

 それを曇らせるような事は言いたくは無いし、やりたく無かった。

 海のことを話す彼女の、楽しそうな笑顔を見たことがある者なら、絶対にそうする筈だ。

 ……それが俺以外にいるのかどうか分からないが。

「あと…ふかみる」

「フカミル?なんだそれ」

「あれ」

 何処からから持ってきたのか、珊瑚のようなものまで、植えられている。

「なんだあれ……」

「生えてきた」

 ……珊瑚って勝手に生えてくるものなのか?

 しかも室内庭園に……?聖女様がこの部屋から出るとは思えないが……

「……すごいな、一人でやったのか?」

「違う…鼓笛隊…一緒」

「鼓笛隊……?どこにそんなのが……」

 いるわけが無い、そう思った時だった。


◆◆◆◆◆◆◆◆


『──いふへっ、めね、よえごってぃ、いえのおぇがぁた!』

「な、なんだ!?こいつら!?」

 聖女様の足元に、童話の小人のようなものがわらわらと集まって来たのは。

『いふへふん、むぐふてぐん、げふぃぐりぃ?』

 それらと、当然のように会話する彼女。

『むぐふたぐん!』
『さふたぐん!』
『ぐふとのぐ!』

 聖女様の周りで騒ぐ小人達。

『やふぁいおぐ』

 彼女の口から出た言葉は、この前聞いた、お礼の言葉だった。

『げふね、めぐねす!』
『るるいえ、えいえ、すごってぇむ!』

 小人達が一体何を言っているかは分からないが、彼女が笑っているから、悪い話では無さそうだが。

『げへぐる、いぇぐ、びぃぐふるぅふねふ』

 振り返って俺にそう言う。

「いや、頼むから俺に分かる言葉で……」

『くな、がるぬ?』

 小人の少女が、手に持った笛で俺を指す。

 ……恐らく誰か聞いているんだろうが……

『げふに──』

 聖女様が何か言いかけたところで、殺到した小人達に俺の足元は包囲された。

『うくふむるに!のぐ!うくふむるに!』

 執事風の服を着た小人が、バトンのようなもので俺の足をバシバシ叩く。

「痛っ!やめろっての!」

『いあ、えへい、はりるげと!』

 払い退けた小人は俺をバトンで指す。

『げふ、はりる?』

 それに問いかける緑色の炎。

『はりるね、ふんぐりょうめ』

 剣呑な目つきで俺を睨む小人の少女。

『ふんぐりょうめ!』
『りょうめ!』
『ふんぐりょうめ!』

 何かを復唱しながら、俺の服を引っ張ったり棒で叩いてくる。

 あまり歓迎されていないようだ。

『えぷ、げふに、しょぐっふぇゆぇく、りふへぇ!』
『りふぇ!おぐのぐ!しょぐっ!』

「聖女様、こいつら何を言ってるんだ?」

「異端者…言葉…侵入者…地獄送り…だってさ」

「敵じゃないって説明してくれよ」

「信じなかった…から…あと…面白いし」

 くつくつと笑う聖女様。

「勘弁してくれ……」

 それから、俺は彼らの言葉を覚える事にした。

 それさえ、分かれば、聖女様や小人達の言いたい事が理解できるようになれるかと、思っていた。
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